魔法ギルドの重鎮たち
「ほれ、こっちに着な。ワシらが色々と教えてあげよう」
「チーちゃんがわざわざ教えてあげてる子ならちゃんと修行やれるよね」
「最近の若い子にコツコツ地味な修行をさせてものぅ・・・」
あれ?隣のテーブルで話を聞いていたお爺ちゃんお婆ちゃんが声を掛けてきた。
これ答えて大丈夫なのかな?チーノ婆ちゃん怒ったりしない?
チーノ婆ちゃんとこの爺ちゃん婆ちゃんの二者択一とかじゃないよね?
「まったく好き勝手言って・・・何横から口出ししてるんだい。あんたら自分が教えてた子達に逃げられたバッカリでしょ?」
そんな感じに私が戸惑っていると私より先にチーノ婆ちゃんが声に反応した。
「えっ?逃げられた?」
「そうだよ。厳しくし過ぎたり、長時間練習させたりそれぞれやり過ぎて魔法を習いにきた子達に逃げられたんじゃよ」
「何を言ってるじゃ。ワシらが若い頃はもっと修行に明け暮れたもんじゃよ。それに比べたらヌルい修行じゃったのに」
「そうだよ。修行ってのは地味な作業の反復練習だよ?それを3日や4日繰り返したぐらいで根を上げては修行に成らないよ」
「ん・・・ワシャ心を入れ替えた。派手なスキルをドンドン教えていくぞ?」
チーノ婆ちゃんの指摘に爺ちゃん婆ちゃんが好き勝手に言い訳してる。
うん、言い訳だよね。どれだけ無茶苦茶な修行をしたのか。
・・・そう言えば【魔力操作】を習った時も朝から晩まで休まず練習やって、それが3日続いたの思い出した。
で、話を聞く分にはこの爺ちゃん婆ちゃん達はあれよりキツい練習法を強要したのか・・・。
ゲーム的にどうなのそれ?
まぁ、キャラ育成するのに周回する作業ゲーは古今東西色々とあるし、それと比べれば3日で済むのは軽いのかも知れないけどさ。
ステータス補正とスキルレベルでゴリ押しも自分の立ち回りでも強く成れるのだから、そこまでして【魔力操作】を習うのは物好きの部類だよね。
・・・あれ?私達3人は物好きなのか?
「また好き勝手言って・・・。さっきのエリザちゃんのスキルを見てたじゃろ?魔法系の補助スキルのレベルを上げる以外に何が出来るんだい?」
「それなんじゃがの。この子はちゃんとレベル30まで上げてもスキル進化させずにそのままにしてるんじゃから、統合できるスキルを覚えさせた方が良いじゃろ?」
「チーちゃん、ワシら4人いて全員暇してるんだから、1つづつスキルを教えたら丁度良いじゃないかい?」
「それええのぅ。延々と同じ修行をするんじゃなく、そうじゃの・・・1人1日3時間交代でどうじゃ?」
爺ちゃん婆ちゃん達が話を色々と勝手に進めてく。
流石のチーノ婆ちゃんも多勢に無勢で丸め込まれてる感じがする。
私、4人から教わるの?1人3時間で計12時間延々と修行とか、そう言う処じゃないのかな?この魔法ギルドに若い人が居ないのは。
・・・あ、そう言えば南の街の魔法ギルドはこの魔法ギルドと仲が悪いと聞いたけどこう言う処に反発してるんじゃないの?
この人達に付いていけなくて、ここを辞めた人達が集まって作ったのが南の街の魔法ギルドとか?割りとありそう。
「あのっ!!私の事を私抜きで決めるの止めてもらえますか?せめて相談に混ぜて貰いたいんですけど!!」
ここまでは何かとんでもない事に成りそうなので、話がエスカレートしていってる爺ちゃん婆ちゃん達の話に割って入る。
練習すっぽかして逃げるって手もあるんだけど、それやっちゃうと次に何か相談したい時にこの魔法ギルドにくるの敷居が高く成っちゃうし。
「おぉ、悪いの。この爺さん婆さん達が言ってるのはね、スキルのレベル上げ前に統合用のスキルを習得させてしまおうって事なんだよ」
「そうじゃ。おまいさんは【詠唱短縮】と【魔力操作】をもっとるじゃろ?それとスキル統合できるスキルを習得させてあげようと思っての」
「えっと、あの・・・私がここに来たのはスキル統合して【精霊魔法】を取ったせいで戦いにくくなったのを改善する為に来たんですよ?他のスキルまでスキル統合して更に戦いにくくなったら本末転倒なんですけど?」
戦い方の相談に来たのに、なんでスキルを覚えてスキル統合する話になってるのか。
目的がズレてる気がする。
「まったく最近の若い子は。話は最後まで話を聞かんから・・・」
「大丈夫じゃ。戦い易くする為の魔法補助スキルじゃ。戦いにくくなったら補助とは言わんじゃろ?」
「まぁ、癖はあるが巧く使いこなせば格段に戦い易くなるのは保証するぞ?」
ん・・・なんか怪しい。
上手く丸め込まれてる気がする。
宗教の勧誘とかで大勢で1人を囲んで説得してるみたいな。同調圧迫と言うか洗脳と言うのか。
空気に飲まれ流される感じが。
「えっと・・・私はなんて名前のスキルを習うんですか?」
それでも私は【詠唱短縮】と【魔力操作】が統合出来るなんて知らなかったんだし一応情報だけでも聞き出してみる。
もし長時間修行しなくてもスキルポイントを消費して取れるスキルならそっちの方が楽だし。
「おぉそうじゃの。それも説明しないとの。【詠唱短縮】と統合出来るのが【MP消費減少】と【並行詠唱】、【魔力操作】と統合できるのが【連続発動】と【発動待機】じゃ」
えっ?1つじゃなく4つも教えてくれるの?
それはちょっと魅力的だけど・・・1日12時間の修行をさせられるんだよね?
私は覚えるまでに何日通う事になるの?これ。
求められてる事は廃人のそれだよ?これ。
ふと思い出し、スキルリストから言われたスキルがあるか確認してみる。
「あ、私【MP消費減少】と【並行詠唱】は直ぐに修得が出来ますよ?修行は【連続発動】と【発動待機】だけ大丈夫です。名前的にもそっちの方が役に立ちそうですし・・・」
「それはダメじゃ」
「そうじゃのぅ。覚えるスキルが2つでは2人は何も教える事が無くなってしまう」
「そうだねぇ。私達かスキルを教える条件は4つ習う事だねぇ」
えっ?なんか爺ちゃん婆ちゃん達が無茶苦茶言い出した。
「あの2人組に分かれて2人で1つのスキルを教えて貰うって事には・・・」
「それでは勝負にならんじゃろ?」
「そうじゃ。誰が1番教えるのが上手いのかの勝負なんじゃから」
・・・。
もしかして、この爺ちゃん婆ちゃん達は私を使って暇潰しをしたいだけなのかな?
勝負って何よ?そんなのに何故私が付き合わなければ成らないのか。
・・・でもスキルリストからは修得できない【連続発動】と【発動待機】が気になる。
名前的に魔法の連射が出来る様になるスキルっぽいんだよね。
モロに私の悩みを解決するスキルっぽい。
しかし、なんだろう?欲しいスキルを習う為に必要ないスキルまで習わないと駄目ってこの抱き合わせ商法みたいな手口は。
イベント開始まで約2週間、ヒルデやサンドラと話して決めたソロ活動期間は1週間。
1週間で4つも覚えられるだろうか?
あぁ・・・、迷ってる時点で既に興味持ってるって事なんだよねぇ。
断ったら後から後悔するやつだ。
チラッとチーノ婆ちゃんを見てみる。
「エリザちゃん、気にせず好きに決めて良いよ。最初の予定通り今はスキル覚えず今あるスキルのレベルアップするだけで十分なんだからね」
チーノ婆ちゃんは当初の予定で大丈夫と言ってくれてるけど・・・。
「言っておくが今回はたまたまワシらの気が向いたから特別にスキルを教えるって事になっとるだけじゃなからな?今回を逃すと気が向くとは限らんぞ?」
「その時はワシが教えるから大丈夫じゃ」
「裏切り者!!」
この老人達は・・・。
「分かりました。4つ習わせて下さい。ただ私の都合で3日おきにしかギルドに来る事が出来ないですがそれで良いですか?」
とりあえずこれだけは言っておかないと。
ゲームの中の時間は時間が加速してるからリアルの1日がゲーム内では4日。
平日に私がゲーム出来るのは学校から帰ってきた夜の第4Qだけ。
1Qから3Qまでゲーム内の3日間はログイン出来ないんだから。
「ん・・・しょうがないのぅ。」
「そうだねぇ。そこが妥協点かの」
「それじゃ誰がどのスキルを教えるか決めようかの。あみだくじで良いかの?」
「誰が早くスキルを修得させれるか競争だからの」
「ビリになった人は次のギルドの会長をやって貰うからの」
何故かチーノ婆ちゃんもノリノリであみだくじに線を引いてるんだけど・・・大丈夫なの?この魔法ギルド。




