特訓開始
チーノ婆ちゃんに言われるまま魔法(?)の練習をしている。
お昼を御馳走になり午後もずっと・・・チーノ婆ちゃん、何気にスパルタだった。
ただ不思議な事にMP切れにはならなかった。
MP切れになれば休憩が出来たのに、なに?この御都合システムは。
「どれ今日の所はこれぐらいにしとこうかい。根を詰め過ぎても効率は悪いからね」
いやいや充分に根を詰めたと思うよ?
午前中からお昼を挟んでトータル4、5時間は練習してたんだから。
「なかなか筋が良いね。1日目でここまで出来るようになるとはね。この分ならあと2日か3日通えばモノになるんじゃないかね」
えっ、今日だけで終わらないの?
あと2日も今日みたいに練習が必要なの?冗談抜きで?
「さて、次はいつにするかのぅ?何なら明日でも大丈夫だよ?」
「はいっ!!それなら明日と明後日でお願い出来ますか?」
サンドラが私たちの確認を取らず答えてしまう。
忘れてた・・・サンドラは面倒臭い事や嫌な事は最初にまとめてやってしまうタイプだったって事を。
「ふふっ熱心なのは良い事だよ。それじゃ明日と明後日で一気に仕上げてしまおうね。ちゃんと準備しとくよ」
チーノ婆ちゃんもやる気だ・・・。
まぁ考え方を変えれば2日で終わると言う事は、リアル時間で考えて今日中に終わる言う事だから悪い事じゃないのかも?
「あの・・・話は変わるんですが質問良いですか?」
ヒルデが話を切り出した。
「なんだい?魔法に関する事なら人並みには答えられるよ?」
「あの氷魔法はどうやったら覚えられますか?」
「んっ?氷魔法かい?氷魔法の覚え方を知らないのかい?」
「はい。たぶん異界人で知ってる人は居ないみたいなので良かったら教えて欲しいんです」
「良いも何も水魔法のスキルをレベル30まで上げれば良いだけだよ?」
「へっ?」
チーノ婆ちゃんはやれやれって感じで話をしてくれる。
「スキルを30まで上げるとスキル進化が出来るのは知っているかい?」
「えっとスキル統合の事ですか?」
「スキル統合とは違うね。統合とは複数のスキルを1つにまとめる事。スキル進化はスキルを1段階強化したスキルに変える事だよ」
そう言うとチーノ婆ちゃんは右手を私たちの前に出す。
「『ウインドボール』」
手の平の上にウインドボールを発生させるチーノ婆ちゃん。
「これが風魔法スキルのレベル1の魔法」
そう言うと手の平のウインドボールを消して、違う魔法を唱える。
「『ウインドアロー』」
チーノ婆ちゃんの手の平に1本の風の矢が現れる。
「これが風魔法をスキル進化させた風魔法Ⅱのレベル1の魔法だよ」
私もヒルデもサンドラも初めて見る魔法に戸惑ってる。
あれ?もしかしてこのゲームのシステムの盛大なネタバレをされてるのかな?いや教えてと聞いたのはこっちだけどさ。
「それでのぅレベル30に成るとスキル進化だけじゃなく、スキルを似たスキルに変化させるスキル変化も選べるようになるんじゃよ。水魔法スキルをスキル変化させると氷魔法スキルに変えれるんじゃ」
へぇ・・・スキルの進化、統合、変化か。
これどれを選ぶのが正解なんだろう?
「あの・・・風魔法はスキル変化させるとどうなるんですか?」
「魔法学の初歩の初歩だから良く覚えて置くと良いよ。攻撃魔法は基礎6系統あるのは知ってるだろう?火、水、風、土、光、闇と」
「はい。私は光と闇魔法スキルを持ってます。エリザは火、水、風、土の4つ持ってます」
「おや、エリザちゃんは4つ揃えてるのかい。それはたいしたもんだよ。育てるのは大変だけど極めれば強力だからね。ヒルデちゃんも光と闇かい。悪くないね」
チーノ婆ちゃんは1人で感心すると話を続ける。
「火魔法は熱魔法、水魔法は氷魔法、風魔法は雷魔法、土魔法は鉄魔法、光魔法は聖魔法、闇魔法は邪魔法にスキル変化させる事が出来るんだよ」
お、魔法の属性って12個もあったのか・・・。
全属性魔法フルコンプリートとかやろうとしてたらこの時点で挫折してたかも。
「あの・・・水魔法と氷魔法では結構違うのは分かるんですが、火と熱や土と鉄とか変化させる意味はあるんですか?」
私は疑問に思った事を聞いてみる。
「魔法が変わるからの。火や水魔法と光や闇魔法ではレベル1の魔法が違うのは知ってるかい?」
「あ、はい。私とヒルデの使う魔法が違ってますから」
「スキル変化させると同じように魔法が変わるんじゃよ『アイスニードル』」
チーノ婆ちゃんが魔法を唱えると手の平に氷の針が現れる。
「あ、これデブ鳥が飛ばしてきたやつ!!」
その針を見てサンドラが声を上げる。
「デブ鳥?まぁ魔法を使う魔物は居るからの。これは氷魔法のレベル1のアイスニードルじゃ。火魔法と熱魔法でも使える魔法は変わる事がメリットかの」
「やっぱりスキル変化させた方が強いんですか?」
「属性によって強い弱いは無いよ。包丁とハサミに強い弱いは無いように、ようは使い方次第だよ。まぁエリザちゃんは4属性揃えてるんだからそのままで良いと私は思うけどね」
うーん、包丁とハサミだと包丁の方が強いと思うんだけど・・・。
いや、包丁でハサミみたいに切る事は出来ないか。
「どれ今日はこれで解散するよ。また明日おいで」
私たちは来た時と同じように地下通路を通って八百屋の中に出て帰路に付いた。
「今日、知った事もとりあえずは秘匿かなぁ?」
「スキルのレベルが30に成れば分かる事らしいから無理に掲示板で拡散するような情報でも無いしね。私たちが情報公開する必要も無いんじゃない?」
「それもそうだね」
翌日、翌々日もチーノ婆ちゃんの特訓を受けた。
両手で水晶に魔力を注いでたのを片手に変え、チーノ婆ちゃんが指示した色に即座に水晶を光らせる特訓。
注ぐ魔力の量を素早く切り替えて赤、緑、黄、青、紫に光を即座に替える特訓。
ゆっくり流す魔力の量を切り替えゆっくり光を変化させる特訓。
「まぁ、こんなもんだろうね。練習は終わりだよ」
チーノ婆ちゃんがそう言い終わると頭の中にシステムメッセージが届いた音がした。
『スキル【魔力操作】を習得しました』
えっ?【魔力操作】を“習得しました”?
ヒルデとサンドラを見ると2人も習得したようで戸惑ってる顔をしてる。
スキルポイントを見るとスキルポイントは減ってない。
でもスキルの『控え』の欄に【魔力操作】と言うスキルが確実にある。なんだこれ?
「どれ、それじゃ代表してエリザちゃん【魔力操作】が使えるようになったろう?ここではスキルの変更も出来るから【魔力操作】をセットして、手の平で留まるイメージでウインドボールを使ってごらん」
とりあえず今1番必要無さそうな【MP回復up】を外して、言われた通りに【魔力操作】セットする。
「ウインドボール」
ウインドボールが発生すると手の平で留まり続ける。
「おぉ!!」
ヒルデもサンドラも驚いてる。
「ウインドボール」
ウインドボールを消して、もう一度唱える。
すると頭でイメージした通りに手の回りをグルグル回る。
「一応、言っておくが軌道を変えられるのはボール系の魔法だけだからの。カーテン系の魔法やサークル系魔法、ヒルデちゃんが持ってる光魔法や闇魔法のスピア系とかでは別の効果になるからそれは実戦で試して見るといい」
直ぐにヒルデが【魔力操作】をセットして魔法を使おうとするが、チーノ婆ちゃんに止められる。
「これ!!建物の中で魔法を放つのは止めとくれ。壁に穴が空いてしまう」
「ヒルデ!!ちゃんと考えて行動しなさいよ?魔力操作を教えて貰ったのに恩を仇で返すつもり?」
ヒルデの軽率な行動にサンドラもヒルデを叱る。
「あ、ごめんなさい。スピアの魔法でも飛び方が変わるなら大丈夫かなと思って」
「スピア系だと、威力を強くしたり逆に弱くしたり変えれるよ。それはヒルデちゃんが実戦で試してみると良いよ。ある程度は融通が利くからどう変化させたいかイメージが大事だからね」
「はい分かりました。色々と試してみます」
「それじゃこれを渡しすよ。受け取っておくれ」
そう言うとチーノ婆ちゃんが懐からカードを取り出して私たちにそれぞれ1枚づつ渡してきた。
「それがあればここに出入り自由になるからね。また魔法で困った事や知りたい事があったらいつでもおいで」
カードには『王都魔法ギルド会員証』と書いてあり、私の名前も印字されてる。
ヒルデやサンドラのカードにもそれぞれ2人の名前が印字されていた。
「これ・・・良いんですか?」
「持ってても損する事は無いから持ってておくれ。ま、若い者は居ない年寄りの集会所みたいなもんだから得も無いけどね」
そう言ってチーノ婆ちゃんは照れくさそうに笑った。




