第08話 アシビオン冒険記➁(興味はあるけど、今じゃない)
本の終わりはこう締めくくられていた。
「優しさは人との繋がりを作り、心を豊かにする。
そして、大切なのはかけがえの無い仲間を見つけることだ。
その仲間はきっと君のことを待っているはずだ。
世界は広い。そして、君はどこまでも遠くに行けるのだから」
今回の本でも仲間同士でよくトラブルが起きていた。
それでも、ケンカと仲直りを繰り返していくうちに、お互いのことが分かってきて、段々とパーティーがまとまっていった。
四人の中の一人が欠けても、パーティーとしてダメなような気がする。
それほどに四人の関係が良くなってきているのだ。
そうそう、ケンカで面白かったのは、ルンとネンのケンカだ。
ネンがルンに文句を言って、ルンがキレてネンに突っかかった。
これはいつものことだけど、ルンが大斧を持ち出し、ネンも長い柄の斧を構えた。
武器を使うのはヤバい、ということでベンとアンが止めに入った。
ベンがネンに「武器はマズいだろ」と言った。
アンはルンをなだめている。
ネンが「先に武器を出したのは、あの樽女だろ! 先にあっちに言え!」と言った。
ルンが「うるさいナナフシ! 叩き潰してやる!」と言い返した。
ルンは背が低くて太っている。重い斧を振り回すときに体重がないと都合が悪いからだ。
ネンは背が高くて痩せている。ナナフシは小枝のような体に細い手足が付いている虫だ。
「お前は虫を叩き潰すのに斧を使うのか? もっと頭を使ったらどうなんだ」
「うるさい!」
「そもそもそんな攻撃は当たらない。一発で決めてやる。覚悟しろ」
「うるさい!」とネンとルンが言い合う。
二人が爆発寸前のところでベンが「ネンやめろ、好きな女に武器を向けるのは良くないだろ」と言った。
ネンは「バッ、バッカじゃないのか」と顔を真っ赤にして言った。
そして「くだらない」と言って、その場を離れてしまった。
残されたルンはあっけにとられている。
そして、ネンとは逆の方へ行ってしまった。
アンがベンに「本当にネンはルンのこと好きなの? 全く気づかなかったわ」と言った。
ベンは「知らね」と言った。
「知らないって、適当なことを言ったの?」
「ああ言えばケンカが収まると思ったんだ。確か、ケンカするほど仲がいいって言ったよな?」
「凄いわね。あなた……」ベンとアンがやりとりを繰り返し、アンが呆れている。
それからのベンとネンはいつも通りケンカをするけど、なんとなくお互いを意識するようになっていく。
ベンとアンの方は、やんちゃな弟に振り回される姉といった感じだ。
そして、四人はいつもいい感じで賑やかだ。
この本を読んでいると、村の外に興味が湧いてくる。
僕はこの村を出たことがない。
でも、今はなにがなんでも行ってみたいといった感じじゃない。
大人になって、医者になってから行くつもりでいる。
それまでに、もっとこの世界について勉強しなければと思っている。
「あら、もう読んじゃったの。面白かった?」
「うん、すっごく面白かった。急いで読んじゃったから、あとから読み直す」
お母さんはとても嬉しそうだ。
「そう、それは良かったわ。ところで、少し早いけど、お昼ごはんはどうしようか?」
「いいよ、お腹減ってないし。さっき言っていた、お届け物はどれ? 行ってくる」
「お届け物はこれよ。小さな長細い箱はシルバに、小袋はエナムさんに、手紙もそれぞれあるからよろしくね。
行く前に、これだけ飲んでいって」
牛乳をカップに入れて熱くして渡してくれた。
「熱いから気をつけてね」
確かにちょっとだけ熱い、魔法で冷まして一気に飲み干した。
届け物の小さな長細い箱は小さいキュウリが二本入るくらいの大きさで、小袋は小さいトマトくらいの大きさだ。
そして、届け物と手紙をそれぞれショルダーバッグに入れた。
「行ってきます」
僕は家の扉を開ける。
「行ってらっしゃい。気をつけてね」
お母さんはいつも通りニコニコと送り出してくれた。




