第34話 冒険者たち(しばらく見ないうちに大きくなった)
だいぶ港に近づいているんじゃないかと思うけど、よく分からない。
見た事のない景色だからだ。
でも、かなり向こうに人が見えた。
何人かいる。
やった!!
走ってみた。
大丈夫そうだ。
全力で走った。
そして、叫んだ。
「オーイ!」
向こうも気づいたみたいで、一人こちらに走ってきた。
槍を持っている。そして、近づいてきた。
誰? 知らない大きな男の人。
でも、見覚えがあるような気もする。
「おまえ、クーか?」
「ベスケ兄ちゃん?」
「やっぱり、クーか」
兄ちゃんはニカッと笑った。
兄ちゃんはだいぶ前に、この村を出てった人だ。
小さい時はよく遊んでもらった。
昔より、すごく体が大きくなっているように見える。
身長はトウモロコシの背丈くらいあって、逆三角形の凄い体になっている。
キレキレマッチョだ。
「ベスケ兄ちゃん、しばらく見ないうちに大きくなったね」
「おう、そうだろ、今は百九十センチ近くあるしな。食って、鍛えまくったからな――
おい待て、そのセリフは普通年上が年下に言うもんじゃないのか?」
「そうだね、でも、間違ってはいないと思うよ」
「そうかー。クーはあんまり大きくなってねえな。だいぶ可愛くキレイになったけどな」
失礼な!
五年は経っているよね。
背は伸びているよ。
兄ちゃんがデカくなりすぎただけだ。
それから、だいぶ可愛くキレイになったって、なんだよ。
兄ちゃん以外の人たちも追いついてきた。
見た事のない四人だった。
自分より大きいリュックサックを担いだ女の人が、胸を揺らしながら凄い勢いでやってきた。
五人の中では一番ちっちゃいけど、僕よりは背が高い。
太ってないのに、おっぱいが大きい。メロンメロンだ。
その女の人は、近づいてきて、僕の顔を覗き込んだ。
「何この子、かわいいー。キレイな紫色の瞳。すごくない? あなた、女の子? それとも、男の子?」
「男です」
「何歳?」
「十二歳です」
「すっごーい!」
何がすごいんだろうか?
「この服もいいね。男の子にも女の子にも合いそう。すっごく似合っているね」
「おい、俺が話ししようとしてるのに割り込んでくるな!」
兄ちゃんが、その女の人を引きはがした。
「別にいいじゃない」
「よくない。大事な話をしようとしてるんだよ」
「分かったわよ、ケチ」
「ケチとはなんだ」
「話するんじゃなかったの?」
「するよ! でも確かに、眼の色が鮮やかになったような気がするな。パン屋の左目みたいだ。
じゃなくて、取りあえず紹介しておく。
俺の冒険者仲間だ。この賑やかなのがミールだ。で、右からアルコ、リプス、トバクだ。
で、こっちがアンクだ。俺はクーと言ってるけどな」
兄ちゃんはその人たちに僕を紹介した。
アルコと呼ばれた男の人は、少し色が黒くて、服も黒っぽい、長くて細い手足をしていた。クモみたいだ。
リプスと呼ばれた女の人は、背が高くて、すらっとしている。美人なんだろうけど、なんだか眠たそうで元気がない感じだ。キツネっぽいかな。
トバクと呼ばれた男の人は、僕を横目でチラッと見ただけで、あとは辺りを注意深く見ていた。イタチに似ている。
「それでだ、クー、何があった? 詳しく話してみろ」
僕は昨日あった事と、ここまで歩いてきた事を話した。
「なるほどな。どう思う、アルコ」
兄ちゃんはそう言うと、アルコさんの方を向いた。
「…そ、そうだな。恐らく大規模な精霊災害だろう」
「だよな…… 俺は確認したい事があるから、この辺で待っていてくれるか?」
「冗談だろ、それはマズいだろ。精霊災害は続けて起きる事があるというしな。
こんな土砂漠みたいな所、早いこと離れた方がいい」
トバクさんが不満そうに言った。
「…ま、まあ、待て。
ここはアルコの故郷だ、思うところがあるんだろう。
そうだな、日が沈むまでには川の向こうの町に戻りたい。
それまでに戻ってこい。
オレたちは舟がある所で待っている。
ただし、何か変化があれば、おまえが戻らなくても舟を出す。
だから、できるだけ早く戻ってこい。いいな」
アルコさんは表情を変えずに言った。
「当然だな。分かったよ」
兄ちゃんが答えた。
「…みんなも、これでいいか」
ミールさんとリプスさんは、うなずいている。
トバクさんはそっぽを向いていた。
「ベスケ、気をつけてね」
ミールさんだ。
「ああ、分かってる。クー、行くぞ。時間がない」
えっ、僕も行くの!?
「なに驚いてんだよ。おまえ以外にここの事、分かるヤツいないだろうが」
僕もここの事、分かんないんだけど……
兄ちゃんは僕の返事を待たずに走り出していた。
えー…… 仕方ないので、後を追っかけることにした。




