王都魔法ギルド再び
「えっ?個別に行動?」
サンドラの発言に私が聞き返す。
「ほら、エリザがワガママ言うからサンドラからクラン解散通告が」
ヒルデが私のせいにして茶化す。
「今の状態だと私とエリザは従魔との経験値配分の関係でヒルデの一人勝ちなのよ。ソロで経験値稼ぎをしてその差を埋めないとねぇ」
私をからかうヒルデをからかう様にサンドラが話す。
「あ・・・それはあるかも。そう言えば私もアインとラメドと経験値が等分されてるから、実質ヒルデの1/3しか経験値入ってないんだった」
とりあえずサンドラの話に乗っかり、ヒルデに矛先を返す。
FEOの経験値配分はまずパーティーのプレーヤー人数で頭割りして、その頭割りした経験値を本人と従魔で頭割りして加算される。
つまり魔女の庵として1回の戦闘で経験値180を手に入れたとすると私とヒルデとサンドラの3人頭割りして、1人頭の経験値60。
私はその経験値60を私と従魔のアインとラメドと頭割りしてそれぞれ経験値20を獲得する。
サンドラは従魔のシエロと経験値60を分けてそれぞれ経験値30を獲得。
一方、ヒルデは従魔を使ってないので丸々経験値60を獲得してる。
その得た経験値を使ったスキルで分配する訳だから、ヒルデは私より3倍スキルレベルが上がり易い事になる。
このゲーム、微妙にテイマーに厳しいんだよね。
まぁ、従魔を1匹増やす毎に戦闘での手数が増える訳だからメリットとデメリットが釣り合ってるのかも知れないが、パーティーとして考えると成長率が歪になる。
「本当はねぇ、ヒルデも従魔を1匹手に入れて1人と1匹×3で6人パーティーを組むのが1番良いんだろうけどねぇ」
「それね。どっかの誰かが1人で2匹も従魔を連れてるから私が従魔を手に入れてもパーティーに入れる事が出来ないんだよね。1パーティー6人までしか入れないから」
おっと考え事をしてたら、矛先が私に戻ってきた。
「それ、私がアインとラメドを代わりばんこで召喚すれば解決するからね?」
「えぇ・・・でもアインとラメドに悪いじゃん?アインとラメドはいつも一緒じゃないと」
ヒルデが訳の分からない理論を語る。
「ねぇ、話を戻すよ?イベントまで2週間あるんだからその内の1週間で私はレベル上げ、エリザは王都に行って来て、ヒルデは金策の方法を探し出すって事で良いんじゃない?」
「えっ?私が金策の方法を探すの?どうやって?」
「ん・・・色々な掲示板を覗いたりして?」
「それってログインするなって事!?」
「あ、それ良いね。それで経験値差が少し埋まるかも(笑)」
「・・・ちょっと待って。イベント報酬でお金儲けするんでしょ?イベント前に私が金策を探す必要あるの?」
「あっヒルデ、そこに気がついちゃった?じゃ1週間、ヒルデの行動はフリーで良いよ?」
最終的には軽口の叩き合いになったけど、だいたいの方針が決まりそれぞれ個別行動に移る。
私は今いる東の第2の街から、王都行きの乗合馬車に乗り込むとその日はログアウトした。
翌日、ログインすると乗合馬車は無事に王都に到着していた。
乗合馬車の停留所を出た私は、大通りのお店で買い食いをしつつ、王都の魔法ギルドへ向かう。
チーノ婆ちゃんが居てくれると良いんだけど・・・。
王都の裏路地を移動して、おじさんが店番してる八百屋に辿り着く。
「こんにちわ。チーノ婆ちゃんいますか?」
過去に何度か来てるがおじさんが私を覚えてるか分からないので、魔法ギルドの会員証を八百屋のおっちゃんに見せ、チーノ婆ちゃんが居るか聞く。
「んっ?あぁ、お嬢さんかい。久しぶりだな。おふくろは奥にいるよ」
会員証を見て思い出したのか、ちゃんと覚えてたのか分からないがおじさんが店の奥へと通してくれる。
店の奥の階段を下り地下道のような場所を真っ直ぐ進む。
突き当たりの階段を上ると目の前のドアをあるルールに従い不規則にノックする。
前回、魔法ギルドのカードを貰った時に教えられたノックの仕方。
少し間があってドアの鍵が開く音がする。
「こんにちわ。一応、会員のエリザと言いますが・・・」
ドアを開け魔法ギルドの会員カードを見せながら部屋の中へと入る。
中に入ると前に会った事があるようなお爺さんが居た。
ん・・・多分、前に来てた時に挨拶ぐらいはした事あると思うんだけどな・・・。
私の事、分かるかな?流石に追い返されたりしないよなぁ・・・。
「はいよ。いらっしゃい。チーノさんの弟子の子だね。読んでくるからちょっと待ってな」
そう告げるとお爺さんは奥の部屋へと行ってしまった。
しばらくすると勢い良くドアが開けられチーノ婆ちゃんがやってきた。
「おお、エリザちゃんかい。久しぶりだね今日は1人かい?」
「はい。すいません今日は私1人なんですがちょっと相談したい事があって来ました」
「ほう相談かい?どれ奥においで」
奥の部屋へと案内されると中には、お爺さんとお婆さんが3人座ってお茶を飲んでいた。
「おぉ、チーちゃんの弟子かい。いいのうチーちゃんは若い弟子が出来て」
「ほんにのう。私の弟子なんて反発して顔すら見せないよ」
「分からんぞ?チーノさんスパルタだから、あと少ししたら喧嘩別れするかも知れん」
・・・好き勝手言って笑ってるがどうやら本心じゃなく冗談で言ってるみたいだ。
魔法ギルドってより、年寄りの集会所って雰囲気なんだよなぁ。
「あれらは無視して構わないからね。それで今日はどうしたんだい?」
チーノ婆ちゃんは隣でガヤガヤ言われてるのが少し照れくさそうに私に話を促してくる。
「その実はスキル統合で【精霊魔法】を取ったんですけど、土火水風の魔法スキルを持ってた頃より戦闘で使いにくくて何かコツがあるのかな?と思って相談しに来ました」
「おぉ【精霊魔法】を取ったのかい?それじゃ魔法を連射を出来なくなって困ってる感じかい?」
「そうです。1発撃つと待機時間に入ってしまって戦闘でパーティーの足を引っ張ってる感じなんですよ。それで【授与魔法】と【強奪魔法】も取ってみたんですがそれでもパッとしなくて」
「【授与魔法】に【強奪魔法】ねぇ・・・他に魔法のスキルは何を持ってるんだい?」
チーノ婆ちゃんに自分の持ってるスキルを提示する。
『エリザ』
【短杖 Lv.9】
【棍棒 Lv.9】
【服Ⅱ Lv.4】
【精霊魔法 Lv.7】
【授与魔法 Lv.3】
【強奪魔法 Lv.3】
【MPup Lv.26】
【MP回復up Lv.26】
【魔力操作 Lv.19】
【調教 Lv.7】
『控え』
【長杖 Lv.30】
【棍 Lv.30】
【魔力up Lv.30】
【詠唱短縮 Lv.30】
【騎乗 Lv.1】
「こんな感じなんですが・・・」
「うーん、これは困ったねぇ。スキルの選択はある意味間違ってはないけど今すぐ何とかするのは難しいのう」
「えっ?そうなんですか?」
「【精霊魔法】はそれ自体が強力なスキルでのう、レベルさえ上げれば普通の魔法スキルより魔力の上昇の恩恵は大きいのじゃよ。なんせ魔法スキル4つを統合したスキルだからのう。その代わりスキルレベルを上げるのが大変なんじゃ」
チーノ婆ちゃんが少し困ったように話す。
なるほどスキル補正の値が大きいから魔法の威力が自然と上がると。
「とりあえず【MPup】と【MP回復up】をレベル30まで上げれば【魔力up】と3つ合わせてスキル統合が出来るから、その後に新たな魔法補助スキルを獲得するのが良いじゃろうな」
「そうですか・・・とりあえず今は辛抱してスキルレベルを上げるしかないんですね」
「そうじゃな。1発1発の魔法の威力は高くなるからそれを【魔力操作】を使って確実に当てる。それが基本となるね。いいかい?ゴリ押しじゃなく丁寧に当てていくのが大事だからね?」
「はい。ありがとうございます」
確実に当てて削る。基本は大事だよね・・・。
魔法を乱射してゴリ押しじゃなく堅実な立ち回りを覚えないと。
「チーちゃんはツレナイのう。せっかく弟子が来たんだから修行を付けてあげたら良いのにのう」
「それならワシらが稽古付けてあげたら良いじゃろ」
「それは面白そうじゃのう。チーちゃんの弟子がどれだけの者か試してみようかね」
・・・ん?
隣で話を聞いていたお爺さんお婆さんが何か言い出した。




