原点回帰
「どうもありがとうございます。目的の物を無事に採掘出来ました」
湖畔の岩場で採掘を行ったフォレストキーパーのノッチさんから依頼達成を告げられる。
「いえ、無事に採掘できて良かったです。それでは街まで帰りますか?」
とりあえず湖に落ちたザリガニを逃がした失態をスルーしてしまおう。
もう終わった事として過去の事はスルーして未来の話題を振ってしまおう。
「あ、はい。お願いします。それで帰りも採取しながら帰りたいので来た時とは違うルートで、別のログアウトポイントを経由して帰りたいのですが・・・」
おいおい、まだまだ採取するつもりなのか。
守銭奴と言うか、落ちてる小銭は全て拾っていくスタイルと言うか。
でも、採取しながらだと移動速度が遅くなるんだよなぁ。
私達は明日は学校があるから夜更かしはしたくないし。
「えっと、そうすると今日の4Qの終わりまでに街に到着できるか分からなくなると思うんですが・・・」
「あ、そうですね。それでは次のログアウトポイントまでの護衛と言う事でどうですか?」
「次のログアウトポイントまでと言う事は3Qまでと言う事ですか?私達は大丈夫ですけどノッチ達はそれで良いんですか?」
「はい。街に近くなれば魔物もここよりは弱くなるので私達だけでも何とか対処は出来ると思いますし、それに私達は夕食休憩を取らなくても大丈夫ですから、ログアウトしなければ4Qの終わりまでに街に到着できます」
リアルでの御飯を食べず強行軍とか、この人たち廃人に足を一歩踏み入れてるんじゃないの?
私たちなら夕飯を食べずにゲームやってたら親に怒られゲーム禁止される怖れすらあるもの。
今だって毎日、休みの日までゲームにログインしてるの良く思われてないんだし。
「ありがとうございます。それでは3Qいっぱいまでシッカリ護衛します」
「あ、私たちは目的のアイテムを手に入れたので成功報酬の護衛料を渡しておきます」
たぶん今、渡しておけば帰りにどちらかが死に戻りしても大丈夫との配慮だろう。ありがたく貰っておこう。
ノッチさんから残りの護衛料15万マニを受け取りヒルデとサンドラと分配する。
帰りも小カマキリの群れやジャンプして頭上からプレス攻撃をしてくるバッタなどを何とか死人を出さずに撃退し、ログアウトポイントへと到着した。
「それじゃ護衛ありがとうね」
「普段行けないエリアで採取できて助かっよ」
「またどこかで」
「それではどうもありがとうございました」
簡単な挨拶をし、このまま採取しながら街に向かうフォレストキーパーの人たちと別れた。
私たちはログアウトポイントでテントを張ってログアウトし、夕飯を食べ再びログインする。
う~ん、冷静に考えると私たちも廃人っぽいな。
学校があるから平日の日中にログインしてないだけで。
でもその割にはトッププレーヤーグループに成れてる気がしない。
まぁ流石に食事や睡眠時間を削ってる人たちと渡り合えないか。
「エリザ、お疲れ~。これからどうする?」
先にログインしてて丁度居合わせた商人プレーヤーに魔物のドロップ品を売ってたヒルデとサンドラが戻ってきて脈絡もなく話を振ってくる。
「これからっで普通に街に戻るんじゃないの?」
「え・・・だってさ。このまま戻れば採取しながら戻ってるフォレストキーパーに追い付いてまた会いそうじゃない?」
「あれ?ヒルデ、フォレストキーパーの人たち苦手だったの?」
普通に仲良く話してたと思ってたからちょっと意外。
「そんな事は無いけど、さっき別れたばっかりでまた遭遇するって何か気恥ずかしくない?」
「そう?追い付いたら、折角だから街まで護衛しますよ。って護衛してあげたらちょっと恩を売れそうじゃない?」
サンドラの発言が計算高い。
腹黒め。
「サンドラ、フォレストキーパーの人達が採取で時間を使って、日付が変わる前に街に辿り着けないかも知れないからここで別れたんじゃない。護衛したら本末転倒でしょ?」
「ん・・・それじゃ、私たちは湖に戻ってザリガニにリベンジする?みんなで遠距離からコツコツ削れば倒せるでしょ?」
「それ、また湖の中に逃げられるパターンじゃ?」
「その時はエリザにロープを結んで湖に沈めてザリガニ釣りして陸地まで引っ張り上げれば良いじゃない?」
「なんでサンドラは私をスルメの代わりにしたがるのよ!!普通にここらで狩りしてスキル上げやって明日街に帰れば良いんだけでしょ?」
「そうね。サンドラには我慢して貰って私たちはここでカマキリ狙いで狩りしようよ。・・・ちょっと無双してる感じで気持ちが良いのよ。あれ」
ヒルデが賛同して2対1になりその日は森で狩りしてその日は終了した。
翌日。
学校から帰り、夕飯を食べてログインすると既にサンドラとヒルデがログインして私の事を待っていた。
「ねぇ、告知みた?第2弾のイベント開催だって」
イベントと聞いて少しヒルデはテンションが高くなってる。
「へぇ、次はどんなイベント?」
「それはまだ発表に成ってないけど、10月1日から10月31日まで丸々と1ヶ月間やるみたいよ」
「えっ?イベントを1ヶ月もやるの?」
「そこはあれでしょ?今月の15日から順次新人プレーヤーが参加出来るようになるから、その人たち向けのキャラ育成強化月間みたいな?」
「あっ、そっか。ソフト数の販売数を絞って一括して決まった日に新人が参加してたけど、これからはソフトが大量にお店に出回るから買った人から順次参加してくるようになるのか」
「そうだよ?私たち有料デバッガーのおかげでサーバー負荷テストも済んだからねぇ。ここからが正式運用と言う感じになるんじゃない?」
「ちょっとサンドラ、有料デバッガーとか言うの止めて。私たちこのゲームで特にバグとかに遭遇してないじゃん」
有料デバッガーって言葉に反応したヒルデが反論する。
「でも、1ヶ月もかけてやるイベントってなんだろ?新人向けのイベント内容だよね?」
「う~ん。また王都でお使いイベント・・・って事は無いとは思うんだけど」
「私たち最終的にゲームの中で荷物配達ってアルバイトしてたからねぇ。今度はもうちょっと違った内容が良いよね」
何か前回のイベントが遠い昔に感じる。
「それじゃイベントに向けてスキルのレベル上げ頑張らないと」
「エリザ、今の私たちの目的はクランハウス改築の為の費用集めだよ?」
ヒルデが私達の目的を確認するように告げる。
どうやらいまだにクランハウスに執着してるみたいだ。
「それじゃあ、イベントを頑張ってイベント報酬でお金を稼げば良いって事じゃない?」
サンドラもどうやらクランハウスを諦めきれないみたい。
「と言う事は?イベントで良い報酬を取る為に今の内にスキルのレベル上げを・・・」
「もうエリザ、話をループさせないでよ!!」
ヒルデは何が気に食わないのだろう?
「でも、そのお金儲けをしようとアイアンゴーレム狩りを企んで見事に玉砕して、何故か第2の街で遊んだり護衛してた訳じゃない?やっぱり魔物を狩るしか無いんだよ?私たちには」
「それはまぁ、それで少しだけどお金が貯まってきてる訳だからその通りなんだけど・・・」
「ほら、お金も儲かってスキルのレベルも上がって一番良いじゃ無いの魔物狩り・・・って、あっ!!」
そうだ。
大事な事を忘れてた。
「どうしたの?エリザ」
「あ・・・私、1度イベント前に王都に戻りたいかも。チーノ婆ちゃんの所に行って魔法を連射出来なくなった事を相談しときたい」
そうだそうだ。
今の私は魔法使いとテイマーとバフ・デバフ係と何でも屋みたいでどれも中途半端な感じだから、王道の魔法使いとして戦える方法を何とか見付けないと。
「ん・・・それじゃあ、ヒルデも普通の魔物狩りよりお金儲けしたいみたいだし、エリザも王都に戻ってやりたい事があるみたいだし、1週間ぐらいみんな個別に行動してみる?」
話をまとめるようにサンドラが意外な提案をしてきた。




