コウの実力
かぐやたちが牢で眠りについたころ――『白濁ノ塔』裏口。
暗闇に紛れ、影のように潜入する人影があった。コウだ。
(......作戦通り行くなら、2階層での合流か。先輩もいるから余裕で降りて来れると思うけど、ヨルゲンと戦うことを考えると先輩の武器くらいは取り戻しておきたいな。『月脈解放』も慣れた武器のほうが威力が上がるし)
『白濁ノ塔』一階層には、看守が常駐している場所が三か所ある。看守長室、看守室、管理室だ。そのうち管理室には、囚人から没収した装備などの所持品が保管されている。
「よしっ!とりあえず管理室行きますか」
管理室にいるであろう看守は十人前後のはず。そのくらいならすぐに制圧できる。
(姫様は置いといて先輩に褒められたいし、気張りますか…)
「もしもしー管理室の人。ちょっと脱獄しに来たからあけてー!」
コウがヘラヘラと声をかけるも、管理室からの返答はない。
「まあ、こんな安い挑発には乗らないよね。しゃーない、強硬手段で行くか。『じゃあ、壁壊すね~』」
そう一言呟いた刹那、雷鳴のような一撃で壁が格子状に切り刻まれ、崩れ落ちた。
動揺する看守たちの隙をコウは見逃さない。視界が煙に包まれる一瞬の間に、全員の首筋を打ち抜いて無力化していた。
「皆遅いね~。それにしても壁が斬られて驚くこいつらの顔は傑作だわ。超楽しい。......えーとそれで目的の先輩の刀は......あったあったこれだ」
コウがそう手に取った刀の透き通った蒼は見るものを引き込むような、美しくも冷徹な輝きを放っていた。
「相変わらず綺麗な刀だな。まあ、俺の双剣も負けちゃいないけど」
さてじゃああのおてんば姫を迎えに行こうかな。絶対無茶なことして先輩を困らせてるだろうし。
コウはフッと息を吐き、吹き抜けを飛び越え二階層の階段前に移動する。
上層の階段から凍てつくような冷気が流れ込んできた。
「うわ、さむっ。先輩手加減しなさすぎでしょ。まあこの調子ならすぐに来るか」
『ええそうね!じゃあ下層へレッツゴー!!』
遠くから響く無駄に元気な声に、コウは呆れたように頭を抱えた。
……うちの姫様は、相変わらずおてんばなようだ。うちの姫様は変わらずおてんばなようだ。
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「やっほー姫様迎えに来たよ。先輩も久しぶり。武器取り返しといたからね~」
「えええええ、コウ!?ほんとに来てたんだ!!」
「かぐや様、そうゆう作戦でしたでしょう?......コウ、武器をありがとう。助かったわ」
「今のところは作戦通りに言ってるね、先輩」
(やっぱり二人にはここで合流する作戦があったようね。なら、まだ隠している情報がありそう…...。とりあえず脱出したらコウをしばいて......じゃなくて優しーーく問い詰めることにしようかしら)
かぐやは腕を組んでジト目を向ける。
「なら問題はどうやってヨルゲンを突破するかだね、先輩」
「ふふっ、二人なら負けないでしょう?」
「先輩やめて!?俺が昔言った恥ずかしいセリフを言うの!」
「なんかコウ、私としゃべってる時とちがーう。デレデレしてる感じだ。ふーんなるほどね?」
「姫様、いいから行くよ!ほら、大声で喋ってたからいっぱい集まってきたじゃん!」
廊下の奥から、騒ぎを聞きつけた看守たちがゾロゾロと押し寄せてくる
「丁度いいわね!コウ、あんたの「月脈解放』が見てみたいわ!」
「やだ、疲れる」
コウは短く返答しセリーヌに目を向けたが、「早くやりなさい」と言わんばかりの無言の圧力を向けられていることに気づいた。
「ま、まあ......しょうがないな。でも、一瞬だよ?」
「かかれえええええ!」
看守たちが一斉にだが――
『――『月脈解放』、瞬閃』
静かな呟きと共に、カチャリと双剣が納められる音だけが響いた。
次の瞬間、襲いかかっていた看守たちが何が起きたかも理解できないまま、一斉に血飛沫を上げ、倒れ込んだ。
「......すごい。何にも見えなかったわ」
事実コウの『月脈解放』の最高速度は、音速を優に超えていた。
「かぐや様、コウ、あとはヨルゲンを倒すだけです。ほかの看守たちは相手にならない程度ですので」
(うちのセリーヌ超かっこいい!コウもやっぱりじいちゃんが精鋭っていうだけあって強いのね。これなら楽勝じゃない?
あとはさっさとムカつく看守長をぼこぼこにして、脱出するだけね!)
「出口に行けば、そいつは居るのよね?じゃあ、さっさと行きましょう!」
自信満々に先頭を走っていくかぐやの背中を見送りながら、コウとセリーヌはため息を漏らした。
「…コウ、姫様のマイペースをおさえるのは大変ね」
「二人で頑張って手綱を引くしかないですよね、これ。はあー、大変だ」
苦笑いする二人だったが、その視線は鋭く最下層の扉へと向けられていた。
そこに待ち受ける『不死』ヨルゲンとの決戦に向けて――
ちなみに『月脈解放』は、一度発動させたらそこからは解放状態のまま戦えます。




