チーノ婆ちゃん
サンドラがマッテオさんから聞いたスキル統合は革新的な情報だった。
プレーヤーがスキルをスキルスロットに装備出来る数は10個まで。
スキル統合は2つ以上のスキルを1つに出来る。
つまり実質的にスキルを10個以上セット出来るようになる訳で・・・。
「これで他のプレーヤーに対して大きなアドバンテージを得れたわ。私たちはトッププレーヤーとして君臨出来る資格を得たのよ!!」
「ねぇ、イベントで王都の人に聞いて私たちが知れた情報なんて他のプレーヤーも王都の人に聞いて知れるんじゃないの?」
これでトッププレーヤーに。
とほくそ笑むヒルデにサンドラが水を差す。
「えっ?」
「だってね。マッテオさんは王国騎士団の団員だっただけで、何か特別な騎士とかでは無かったんだよ?と言う事は騎士団員なら殆どの人は知ってるって事だよね?」
「あぁ、プレーヤーは知らないけど、NPCなら常識だったって事ね?」
「そう。つまり知らないと遅れを取るけど、知ってるからと言ってトップに立てる情報じゃないって事だと思う」
「そもそも情報1つでトップに立ち続けるのは無理だよね。一時的にはトップに立てても、何か別の新情報1つで抜かれるだろうし」
「そ、それでも1度トッププレーヤーと認められればその後は元トッププレーヤーって肩書きが・・・」
まだ食い下がるヒルデを放置してサンドラと明日の話をする。
「話を戻すと、3人でチーノ婆ちゃんの所に行きたいのよ。魔法関係だからサンドラには関係ないんだけどチーノ婆ちゃんが3人で来ると勘違いしてて楽しみにしてたから訂正出来なくて」
「あ、良いよ。エリザとヒルデが行くのに私だけ別行動で仲間外れってのもちょっと嫌だし」
思ってたよりあっさり承諾を得る事が出来た。
「これでエリザのお願いは終わりね?私とサンドラのお願いにもエリザはちゃんと聞くんだよ?」
ヒルデが横から突然に変な条件を出してくる。
「ほう。私のお願いはチーノ婆ちゃんの所に行く事で、私はその後はヒルデとサンドラのお願いを聞けと?」
「そう言う事。これでお互い様だよね?」
「私はそれで良いかなぁ。このイベントで行きたい所が何ヶ所かあるし、私やヒルデが行きたい所にみんな付き合うって事で良いんじゃない?」
サンドラがヒルデの条件を微妙に変更する。
お願いを聞くと行き先を決めるでは大分違う。
サンドラ恐ろしい子・・・。
でも、私も特に行きたい所が無いから行き先を決めてもらえるなら、それはそれで楽なんだけどね。
翌日(ゲームでは2日後)ログインし、チーノ婆ちゃんに教えて貰ったら魔術ギルドに向かう。
「ねぇ、魔術ギルドって何?秘密結社?」
「私に聞かれても・・・掲示板には情報書いてなかったの?」
「ん・・・噂とか都市伝説レベルの書き込みなら、あったけど・・・魔術ギルド、盗賊ギルド、傭兵ギルド、錬金術ギルドとか他のゲームにはあるからこのゲームにもあるんじゃないか?みたいな書き込みが」
「じゃ、本当にあったって事?なら盗賊ギルドとかもあるって事?」
「エリザ・・・座敷童を発見しても、ぬらりひょんが実在する根拠にはならないんだよ?」
「サンドラ、ちょっとその例えは意味分からない」
「王都全域、こんな細い路地まで“あるかも知れない”で捜す物好きなプレーヤーは居ないんじゃないよね」
「あるって知ってる私たちも軽く迷ってるものね?エリザ」
うっ、サンドラには迷ってるのがバレてた。
ドアに鉄の花飾りを掛けとくって言ってたんだけどな・・・。
「2人も探してよ。鉄の花飾りが掛かってるドア」
「・・・ねぇ、エリザ。もしかしてあれじゃない?」
ヒルデの指を指した方向を見るとそこはどう見ても八百屋。
黄色や赤い実が籠に盛られて置いてあり、葉野菜や根菜も山積みになっている。
「ヒルデはあれが鉄の花飾りに見えるの?どう見ても野菜に見えるけど・・・」
「違うわその上よ。ちゃんと指の先を見てよ」
言われた通り、その上を見ると・・・八百屋の2階の窓に鉄で出来た丸い花飾りが飾ってある。
「え・・・あれ?」
一応、確認の為に1階の八百屋の店員に話しかける。
「あの・・・すいません。ここにチーノってお婆さん居ますか?」
「えっとお嬢さん達はなんだい?」
「あのチーノってお婆さんに魔法を教えて貰う約束をしてまして、場所はここら辺のハズなんですが迷ってしまいまして。鉄の花飾りを目印に掛けとくって言ってたんですが、もしかしたらこのお店の2階に飾ってあるのがそうかと思いまして声を掛けたんですが」
自分でも早口になってるのが分かる。
客観的に自分を見れば明らかに不審者だもの。
なぜなぜ私たちはみたいな若いのがお婆さんを訪ねてくるのか。
明らかに詐欺とか訪問販売とか怪しい感じがするもの。
「鉄の花輪?魔法?」
店員?店主?のおじさんは何の事だと言う感じで考え込んでる。
あれぇ?やっぱりここじゃないんじゃ?
「あの、一昨日の老人会で知り合いまして・・・」
「おお、来たかい!!待ってたよ!!」
「おふくろ!!」
「あぁ、私の客だよ。さぁ入った入った」
店主のおじさんの怪しむ視線を横目に店の奥に案内される。
店の奥から階段を降りて少し真っ直ぐ歩く・・・ん?地下道?幾つもの枝分かれした通路がある。
突き当たりの階段を上り、目の前のドアをチーノ婆ちゃんが不規則に叩と、鍵が開く音がしてドアが開けられる。
「さぁ、入った入った」
そこは広い部屋。間違いなく8畳以上ある。
そこに魔術と言うより錬金術で使うような訳の分からない道具が並んでる。
「その子らがチーノさんの弟子かい?」
「弟子って訳じゃないけどね、私に魔法を習いたいって言ってくれてね」
「そりゃ珍しい。最近の魔法使いは威力と人数でゴリ押しすりゃ良いと思ってる奴らばっかりなのにな」
チーノ婆ちゃんは部屋の中にいたお爺さんと話してる。
私たちの場違い感。
「おお、ほっといて悪かったね。それじゃこの奥の部屋でやろうか。部屋を1つ借りるよ」
「はいよ。ごゆっくり」
更に奥の部屋に入るとそこ長テーブルと長椅子があるだけの部屋。
「じゃ、とりあえず座ってちょっと待ってておくれ」
チーノ婆ちゃんは部屋を出て何か道具を持ってきて私たち3人に1つづつ渡す。
「あ、あの・・・私たちはボールの魔法を使えないんですが大丈夫ですか?光と闇と回復魔法しか覚えてないんですが」
「それ以前に私は魔法を使えないんですが・・・」
ヒルデとサンドラが質問する。
「んっ?あぁ、構わないよ。魔法が使えようと使えなくても魔力を持ってる事には変わらないからね。3人ともスタート地点は同じだよ」
なぜか嬉しいそうにチーノ婆ちゃんは笑った。
「それじゃ今渡した水晶をテーブルに置いて、あぁ転がらないように座布団を下に置いてね。そしたらそこに両手を合わせて魔力を込めるんだ。やってみせるから見ててみ」
そう言うと自分の目の前に置いた水晶に両手を載せてた。
すると水晶が青や赤、黄緑や黄色、紫と色々な色に変わる。
「この水晶は魔力を注ぐと色んな色に光るんだよ。やってごらん」
言われるままに魔力を込めると水晶が赤く光る。
ヒルデの水晶は紫、サンドラのは青く光ってる。
「魔力の注ぐ量によって青、黄緑、黄、紫、赤の順に光は変わるからね、じゃとりあえずは・・・そうだね黄色に光るように魔力を調整してごらん」
魔力の調節と言ってもどうやるか分からない。
とりあえず赤く光ってると言う事は魔力を注ぎ過ぎてると言う事だから込める意識を弱めてみる。
すると赤い光が黄緑色に変わる。あれ?弱め過ぎた?
魔力を込める意識を強めると紫色に変わる。
これ調節が難しいな・・・ヒルデとサンドラを見ると2人も苦戦してるようだ。
「じぁあ、とりあえずは狙った色に1発で光らせられるように練習だよ。あ、魔力切れは心配しなくて良いから好きにやっておくれ」
そう言うと悪戦苦闘する私たちを見ながらチーノ婆ちゃんは嬉しいそうにな笑った。




