第14話 もう一人の幼馴染(何でだよ……)
「そうそう、クー、十二歳おめでとう。昨日、ティルが騒いでいたからね。
ますますキレイになって、ナナに似てきたんじゃないかい」
目の色は違うけど、顏はお母さんによく似ていると、しょっちゅう言われる。
目の色は僕が紫で、お母さんが青だ。
お母さんに似ていると言われるのはそんなに嫌じゃないけど、キレイとか可愛いはなんか嫌だ。
シルバは分かっていて言っている。すぐに僕をからかうのだ。
「ティルは?」
「そういえば朝から見ないね」
ゲッ! まさかと言うより、やっぱりか……
「去年みたいな事はないよね?」
「大丈夫だろ。バルに見張りを頼んだから」
バルはあだ名で、本当はバルカンだ。
ティルの五歳年上の兄ちゃんで、僕はバ兄と呼んでいる。
バ兄は目と耳が大きくて、体は小さい。
体が小さいのは家系かもしれない。
おじさんも小さい。シルバより体も顔も小さい。
バ兄はティルと違って、すごく穏やかだ。
そして、好奇心が強くていろんな事をよく知っている。
だから、小さいときから、いろいろと教えてもらっている。
「バ兄が…… 大丈夫かな……」
引きずりまわされているような気がする……
でも、慣れているよな。
「大丈夫、大丈夫、バルは頭が良いけど貧弱、ティルは単純だけど頑丈、だから二人でいれば丁度いいんだよ」
なんか、言い方がひどい。
「でも、去年は傑作だったね。叱っていいのか、褒めていいのか分からなかったよ」
と、楽しそうにニヤニヤしている。
――そう、去年の僕の誕生日の事だ。
ティルが血だらけになって、自分より遥かにデカいイノシシを担いでというか、引きずって家に持ってきたのだ。
そして「食べて」と言って、元気よく帰って行ったんだけど……
「叱れよ! 学校サボってんだし、それに危ないじゃないか」
さほど危険な動物のいない森だけど、子供が一人で森に行くのはダメだろ。
「あら、心配してくれるのかい。優しいじゃないか。
そりゃ、血だらけになって帰ってきたときは驚いたけど、結局ぜんぶイノシシの血で無傷だったし。
実際、余裕だったみたいだしね。
槍で耳の後ろに一撃、そして心臓を一刺しだろ、見事なものじゃないか。
どこで習ったんだろうね。あの子の場合は本能かもしれないけどね」
この話は何度もしているけど、ずいぶん楽しそうだ。
「休んだ分の勉強教えるの、僕なんだからね」
共通の授業ならいいけど、僕の取っていない授業まで教えるハメになっている。
教えないと勉強しないし……
「それぐらい、いいじゃないか。肉、美味かっただろ」
「美味しかったけど、大変だったよ。
二人じゃ食べきれないし、肉屋さんに持っていって、捌いてもらって、食べられる分だけ持って帰って。
あとの部分はハムとかソーセージにしてもらって。
それでも食べきれないから、いろいろと配って歩いたんだからね。
そもそも、なんでイノシシなんだよ!」
「あの子、肉、好きだからね。
好きな人のために、何か良い物をプレゼントして、驚かせたかったんだろうね。
可愛いじゃないか」
そりゃあ、驚いたよ。
ニヤついている。親バカめ。
そういえば、肉屋さんも喜んでいたな。
最初は夕方に大きなイノシシ持ち込まれて困っていたけど、十一歳の子が仕留めたと聞いたとたんに嬉しそうに捌いてくれたな。
それから、ティルが村で更に注目されるようになったような気がする。
「好きな人のためとか、ティルには言うなよな」
「そんなこと、言うに決まっているじゃないか」
あー、最悪だー。ティルに少しだけ同情してしまう。
「真っ赤になって、怒ってるんだか、照れてるんだか、えらく可愛いんだよ」
「そんなこと言っていると、嫌われるよ」
「大丈夫、大丈夫。美味いもん食わせれば、すぐに忘れるから。わっはっはっ」
豪快に笑っている。ティルそれでいいのか……




