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六人掛けの食卓  作者:
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3/4

第三章 罪と真実



私は昔のことをよく覚えていない。


もちろん、全部ではない。


運動会も覚えている。


修学旅行も覚えている。


友達と喧嘩したことも覚えている。


だけど、なぜか叔父のことだけは思い出せなかった。


アルバムを見つけてからというもの、私は何度もあの写真を思い出していた。


写真に写る叔父は、いつも笑っていた。


そして、いつも私の隣にいた。


最初は気のせいだと思った。


でも違った。


何十枚見ても同じだった。


そのたびに胸の奥がざわついた。


私は妹に会った。


妹は昔のことをほとんど話さなかった。


それでも帰り際、一つだけ言った。


「お姉ちゃん、本当に覚えてないんだね」


その言葉が頭から離れなかった。


数日後。


私は実家へ向かった。


両親はどちらも外出していたため、誰もいない昼間だった。


自分の部屋に入り、窓を開ける。


見慣れたはずの景色なのに、どこか他人の家のようだった。


しばらくして、私は廊下へ出た。


リビングへ続く廊下。


あの夜、妹を見た場所だった。


そこで私は足を止めた。


不意に、ある記憶がよみがえった。


夜中に目が覚めたこと。


誰にも言えないまま朝を迎えたこと。


理由もなく叔父と二人きりになるのが苦手だったこと。


けれど、その理由だけが思い出せなかったこと。


私は壁に手をついた。


息が苦しかった。


思い出したくない。


でも、思い出しかけていた。


妹は知っていたのだ。


私に起きていたことを。


だから写真の中で、いつも叔父を見ていた。


私のためだった。


私はずっと勘違いしていた。


妹が何かを怖がっているのだと思っていた。


本当は違う。


妹は私を見ていた。


叔父に性的虐待を受けている私を助けたいのに、どうすることもできないまま。


ただ見ていたのだ。


私はリビングへ入った。


六人掛けの食卓は、昔のままだった。


あの夜、妹が座っていた席を見る。


私はようやく気づいた。


妹が見ていたのは、食卓の向こう側、


玄関を見ていたのだ。


長い間忘れていた、いや、忘れようとしていた記憶は、その時鮮明によみがえった。


私は椅子に座り、すべてを思い出す。


叔父から性的虐待を受けていた私が、


そのストレスを発散させるように、


当時何もできない妹に暴力をふるっていたことを。


幼いながらに状況を理解していた妹は、私から暴力を振るわれてもただ黙って耐えるだけだった。


でも親には言わなかった、


言えなかった。


誰に言えばいいのかわからなかった。


そしてあの夜、


叔父は豪雨で音が聞こえにくいため、


いつもよりももう一段階踏み込んだ事をした。


妹は叔父から解放され部屋へと帰ってきた私が怖くなって、


リビングへ逃げた。


開放的な家、


両親が帰ってきて一番最初に来るところ。


玄関まではいけなかった。


当時まだ小学生だ、精いっぱいの勇気を出してたどり着いたのがリビングだったのだろう。


私はすべてを理解した後、友人にこの話をすることにした。


私の周りにはこの話を広めれる人がいなかったからだ。


もし友人が誰かに頼んでこの話を広めたとき。


私の罪と叔父の罪が明るみになる。


でも、


それでいい。


それがいい。


あと一話!つぎで全部です!

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