第07話 アシビオン冒険記➀(すっごく面白い)
ふー、ようやく食べ終わった。お腹パンパンだ。
「クー、もういいの? パンとチーズとサラミならすぐ出せるけど」
「もう、お腹いっぱいだよ」
「たくさん食べないと大きくなれないわよ」
「大丈夫、そのうち大きくなるよ」
僕は平均より少しだけ(・・・・)小さい…… いや、平均くらいだ。
伸びてはいるけど、まわりも伸びているので、ポジションが変わらない。
特にクリスと一緒にいると身長差が目立ちすぎる。
もう少し、背が欲しいけど、お母さんも大きくないし微妙かもしれない……
「今日の朝ごはんの後片付けは私が1人でするわね。
そのかわり、お昼からでいいから、シルバとエナムさんにお届け物してくれない?」
鍛冶師のシルバはお母さんと仲が良い。
エナムさんはエナ爺のことだ。
「うん、いいよ。分かった」
わざわざ出かけさせようとするのは、何かビックリさせようとしているな。
夕ごはんかな。誕生日だし。
あー、そうだ、去年の事を思い出してしまった……
あれはビックリだった。
お母さんでなく、幼馴染のティルがやった事なのだが……
ティルはシルバの娘で問題児だ。
今年は何事もなければいいけど…… 不安だ。
そんなことよりも今は本だ。
これでようやく誕生日プレゼントの本が読める。
お昼までは十分に時間があるし、全部読めるはずだ。
本のタイトルは「アシビオン冒険記 三巻 森の精霊」となっている。
タイトルのアシビオンとは、アシビオン大陸の事だ。
そして、僕たちの住んでいる村もアシビオン大陸にある。
村はアシビオン大陸の東端にあって「狂魔獣の村ユピアート」と呼ばれている。
「狂魔獣の村」と言われるわけは、この土地にすさまじく狂暴な魔獣たちが住んでいて、千年以上も前に、冒険者たちがその魔獣たちを倒して村を作ったからだ。
この本は話も面白いけど、現実に存在するアシビオン大陸の場所を舞台にしていて、その場所の説明も多いので、すごくためになるのだ。
表紙をめくって読み始める。
この本は、やっぱり楽しい。
僕は夢中で読み進めた。
そして、一気に最後まで読んでしまった。
相変わらず四人の関係が面白い。
女戦士ルンと男魔法戦士ネン、男戦士ベンと女魔法戦士アン、この組み合わせでコンビを組むことが多い。
ルンは大きな斧を持っていて、攻撃の後に隙ができやすいので、長い柄の斧使いのネンがフォローに入る。
ベンは棒を持っていて、勝手に動き回るので、魔法の得意なアンがフォローに入るといった感じだ。
それで、コンビを組んでいるルンとネンはよくケンカをするし、ベンとアンもよくケンカをするのだ。
ルンのことになるといつもは冷静なネンがそうじゃなくなるし、ベンのことになるといつもは大人っぽいアンがそうじゃなくなるから面白い。
男同士、女同士のときも、やっぱりドタバタで笑える。
なんとなくチグハグな四人だけど、力を合わせたときはすごくって、とってもカッコいいのだ。
この本の事件の中で特に面白かったのが、森の中で百頭以上の人間サイズのトリトカゲに襲われ、みんなバラバラになってしまったときの話だ。
トリトカゲの中には魔獣もいて、それぞれが戦いの中で絶体絶命といったときに、偶然に精霊災害が発生して、大きな炎があちこちに噴き出し山火事になってしまう。
トリトカゲたちはパニックになって散り散りになり、トリトカゲたちからは逃げることができたが、今度は山火事の炎から逃げなくちゃならない。
はぐれた仲間たちを探しながら、そして助け合いながら間一髪で脱出するといった感じの話だ。
◇ ◇ ◇
◇「トリトカゲ」とは二足歩行の鳥に似たトカゲ、またはトカゲに似た鳥の
ことだ。
トリトカゲには肉食と草食がいるけど、危険なのはもちろん肉食の方だ。
とんでもなくデカくて、ヤバイのがいるらしい。
◇「魔獣」はトリトカゲにも、トカゲにも、鳥にも、そのほかの動物にもいる。
魔法が使えれば魔獣なのだ。
それぞれの魔獣によって「肉体強化魔法」とか「物質魔法」とか使える魔法が
違う。それは人間と同じだ。
◇「精霊災害」についても詳しく書かれていて勉強になった。
精霊災害は、ある場所で精霊力が暴走する事によって起こる。
突然「火」「空気」「水」「土」などの物質を発生させたり、移動させたり、
変化させたり、消滅させたりする現象で、場所や規模もバラバラで原因も
不明とのことだ。
規模の大きいものでは、町が丸ごと壊滅してしまう事もある恐ろしい現象だ。
◇「悪魔」についても少し書かれていた。
悪魔は物質を消滅させる大きな精霊災害の後に生まれるという言い伝えが
ある。
ウソか本当かは分からない。
僕は悪魔については作り話でないかと思っている。
人間が使える物質魔法は、物質の「発生」「移動」「変化」で、「消滅」が
使えない。
だけど、精霊災害は「発生」「移動」「変化」「消滅」で、「消滅」がある。
だから、消滅は悪魔の仕業で、悪魔が生まれるなんて云うようになったんだと
思う。
それに、悪魔がいたという、はっきりとした証拠もないからだ。
◇ ◇ ◇
※「トリトカゲ」は二足歩行の「恐竜」のことです。
なぜ「恐竜」という言葉を使わないかというと、別に「竜」がいるからです。
それから、おとなしい「恐竜」や小さな「恐竜」を、「恐ろしい竜」と言いたく
なかったからです。
ちなみにこの世界では、四足歩行の「恐竜」は「トカゲ」と呼んでいます。
「恐竜」が「恐ろしい(ほど大きな)トカゲ」という意味だからです。




