第13話 シルバ(いつも陽気でパワフルだ)
北の工業地域に入った。
ここは少し山の方にある。
シルバの工房は大きい。鉄を作る製鉄所と鉄製品を作る加工場もある。
シルバはここの親方でお弟子さんもたくさんいた。
すぐ近くには、シルバの双子の姉妹のゴルドさんの工房もある。ゴルドさんも鍛冶師だ。
二人とも背は高くない。
シルバは太っているけどデブというよりガッチリ体型で豪快な性格だ。
ゴルドさんはガリガリ体型で細かい性格だ。
どちらが姉か妹かは分からないけれど、二人でいるときは、いつも口喧嘩している。
そして、内容は専門的すぎてよく分からないけど、そのやり取りは面白い。
でも、いつも二人でいろんな新しい道具を作り出しているすごい人たちだ。
魔法で使う道具なんかも作っている。
** *
シルバの工房が見えてきた。
前の広場に槍を振るっている人がいる。シルバだ。
「こんにちは、シルバ」
「なんだい、クーじゃないか。どうしたんだい」
シルバは、どんぐり目で、団子鼻で、唇が厚くて、顔のパーツはみんな丸くてユニークだ。
ついでに、髪まで櫛が刺さった団子になっている。
何でこの人から、あんなに可愛い子が生まれたんだろう。謎だ。
ティルも大人になったらこんな感じになるのかな。
でも、きっとおじさんに似たんだな。
ティルは見た目だけはかわいい。それだけは認める。
それから、シルバはいつも陽気でパワフルだ。
本当なら、シルバさんかシルバおばさんと言わないといけないのだろうけど、本人がシルバと言えといっているので、そうなっている。
「これ、お母さんから」
小さな長細い箱と手紙を渡した。
シルバが手紙を読んで、箱の中身を確認して、少し困った顔をしている。
「やっぱりダメだったか……」
「なんなのそれ?」
「これは眼鏡だよ。思い付きで作ったんだけどね。ガラスに火の魔鋼を混ぜたんだよ。
これを使えば、熱感知魔法が使いやすくならないかと思ってね。
私もゴルドもガラスは専門でないから、ガラス職人の所でレンズを作ってもらったんだけどね。
見込みはゼロではなさそうだけど、まだまだみたいだね」
魔鋼は魔鉱石に含まれる金属で、魔鋼の含まれている道具は魔法が使いやすくなる。
それから、魔鋼にはいろいろな種類がある。
火の魔鋼なら火魔法が使いやすくなる。水の魔鋼なら水魔法が使いやすくなるといったところだ。
普通はガラスでなく鉄とかほかの金属に魔鋼を混ぜて道具を作っている。
「クー、掛けてみるかい?」
「うん」
面白そうだ。
熱感知魔法には興味がある。
眼鏡を受け取り掛けてみる。
そして、前を見た瞬間、目の前が大きく歪んだ。ものすごく気持ち悪くなり、思わず膝をついて、吐いてしまった。
傑作のエッグベネなんとかたちが……
何てことするんだ。全然面白くない。
「何だ、これは?」
「あんたもダメだったか…… やっぱり相性があるみたいだね」
「これ掛けて効果があった人いるの?」
「今のところいないね」
全然ダメじゃん!
「ナナに言ったら、興味あると言うから貸したんだけどね。
いくら試しても、上手くいかなくて気持ち悪くなった、と書いてあるね。
でもまあ、目が反応しているわけだからね。
やり方しだいで、上手くいくかもしれないね」
ナナはお母さんの名前だ。
「魔鋼って、ガラスに混ぜて良いものなの?」
「ガラス職人が言っていたけど、混ぜるというか、混ざっている事があるそうだよ。
そして、実際に感知魔法が使いやすくなる物もあるらしいよ。
ただし、相性があって、その人に合った物を狙って作るのは難しいと言っていたね」
「へーそうなんだ。でも、ガラス職人さんが難しいって言うなら、鍛冶師じゃ無理じゃないの?」
「わっはっはっ、そうだね。ただ、やってみたかったんだよ」
思い付きか。
シルバにはよくあることだ。
それで、凄い物を作り出すこともある。
今回はハズレっぽいな。分からないけど。
「そもそも、何でそんな眼鏡作ろうと思ったの?」
「あたしは熱感知魔法が使えるけど、使えない人もいるからね。使えるようになればいいなと思っただけだよ」
「そうなんだ」
僕はなんとか立ち上がり、元朝ごはんだった物を土魔法で埋めて、水魔法でうがいをした。
そして、眼鏡を返した。
でも、まだなんだか気持ちが悪い。




