第38話 言い争い(嫌な感じだ)
入った場所は、そのまま食堂になっていた。
活気があって、飲み食いしている人たちがたくさんいた。
先頭の兄ちゃんが空いているテーブルに行こうとした。
「オウ、おめえら生きて戻って来たのかよ」
男の人が大声で呼び掛けてきた。
その人は立ち上がり、こちらに近づいてきた。
兄ちゃんよりでっかい。
目が小さくて鼻の穴が大きい、でっぷり体型だ。
顔が赤くなっている。酔っているようだった。
「それで、向こうはどうだったんだ」
大男は兄ちゃんがユピアート村に行ったことを知っているようだ。
「何もなかったよ」
兄ちゃんは少し不機嫌そうだ。
「何もないって、どうゆうことだよ。ちゃんと答えろよ」
その大男は、道を塞ぐように立っている。
「なぜ、俺があんたに答えなきゃいけないんだ。俺は腹が減っている。そこをどいてくれないか」
「おいおい、何を隠してるんだ。あの村はどうなっちまったんだ。あの村にはお宝がたんまりあるって話じゃないか、ここにいるみんな全員気にしてるんだぜ。ケチケチするなよ、なあ兄弟」
大男はニタニタと笑っている。
そして、さっきまで騒がしかったのに、いつの間にか静かになって、みんなこちらを見ていた。
「ケチケチも何も無い。本当に何もないんだ。精霊災害で村が丸ごと消えちまった。建物も人も何もかもな。持って帰れる物は土しかないぜ。さあ、どいてくれ」
「本当なのか、その話。お宝を独り占めしようってんじゃないだろうな」
大男は、疑うように、しつこく食い下がってくる。
「なんでそうなる。独り占めするなら戻ってこねえよ。ウソだと思うなら、行ってくるといい」
兄ちゃんは不機嫌そうに言った。
大男は気に食わなそうな顔をしながら道を開けようとして、僕の方を見た。
「おい、待て、そいつはなんだ? おめえら五人パーティーだったよな」
「こいつは…… さっき仲間になったんだよ」
「おい、怪しいじゃねえか。そいつの着ている服は、あの村の物じゃないのか」
大男は、マントの間から見える、僕の服をジロジロ見ている。
僕は思わず、マントの前を閉じて服を隠した。
「そいつは、あの村の人間だな。おめえ、さっき人もすべて消えたと言ったよな。ウソをついたってことだ。いったい、何を隠しているんだ。白状しろよ」
「こいつは…… こいつは、あの村の唯一の生き残りだ。たまたま、安全な所にいて助かったんだよ」
「そんな事あるのか。安全な所ってどこだよ」
「それは…… 安全な所だよ」
大男は勝ち誇ったようにニヤついている。
「どうした。答えられないのか。おい、お前、答えろよ」
大男は僕の方に近づこうとする。
「やめろ!」
兄ちゃんが庇ってくれた。
「話しちゃダメ。大丈夫だから」
ミールさんが僕のすぐ横で、小声で囁いた。
「もう、おめえに聞いてねえよ。引っ込んでろ。そいつに聞いてんだよ」
「やめろと言ってる。こいつは、今ショックで喋れないんだ」
「それなら、俺様が喋らせてやるよ」
「近づくな!」
兄ちゃんは大男が近づいて来ようとするのを、止めようと手を前に出した。
「なんだよ、どけよ! それに、さっきから気になってたんだけどな、なぜフードで顔を隠してるんだ。疚しいことがあるんじゃないのか。顔を見せろよ」
ミールさんが、また小声で囁いた。
「ダメだからね、顔見せちゃ」
そして、どこからか声が掛かった。
「そいつ、悪魔なんじゃないのか。精霊災害で一人だけ生き残るって、絶対おかしいじゃないか!」
とんでもない事を言い出した!
僕が悪魔? 絶対にそんなことはないのに……
周りが、ざわつき始める。
「悪魔だって! 確かに、条件はそろっているよな」
「ヤバいんじゃないのか」
「あいつら、悪魔に操られているんじゃないのか」
ほかの人たちも、あれこれ言い出している。
「オイ! いいかげん、本当のことを言えよ!」
「そんなやつら、早く叩き出しちまえ!」
「悪魔だ! 誰か教会に知らせろ!」
どんどん騒がしく、おかしな雰囲気になってきている。




