第16話 槍の大会(幼馴染の二人はライバル)
「どうだい、持ってみるかい?」
「いや、いいよ、槍は得意じゃないし」
「才能はあると思うけどね。あんたの母親はものすごく強いからね」
そう、お母さんはシルバやリュカと、ときどき槍の稽古をしている。
そして、シルバと互角にやり合っているのだ。
お母さんより、シルバは十歳くらい年上で、リュカは少し下で、三人はものすごく仲が良かった。
リュカはクリスのお母さんで狩人だ。
リュカは狩人だけど、狩りよりも薬草採集がメインになっている。
旦那さんが薬師だからだ。
近くの森の管理人でもあり、弓の名手で槍も上手い。
リュカの弓は、大会で何度も優勝しているくらいに凄いのだ。
シルバも槍の大会に出たことがある強者だ。優勝経験はないけどかなり強い。
秋祭りは槍の大会、春祭りは弓の大会があって、ものすごく盛り上がる。
大人は一年掛けて予選をして、八人だけが祭りの大会に出場することができる。
大会に出るだけで、たいへん名誉のある事なのだ。
お母さんは槍にエントリーしたことがない。医者だからケガしないようにと言っていた。強いから出ればいいのに。
だから、弓にエントリーしている。
弓も上手いけど祭りの大会には出たことはなかった。
「槍はいいんだよ」
槍より魔法の方が面白い。
それに、槍なんて将来、役に立たないだろうし。
「仲良し三人組で、あんただけ大会に出てないじゃないか」
初等学校の生徒の大会はないけど、高等学校からはあって、年齢別に三つのクラスに分かれている。
大人と同じで秋祭りは槍、春祭りは弓の大会がある。
高等学校の生徒は二つともエントリーしないといけなくて、予選を突破した四人が大会に出ることができた。
槍の小学年のクラスでは二年連続でクリスが優勝した。
ティルは去年、槍で準優勝した。
ちなみに、弓もクリスが二年連続で優勝していた。
「仲良しじゃないよ。ティルとクリスはすぐに言い合いになるし、止めるのが大変なんだよ」
そう、二人は仲が良くない。ちょっとしたことですぐに口喧嘩になる。
ティルは思いつきで行動する。そして、大雑把で怒りっぽい。
クリスは理詰めで行動する。そして、細かくて融通がきかない。
性格は正反対だ。
でも、前は今ほどでなかったように思う。
二人とも、僕と二人のときはいい感じだけどな……
ティルとは、たまにやり合うことがあるけど、ちょろいからすぐに仲直りできる。
「わっはっはっ、好きな人の取り合いをしているだけじゃないか。モテモテで大変だね」
「そんなんじゃないし。それに、槍が上手くなくても別に困らないし」
「それなら、例えばティルがケガをして、診療所に運ばれて、暴れだしたらどうするんだい。
あんたの母親なら、力ずくで抑え込むだろうけどね」
ぐぐっ、それは最悪だ! どうにもできない。
しかも、本当にありそうだし……
「でも、それは槍でなくて、肉体強化魔法じゃないか」
「学校で肉体強化なら、槍の稽古で覚えるのが手っ取り早いじゃないかい?」
そのとおりだ。
悔しいけど、言い返せない。
ほかにも方法はあるけど、学校なら槍の稽古だと思う。
「そうだけど、今はいいんだよ」
「そんなこと言ってると、どんどんあの二人に差を付けられるよ。あんたがそれでいいなら仕方ないね。
まあでも、今年の秋の大会はどっちが勝つのかね。楽しみだね」
そう、まだ春なのに、すでに秋の大会の話が出ていて盛り上がっているのだ。
大人でなく、高等学校のクラスの話なのに。
ティルは二年続けて大会でクリスに同じ負け方をした。
ティルには駆け引きがない。
技も中段からの受け流しながらの突きだけだ。
受け流しは、相手の槍に自分の槍を絡めるように、ずらす技だ。
この技がないと、ティルはリーチが短いので、ただ突いただけでは相手の槍の方が先に当たってしまうのだ。
去年も一昨年も、中段の構えから、凄いスピードで真っ直ぐ踏み込んでいって槍を突き、それをクリスが槍で払いながらいなして、素早く一撃を加え勝利していた。
クリスが言うには、来る技が分かっていれば、かわすのは難しくないとのことだ。
よほど悔しかったのか、ティルは猛練習を始めた。
技は増やさず、徹底的にスピードとパワーを追い求めたのだ。
まわりはみんな笑った。
技術で負けているのに何をやっているのかと……
僕もそうだった。やっぱティルはバカだと……
ところが、その内、ティルは生徒との稽古が禁止になった。危険だからだ。
スピードとパワーが凄まじいのだ。
今は大人としか稽古をしていない。
本気でバカは凄いと思った。
先生も褒めていた。一つの技を極めるとこんなにも強いんだと。
それに対して、クリスも負けていない。
練習試合で昨年の一つ上のクラスの優勝者を技術で圧倒してしまったのだ。
僕たちは今年から一つ上のクラスに上がるけど、近年まれにみる好試合になると注目を集めているのだ。




