第28話 進むべき道(頑張ってみようかな)
「お話、ありがとうございます。
何て言っていいのか、分からないのですが……」
ふふふ、とジョダ先生は笑った。
「話すのは少々早いかなとは思いましたけどね。アンク君ならば、しっかりと受け止めて、考えてくれるのではないかと思いまして、話させてもらいました。
少し難しかったですか?」
「いえ、内容は分かりました。でも、どうしたら良いのでしょうか? 僕は……」
話がいきなりで、そして大きすぎて、本当にどう答えて良いのか分からない。
「まずはアンク君が、どのように生きていきたいのか、どのようにこの世界と関わっていきたいのかを考えないといけませんね。
そして、そのためには何を学んでいくかを考えないといけないですね。
そのための手助けをするのが学校の役割です。
もちろん、私も全力でお手伝いします。
それから学べる場所は学校だけではありません。至る所にあります。
いろいろと探してみると良いですよ」
ジョダ先生は、もう、いつもの笑顔になっている。
「アンク君はまだ十二歳、だけど十二歳。
大人になるまで、進むべき道について本気で考えないといけないですね。
もちろん、大人になっても学びについては考えていかないといけませんがね」
いつもの笑顔だけど、真面目モードだ。
ジョダ先生と僕の二人だけだし、変なことを言わないように気をつけないといけない。
「ずっと、学ばないといけないってことですか?」
「そうですね。学びはアンク君の人生を豊かにして、幸せになる手助けをしてくれます。
そして、学びは周りの人の人生を豊かにして、幸せになる手助けになることにも繋げることができます。
だから、学んだ方が良いのです。
その学びが楽しみにつながればもっと良いですね」
確かに、楽しいことなら頑張れるよね。
「たくさん学びたい事があって、全部は時間的に無理なときは、どうやって優先順位を決めたら良いですか?」
全部の魔法を上手くなりたいと思っているし、学校の事とか、家の事とかもあるし、何を優先させるか迷うことがあるんだよね。
「学びたい事がたくさんあるのですか!
それはすっごく良いですね。楽しみですね。
確かに時間には限りがありますね。
ときには優先順位を付けないといけないこともあるでしょう。
そんなときは、将来、アンク君とアンク君の周りの人が幸せになれると思う事を優先させると良いですよ」
幸せにか……
さっきも言っていたよね。
幸せなんて、全然、気にしてなかった。
将来、幸せにと言われても、ピンとこないかな。
でも、考えないといけないってことだよね。
「それから、周りの人といってもたくさんの人がいますよね。
その人々から見たアンク君にも違いがあります。
アンク君のお母さんから見たアンク君、クリス君から見たアンク君、ティル君から見たアンク君、そして、私から見たアンク君、それぞれ違いがあります。
もちろん、共通している所もありますが、違いもあります。
それは、アンク君がそれぞれの人に対しての接し方に違いがあって、そのそれぞれ人も受け方に違いがあるからです。
周りの人を幸せにする事は、それぞれの人の立場になって考える必要があります。
そして、いろいろな角度から自分を見つめて考えていくことも大切なことですよ」
うーん、なんとなく分かるけど、面倒だな。
僕の周りにはたくさんの人がいるし、それぞれの人について考えるとなると大変だ。
「やっぱり、周りの人って、そこまで意識しないといけないですか?」
「そうですね。私はすっごく大切なことだと思っています。
アンク君が周りの人を幸せにすれば、その人はきっとアンク君のことを好きになってくれる。
そうすれば、アンク君が困っているときには、必ず助けてくれると思いますよ。
私はアンク君なら、ものすごくたくさんの人々を幸せにできるのではないかと期待しているのです」
期待って、ジョダ先生、みんなに言っているよね。
でも、本気で僕のことを思って言ってくれていることは分かるわけで……
「ありがとうございます。頑張ってみます」
こう言うしかないよね。
でも、本当に頑張ってみようかな……
ジョダ先生の大切な話を聞かせてもらったからね。
自信はないけど、できるようになれると良いな。
「それから、アンク君が笑いを学びたいというのであれば、私はきっとお役に立てると思います。ほかの事はともかく、笑いには少しだけ自信があります」
これはもう、お笑いモードのジョダ先生だな。
「少し考えさせてください」
お笑いはちょっと恥ずかしいかな。
前にひどい目にあった事もあるしね。
「興味があったら、いつでも声を掛けてくださいね。
それから、興味がなくてもいつでも声を掛けてくださいね。寂しいですから」
先生は悲しそうな顔をしている。
笑っちゃいそうになる。
「はい、分かりました。ジョダ先生、僕そろそろ帰りますね。ありがとうございました」
「そうですか。では、今日は気合を入れて、アンク君にこの先、とびっきりの素晴らしい笑いが、たくさんたくさんありますように」
別れのときの先生の決め台詞の一つだ。
そして、変な顔に、変な決めポーズをとっている。
思わず笑ってしまった。
それから、先生はニコっと笑って、クルクルと踊りながら、小走りに去って行ってしまった。
凄いな、あの走り方で――
用水路に落ちなきゃ良いけどね。
そろそろ、いい時間だな。
僕は家に帰ることにした。




