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第17話 誕生日プレゼント(空気魔法を教えて)


「そうそう、誕生日だったね。まあ、ティルが準備するだろうけど、何かあげようかね。

 この眼鏡なんてどうだい?」

「いらないよ!」

「わっはっはっ、そうかい。

 ところで、来週はティルの誕生日だけど、何か考えているのかい」

「一応……」


 本当はまだ考えていない。

 というか長い付き合いだけど、何をあげたら喜ぶのかが分からない。

 肉? 誕生日プレゼントではないような気がする。

 それじゃ、ティルと同レベルだ。


「去年あげた髪飾りはどうなっているの? 一回もしているところ見たことないけど」

「なに言ってんだい、毎日付けているだろ」

「え、なに?」

「ほら、首から下げてる小さな巾着袋の中に入ってるよ。

 頭に付けてると失くしちゃうかもしれないっていうんで、巾着袋作ってやったんだけどね。

 よっぽど嬉しかったんだろうね。毎日、喜んで付けて行っているよ。可愛いだろ」


 親バカめ。あのお守りと言っていたやつか。そんな事になっていたのか。


「それ、付けているとは言わないだろ」

「わっはっはっ、でも本人、凄く喜んでるし、いいんでないかい」


 それはそうかもしれないけど……


「何かくれるっていうなら、空気魔法を教えてくれない? 得意でしょ」

「なんだい、鍛冶師になりたくなったのかい?」

「違うよ!」

「わっはっはっ、取りあえず見せてみな」


 僕は朝、畑でやっていたように、近くの枯れ葉を魔法で動かした。


「練習し始めてどれくらいだい」

「一カ月くらい前かな」

「一カ月なら上出来だと思うけどね」

「でも、前から少しはできたんだよ。

 だけど、空気魔法って、あまり役に立ちそうにないし、練習しなかったんだ」

「なら、なんで空気魔法の練習を始めたんだい?」

「それは……」

「はっきり言いな」

「クリスに差を付けられるのが、嫌だったから……」


 それと、トイレの後に洗ったお尻を乾かしたいから、とは言えない。

 しかも、今はお尻拭き用のタオルも置いてないんだよ、とも言えない。

 恥ずかしい……


「わっはっはっ、子供だね」

「子供だよ。悪かったな」

「すねない、すねない、十二歳だったね。

 さてと、空気魔法が役に立たないって、バカ言っちゃいけない。見てな――」


 シルバは左の手のひらの少し上に赤い炎を作った。

 そして、その炎がゴォーという音と共に青色に変化していった。


「何をしたか、分かるかい?」

「分かんない?」

「赤い炎に、空気をたくさん送り込んだんだ。

 そうすると温度が上がって色が変わるんだよ。

 あたしは鍛冶師だからね、炎の温度が変えられると都合が良いんだよ。

 まあ、ほとんどは水車の動力で空気を送り込んで温度を調節するんだけどね。

 微調整するのに空気魔法が使えた方がなにかと便利なんだよ」


 凄い、そんな使い方があったのか。


「ほかに、パン屋のオーシ、知ってるだろ。

 うちの旦那から聞いた話なんだけどね。

 槍の稽古で、懐に入ろうとした相手を、風魔法で吹き飛ばしたり、浮き上がらせたりしたそうだよ。

 一瞬でも浮き上がらせられたら、どうすることもできないね。

 オーシの攻撃を受けるだけだよ。

 そんなことできるのはオーシくらいだけだろうけどね。

 それから、自分がジャンプする時にも使うらしいよ」


 風魔法は空気魔法の一つだ。

 畑の枯れ葉を集める空気魔法も風魔法と言っていい魔法だ。


 それから、パン屋のオーシさんは秋祭りの槍の大会を十連覇した凄い人だ。

 十連覇して、今では大会に出なくてもいいことになっている。

 本当にとんでもない強さだ。


 オーシさんは、体がすっごく大きくて、モリモリのマッチョだ。

 左右の目の色が違って、右は灰色っぽい青色で、左は鮮やかな青色だ。

 なんでも、昔、左目を大ケガして、手術をしてもらってから目の色が変わってしまったらしい。

 そのときから、左目で魔法が見えるようになったみたいで、どう見えるかの説明は難しいと言っていた。


 オーシさんはドムル川の向こうから来た人で、ドムル川の向こうではかなりの武人だったのではないかと噂されていた。

 それで、自衛団に稽古を付けに行っている。

 そして、子供たちにも槍を教えていた。

 強いのに自衛団に入らずにパン屋をやっているのが謎だ。


 それから、シルバの旦那さんはジェイおじさんで、自衛団だ。

 小さいけど強くて、槍でシルバに勝てるのだ。


 シルバは若い頃は結婚する気がなかったみたいだ。

 そんな時に突然、ジェイさんに結婚を申し込まれて、断ったけど、しつこいのでシルバは槍で勝てたら結婚してもいいと言ってしまったらしい。

 そこから、ジェイさんに何度も何度も挑み続けられ、とうとう結婚することになってしまったらしい。

 ものすごく熱い戦いだったみたいで、けっこう有名な話だ。



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