第22話 試行錯誤(どうにか、ならないだろうか)
「ところで爺ちゃん、何なのその袋?」
お母さんから預かった小袋について聞いてみた。
「あー、これは薬草の種じゃよ。
春になったら届けてくれと頼んであったんじゃ。
おまえさんの所の畑でなかなか上手く行かないから、いろいろと条件を変えて植えてみようと思ったんじゃ」
薬草の種だったのか。
「うまくいくといいね」
「そうじゃな。栽培条件は大事じゃからな。条件次第で大きく変わるんじゃ」
「そうだよね」
「おまえさんに任せた畑、全然上手く育ってないじゃろ。何故だか分かるか?」
家の畑の端の方に、僕が自由にしていい畑があるのだ。
「うーん、分かんない」
いろいろと考えてはいるんだけどね。
なかなか上手くいかない。
それに、変えたからといって、すぐに結果が出るわけじゃないし……
爺ちゃんに見てもらっている畑を、まるまるマネをするのも面白くない。
爺ちゃんも「こっちのマネをするのか」って煽って来るからね。
「野菜によって、それぞれ違いがあるんじゃ。
植える時期。
日当たりの良い所を好むか、日陰を好むか。
土の質や畝の幅や高さ。
植える間隔や植え方。
肥料の量や与え方。
ツルが伸びるなら支柱を立てる。
とか、それぞれ野菜によって考えてやらんといかんのじゃ
でも、この辺の事は教えたじゃろ」
エナ爺は話し出すと、止まらなくなる。
楽しそうに、派手なジェスチャーをしながら説明してくれる。
「知っているけど、全然上手く行かないんだよ。
それに、爺ちゃん、僕の畑については一つも助けてくれないじゃないか」
「そりゃそうじゃ。助けたら意味ないじゃろ。うっしっしー」
「何でだよ?」
ジジイめ、ちょっとムカつくな。
「自分で考えることが大事なんじゃよ。
知識は知っているだけじゃ、ダメなんじゃよ。
知識は使いこなさないと、意味がないんじゃ。
なかなか思い通りにいかないじゃろ。 うっしっしー」
ちっくしょ――
「やってみて、失敗したら、どこが悪かったか考える。
そして、次はどうするか考える。
そして、やってみる。
そしてまた、失敗したら考える。
上手く行っても考える。
もっと良くならないか考える。
これの繰り返しじゃ」
「すっごく時間掛かりそうだし、面倒そうだね」
「うっしっしー。それが良いんじゃよ。簡単に出来たら面白くないじゃろ」
「それは、爺ちゃんが、野菜作りが好きだからだろ」
「そうじゃ。大好きじゃ。クーは何が好きなんじゃ?」
「魔法」
「魔法か。魔法も失敗したら、どうして失敗したか考えないのか?」
「考える」
「次はどうしようか考えないのか?」
「考える」
「そして、それをやってみるんじゃろ」
「うん」
「それは、面倒なんじゃないのか?」
「面倒じゃない」
「なら、野菜作りは嫌いか?」
「嫌いじゃない」
「どうせ作るなら、美味い野菜作りたくないか?」
「作りたい」
「母ちゃんに美味い野菜食べさせたくないか?」
「食べさせたい」
「なら、頑張れるじゃろ」
なんだか、誘導されているみたいだ。
いつも、こんな感じだ。
「面倒かもしれんが、大体の事は経験で、慣れで、なんとかなるものじゃ。
なんとかならないときは、しっかり考えれば良い。
できることが多くなれば、楽しくなってくるものじゃ」
「うん、分かった…… でも、言い方が、なんかズルいと思う」
口では勝てる気がしない。
なんとも、大人げないジジイだ。
どうにか、ならないだろうか……
「うっしっしー。それは年の功じゃ。
それに。今まで、たくさん教えたじゃろ。あとは、それを使うだけじゃ。
まあ、たまにはヒントをあげても良いがな。
儂もいつまで教えられるか、分からんからな」
「なんでだよ」
「儂も年だし、ある日突然、ポックリ逝くかもしれないからな」
「爺ちゃん、何歳だよ?」
「九十九歳じゃ」
両手を腰に当てて、胸を反らしている。
元気すぎるだろ。
絶対に、くたばらないと思う。
「家庭菜園」について――
『小説家になろう版』:うんちく、説明が「少なめ」です。(第22話:約1500字)
『カクヨム版』 :うんちく、説明が「多め」です。(第22話:約2500字)




