牢の中の出会い
ここは『白濁ノ塔』。犯罪者の中でも特に重大な犯罪を犯した者が収容される監獄だ。事実この監獄ではいまだ一人の脱獄を許していない。この監獄が不落と謡われる所以は看守全員が騎士として訓練を受け、ゆくゆくは王の親衛団となるものが多く所属するいわゆるエリートコースだからだ。一人一人の戦闘能力が異様に高く、鉄壁の陣形を敷いているのである。
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(なんでこんなことになったのよ…)
そうため息をつきながら、かぐやは大人しく手錠をかけられていた。看守たちによる身体検査を終え、看守長に連れられ真っ白な廊下を歩き、牢屋へと向かっていた。
「私は看守長のヨルゲンと申します。かぐや様、あなたが今から入られます牢は二人部屋となっております。牢に入ったその瞬間から貴方様であっても囚人として扱いますのでご覚悟しておいてください」
「嫌よ!私はさっさと脱獄してやるわ!」
「ハハハ!できるものならぜひお願いいたします。楽しみに待っておりますので」
そう話しながら連れていかれた牢は案外きれいなものだった。しかし白一色で埋め尽くされ、感情を徹底的に排除したような見た目に、かぐやは少し不気味さを覚えた。
「かぐや様、ここにお入りください。では三日後にまたお会いしましょう」
「はあーあ。これからどうしましょう」
「かぐや様…?かぐや様ですよね!?」
そう誰かに話しかけられ振り向くと、そこにいたのは目を奪われるほど美しい女性だった。月光そのもののような透き通ったロングヘア。過酷な牢獄生活にありながら、その佇まいには凛とした気品が漂っている。服越しでありながらもわかるそのしなやかな体は、鍛え上げられた騎士であることを物語っていた。
「?ええ、そうよ!あなたは?」
「失礼しました。私はセリーヌ、本来ならば地球へあなたを迎えに行くはずだった騎士です」
「そう。ならあなたなんでこんなとこにいるのよ」
「迎えに行く前、一度下見をしたのですがその時に姫様を見てこの方は月に来ても幸せになれないだろうと思いました。ですので皇帝に連れ戻すのをやめてほしいと直談判したのです」
「…!そう、ありがとね。私のために。」
「ふふっ、気にしないでください。私がそうしたかっただけですから」
少し伏目になりながら微笑んだセリーヌの横顔は、かぐやの目にはまるで聖女のように見えた。
「うーんところでセリーヌ。どうやって脱獄したらいいかしら」
「私は騎士ですのでなにか武器があれば壁を壊すくらいはできると思います。でもそのあと外まで行くのは私の戦闘力では困難ですね......」
「うーん。コウ、助けに来てくれるかな?」
「かぐや様はコウに連れられて月に来たんですか!?なら話は早いです。
彼ならもう姫様が脱獄できるよう裏で準備を進めていると思います」
「あら、知り合いだったのね」
「はい、私が騎士団では先輩でした。おそらく彼なら次の日の早朝、看守の交代で警備が薄くなるタイミングで仕掛けてくると思います。どうにかしてそれまでに部屋から脱出しておきたいですね。なにか武器など持っていませんか?」
「ないわね!あったとしても身体検査で没収されてるわよ」
「ですよね…」
「…あ!ばあちゃんにもらった袋!とられてない!なんで!?」
「見せてもらってもよろしいでしょうか?」
「うん。いいわよ」
そういってかぐやは袋を手渡すと、セリーヌは驚いて目を見開いた。
「これすごいですね!姫様が敵対している人間には認知できないよう精神干渉が施されていますし、袋の容積以上のものが入る拡張空間が作られています!さすがは月脈器作りの天才、メウリア様です!!」
「その、げつみゃくき?って何?」
「月脈器というのはですね、月に流れている力、『月脈』を利用して作った道具です!地球でも月脈という力は長い時間をかけて蓄積されているので問題なく作れたのでしょう」
「なるほどね…ばあちゃんすごかったんだ。まあとりあえず中に何があるか見てみましょう」
袋を開けるとそこにはお饅頭がたくさん入っていた。
「そういえば饅頭あるんだった!たーべよっと」
「少し中を見させてもらいますね。......あ、ありました。ひ、姫様ありましたよ!脱獄できる道具!短剣が入っています!」
「それがあれば出れる?」
なぜか他人事のようにかぐやは饅頭を頬張りながら聞く。
「はい、ではおそらくコウが来るであろう明日の早朝――作戦開始です!」
ばあちゃんの名前、初登場です。ちなみにじいちゃんはゴートって名前だったりします




