↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/41

第21話 エナム(怖い顔の愉快な爺ちゃん)

 

 北の工業地域の中を歩いて行く。


 薬屋のクリスの家に続く道の分岐を通り過ぎた。

 クリスの家は、ここから、もう少し山の方というか、森の方だ。

 今日はクリスの家には行かない。

 行ってもクリスがいるか分からないし、寄っていたら帰るのが遅くなりそうだからだ。


 先週はクリスの誕生日で、クリスにはボードゲームをあげた。

 駒もボードも手作りだ。

 木材店のウッドさんに教えてもらって作った。

 こっそりと手伝ってもらった所もある。

 それなりの出来だ。

 駒はもっと立体的で凝った物にしたかったけど無理だった。

 なかなか思い通りにはならない。


 クリスからはお返しで手作りのシカ革のカバンを貰った。

 今、僕が肩から掛けている物だ。


 クリスが母親のリュカと狩りに行ってシカを仕留めて、その革からカバンを作ったのだ。

 とてもシンプルで柔らかくて使いやすい。

 すごく気に入っている。


 ただ、プレゼントでも差を付けられた感じがする。

 来年は頑張ろうと思っている。


 ** *


 僕は北の工業地域から出て、平地と山の間の道を歩いて行く。


 平地の方は米を作っている所が多いけど、小麦や野菜を作っている所もある。

 山の方は階段状の畑になっていて、野菜や小麦を作っていた。


 手頃なサイズの石が落ちている。

 これを魔法で前に飛ばしていく。石蹴(け)りみたいな感じだ。

 学校帰りにも、よくやっている遊びだ。


 大きな石を飛ばしたり、遠くの石を飛ばしたり、思いっ切り遠くに飛ばしたり、飛んでいる途中の石を違う方向に飛ばしたり、といろんな飛ばし方をしている。

 歩きながらの、暇つぶしに持ってこいだ。

 石を飛ばしながら歩いて行く。


 エナ爺(じい)の家の近くまで来たので、石を道の脇に飛ばした。


 エナ爺、家にいるかな?

 畑や田んぼに、よく出かけるのだ。

 しかも、行動範囲が広い。

 そして、ほかの家の畑作や稲作の指導もしている。

 うちも、その中の一つだ。


 居た!

 遠くの畑に、細くて黒い人が立っている。


「爺ちゃーん」


 大声で呼んでみた。

 気づいたみたいで、元気よく手を振ってくれた。

 急いでエナ爺の所に走っていった。


「こんにちは」


 エナ爺は短くて白い髪の毛が生えていて、顔は真っ黒で、黄色い眼をしていて迫力がある。

 こんな怖い顔のお爺ちゃんはなかなかいないだろう。

 見た目が怖くて、怒りっぽいから、苦手な人もいるみたいだ。

 でも、僕は平気だ。慣れている。

 それに、いろんなことを知っているので、話しているとすごく楽しいのだ。


「クーか、どうした?」

「お母さんからのお届け物だよ」


 小袋と手紙を渡した。

 エナ爺は右手で受け取って、両手で手紙を開いて見ている。


 エナ爺の左手は義手だ。手首から先がない。

 昔、盗賊と戦ったときに失くしてしまったらしい。

 その盗賊は返り討ちにしたと言っている。

 ウソか本当か分からない。

 話をするたびに微妙に内容が変わるからだ。

 そこにツッコミを入れると「アドリブじゃ、いつも同じ話ばかりしていると、ボケ老人だと思われるじゃろ」と言う。

 アドリブを入れても入れなくても大きな違いはないと思うけどね。

 まあ、とにかく、すごい戦いだったらしい。


 それから、義手はゴルドが作った物で、魔法で動かすことができる。

 ゴルドは歯車とかバネとか、いろんな部品を組み合わせて機械を作るのが得意だ。

 義手のほかには、水車の機械部分とか、時計とかも作っている。


 エナ爺は「こんなもん、なくても問題ないわい」と言いながら、義手を気に入っているみたいだ。

 エナ爺なら土魔法で手を作ることができるからだ。

 でも、魔法で手を作り続けるのはかなり疲れるから、義手を使っているんだと思う。

 エナ爺は絶対に疲れたなんて言わないけどね。


「そうだ、誕生日おめでとう。クー」

「ありがとう。何で、知っているの?」

「昨日、ウリ坊に会ってな、教えてくれたんじゃ」


 ウリ坊って、イノシシの子供のことだよな……

 あー、ティルのことか。


「クーに何をプレゼントしたら喜ぶか聞かれてな。

 肉と答えたら、嬉しそうに走っていったわ。うっしっしー」


 愉快そうに笑っている。ジジイめ――


「何てことするんだよ。去年のこと、知っているだろ」

「そりゃあ、面白いからに決まっておるじゃろ。うっしっしー」


 ちっくしょ――

 これは…… 肉確定なのか?

 毎年のお決まりになったら困るんだけど……


 エナ爺も、いつもからかってくるのだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。