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牛屋さんの悩み

牧場のおじさんが驚きの真実を告げる。


「ここで飼ってるのは牛だぞ?」


私たちは馬を求めて何時時間もかけて歩いて来たのに、そこに居たのは馬じゃなく牛・・・。


「えっ!!牛・・・。この牧場に馬は居ないんですか!?」


「馬も数頭いるけど牛を牛舎に戻す時に使う従業員用だぞ?」


「そんな・・・」


崩れ落ちるヒルデ。

いや崩れ落ちたいのはこっちだから半日付き合わされてるんだから。

まぁ最初から馬は手に入らない気はしてたからまだダメージは少ないけど、こんな結末とは。


「なぁ、お前さん方は異界人と言ってたが困り事を解決してくれるってのは本当かい?」 


牧場のおじさんが突然に困り事の相談をしてくる。


「はい。解決出来るかは保証できませんけど」


崩れ落ちてるヒルデに代わり私が答える。


「それなら落ち込んでるところ悪いがこの牧場でちょっと問題が起きててな。少し調べてくれないか?」


「分かりました。その代わりと言っては何ですが乗馬体験をお願いできますか?」


ヒルデが復活し勝手に答えてしまう。

あれ?この間は一言相談しろと言ってなかった?

しかし乗馬体験で良いのかい。

ドラゴンやペガサスを捕まえて乗り回すから随分と落差が激しい気がするけど。


「おお、ありがとう。実は牛泥棒が出ててね、放牧に出すと毎日数匹居なくなるんだよ」


「えっ、毎日ですか?しかも数匹居なくなるって」


「あぁ、柵の所に一定の間隔で見張りを立てみたりしたんだけど、まったく効果が無くてね。今は放牧に出せない状態なんだよ」


「それで私たちに牛泥棒を捕まえろ・・・と?」


いや、流石にそれは難易度が高くないですか?

3人でどうしろと?


「何か手掛かりは無いんですか?柵が壊されてたとか犯人の足跡とか犯行時刻とか」


やる気のヒルデが手掛かりが無いか質問する。


「いや、それが柵は壊されたり細工された形跡は無いんだ。犯行時刻もまったく分からない。ただ牧場を見回った時に荒れてる所は何ヶ所か見付けたんだが足跡は見付かってないんだ」


「荒れてるって事は何かはあったって事ですよね?」


「ただ何があったのかが想像付かないんだよ。それを調べて欲しい。牧場の従業員だけではお手上げでね」


原因を探るだけなら犯人を捕まえるよりは難易度は低いだろう。


「じゃ、とりあえず牧場内を見て回って良いですか?」


「あぁ、それなら馬で見て回ると良いよ。牧場内は牛の落とし物があるからね踏んだりしたくないだろう?」


落とし物?踏む?あぁなるほど。


「あの私たち、馬に乗った事は無いので馬で行く事は出来ません」


私が牛の落とし物に気を取られている内にサンドラが馬に乗れない事をおじさんに告げる。


「あぁ、それなら従業員が乗る馬の後に乗ると良いよ。うちの馬たちは力持ちの馬もいるから女の子1人分ぐらい増えても問題は無いよ」


おじさんに勧められるままに厩舎に移動して、そこから出した馬3頭それぞれに、一緒に付いてきたNPCの従業員のお兄さんが跨がる。

馬に跨がったNPCのお兄さんの後にしがみつく形で馬に乗せられる私たち。

相手はNPCだと分かっていてもこれはちょっと恥ずかしい。


「これはクォーターホースですか?」


ヒルデが馬の種類を質問する。

きっとネットで検索したばかりの付け焼き刃の知識だろう。


「そうだよ馬に詳しいんだね。仕事に使う馬はみんなクォーターホースだよ。他にもここの旦那様の趣味で他の馬も飼ってるけどね」


そんな説明を受けながら牧場の中を散歩・・・じゃなかった視察する。

牧場は広く牛舎から放牧地の奥へは傾斜がついていて坂を登るように進んで行く。

坂の頂上まで来るとそこからは下り坂。

坂を降った窪地のような所には水飲み場が設置してあり、手漕ぎ式の井戸が併設されてる。

毎朝、従業員の人が井戸から水を汲み上げ溜めてるらしい。

そしてその先はまた上り坂、またその先は下り坂と交互に傾斜が付いていた。

更に横方向も上り下りの傾斜が付いている。


「こう登り降りがある地形だと回りを視認するのが大変だねぇ」


「この登り降りが牛の運動になっるように設計され作られてますから。人も歩きだと移動するだけで大変ですよ」


サンドラのボヤきにも律儀に答えてくれる。

これは馬がないと移動するだけで大変な地形。

そんな所でどうやって牛泥棒をするのだろう?

考えられるのは柵の近くに餌でおびき寄せてそのままトラックに乗せて・・・って、トラックもないから馬車に乗せるのかな?

馬が引く馬車に牛が乗るって絵はなんかシュールな気がする。


辺りを見回るけど当然、特に変わった所は見当たらない。

そりゃそうだ。簡単に見付かったら牧場の人達が既に見付けているだろう。


「荒れてた場所は何処にあるんですか?」


「あぁ、何ヶ所かあるんですけどね。えっとここからだと近いのは・・・」


従業員の人が案内してくれた所は水飲み場と別の窪地になっている所。

直径3メートルぐらいの範囲で草が無くなっていて土が剥き出しになっている。

明らかに何かがあったように見える。

問題はその何かが何なのかだけど・・・。


私たちは馬から降りてその場を調べてみる。

荒れてる土を触って荒れてない場所の土と比べてみると、荒れてる方の土は少しサラサラしてて乾いてるような気がする。


「牛の落とし物があるかも知れないので気を付けくださいね」


従業員の人が注意してくれる。

出来ればもう少し早く注意して欲しかった。

いや、まだ落とし物は踏んでないし触ってもないから大丈夫。きっと。


「ちょっと魔法を撃って良いですか?」


「ま、魔法ですか?広範囲の魔法でなければ大丈夫です。あ、あと火属性は燃え広がる可能性があるので止めて下さい」


「ウォーターボール!!」


私は荒てる場所に向かって水属性の魔法を撃ち込んでみた。


「ソイルショット!!」


「ウインドサークル!!」


続けて魔法を乱射してみる。


「おぉ、魔法を3属性も」


「この若さで」


従業員の人達は変な所に感心している。


「ねぇエリザ何かあったの?魔法なんて使って。馬がビックリするでしょ」


「いや、何かあるかな?と思って。あ、ヒルデも光魔法と闇魔法をここに撃ち込んで見て」


「う~ん分かった。じゃ折角だから魔力操作も使って全力で撃ってみるわ」


「ライトスピア!!」


いつもより長い光の線が地面に向かって放たれる。


「ダークスピア!!」


今度はいつもより太い黒い線が地面に撃ち込まれる。


「あ、魔力操作で魔法を使うとイメージ変えるだけで結構変わるね。で、これ何か意味あるの?」


「何も変化無いね。明らかに怪しかったから何か起こるかなと思ったんだけど」


「エリザ、ヒルデ、あなた達ただ現場を荒らしただけじゃない?今ので証拠も消し飛んだかも知れないよ?」


サンドラに説教される。

こう言うのはトライ&エラーの繰り返しだと思うんだけどな。


「大丈夫ですよ。他にも荒れた場所はありますから1ヶ所ぐらい荒らしても」


従業員のお兄さん達が庇ってくれる。


「それじゃ別の場所に移動しますか?ここはアホ2人が荒らしちゃいましたから」


「サンドラ、魔法を撃てと言ったのはエリザだよ。私までアホ扱いしないでよ」


ヒルデがサンドラにクレームを入れる。

いや、調子に乗って魔力操作まで使って魔法を使ってるんだから同罪だと思う。

寧ろ私より罪は重いと思うんだけど・・・。


「他にはこの隣の窪地にも荒れた場所が」


従業員さんの話を聞き馬に乗ろうとした瞬間、さっき魔法を撃ち込んだ荒れ地が吹き飛んだ。


「ちょっと2人とも何をやったの!?魔力操作!?」


珍しくサンドラが余裕無く叫ぶ。

私は恐る恐る爆発で出来た穴に近付き覗き込み中を確認すると、ダッシュで穴から離れる。


「ヒルデ!!サンドラ!!戦闘準備!!魔物が居るよ!!」


私が叫ぶのとほぼ同時に穴から巨大な姿をした魔物が姿を現した。


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