第32話 精霊災害(もう、ダメだ……)
少し坂があって、そこを上がる。
ここが田んぼと畑の境目になっている。
坂の上は水はけが良いので、畑が中心になっている。
そして、建物も増えてくる。
ここまで来ると、家に近づいて来ている感じがする。
風がだいぶ出てきたな。
冷たい風が少しだけ混ざっているような変な風だ。
しかも、風向きがバラバラだ。
それにしても、お腹がすいてきたな。少しだけ家に急ごう。
もう、ティルは家に来ているかな。肉を担いで……
肉と決めつけてしまっているけど、まあ肉だろう。
問題は種類だ。イノシシか、シカか、ウサギか。
そうだ、ニワトリが良いな。
ニワトリなら食べきれるし、照り焼きが良いんじゃないかな。
森にニワトリはいないけどね。
道を急ぐ。
風が絶対におかしい。
急に、強く冷たい風が増えてきた。
辺りの木や草がざわついている。
まだ、太陽が沈んでないのに、辺りが全体的に薄暗くなってきている。
そして何だか気持ち悪くなってきた。
これはヤバい感じがする。
不安になってきた。
怖い! 何だこれ!
風がどんどん強くなって、何だか引っ張られるようになってきた。
それなのに、辺りの音がどんどん消えていく。
辺りはますます暗く、少し歪んでいるように見える。
僕は目一杯走った。
家が見えてきた。お母さんが玄関に出てきている。
背筋をスッと伸ばし、遠くを見ているようだったけど、僕に気づいたみたいだ。
「お母さん!」
僕は叫んだ。
「クー!」
お母さんもこっちに走ってきた。
心配そうな顔から優しい顔になって、思い切り僕を抱きしめた。
その瞬間、空間が一気に歪んで真っ暗になった。
何も見えないし、何も聞こえない。
地面も無いみたいだ。
ただ、お母さんだけが感じられる。
それから、目の前や辺りが黒い霧のようなモノに包まれたように感じた。
そして、それは静かに消えていった。
もう、何も感じられない。
分からない。
意識が遠のく。
逆らえない。
ダメだ……
最後にお母さんの声が聞こえたような気がした。
「この子だけはどうか…… そして…… 」
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