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竹取物語”裏”  作者: やすひこ
第1章 脱走編
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王との謁見

今日の夜は牛丼の予定です


「流石に大きいわね」


 城の目の前に立ち、かぐやはつぶやく。


 頭上に聳え立つ白銀の城壁は、見上げる首が痛くなるほどの圧迫感を放っていた。門を固める近衛兵たちが槍を構えてズラリと並んでいるが、かぐやは恐怖を感じるどころか「へえ、月のお城って無駄に豪華なのね」と物珍しそうに眺めている。


「姫様、ここからは品行方正で清楚なお嬢様に見えるように演技してね」


 コウが立ち止まり、念を押すように静かに言う。


「何よ、まるでいつもの私が変みたいに言って」


「いや、そう言ってる。僕も気を引き締めないといけないし」


 そう言うコウの瞳は真剣だった。


「はあ~わかったわよ。あんたがそんなこと言うからなんかちょっと調子狂うじゃない」


「よし、じゃあとりあえず今から王に謁見するわけだけど、相手は一国の王だからね?くれぐれも失礼なこと言わないでね。本当に首が飛ぶから」


「大丈夫よ!猫かぶって乗り切ってやるわ!」


 自信満々に胸を張ってみせるかぐやだったが、猫をかぶる気など端からないのは目に見えている。


 コウはハァと大げさにため息をつくと、呆れたように目を細めた。


「それ、月では『ウサギを被る』っていうんだよ~」


「あんた早速気が緩んでるじゃない!」


「アハハ。まあ緊張しないところは姫様のいいところだね」


「なによ!ほめてないじゃない!」


「はいはい、いくよ~」


 コウの心配をよそに、かぐやは「さっさと終わらせて美味しいものでも食べに行きましょう」と言いたげな足取りで、堂々と城の門をくぐっていった。


 ~~~~


 廊下をしばらく歩いていると謁見の間に続く大きな扉があった。


 扉の前でコウは立ち止まり、コンコン、と小さく二度ノックした。


「月翼騎士、コウです。かぐや姫様をお連れしました」


「入室を許可する」


 扉が開いた瞬間、かぐやの肌を刺したのは冷気ではなく、肌が痺れるような強烈な圧迫感だった。


「余は第11代皇帝オルグである。コウよ、よくかぐやを連れ帰って来てくれた」


「は、ありがたいお言葉」


「そちらがかぐやだな。そなたは余の娘。それはつまり次期皇帝を意味する。

 明日から皇帝について学び、1年後に即位させる。これは命令だ」


(...頼む姫様!丁寧に話してくれよ~!)


「申し訳ありません。わたしにはそのような資格がないと考えます。ですので辞退させていただきたくここに参りました」


(よし、うまく演技できてるな。よかったよかった。)


 そうコウが安堵した次の瞬間。


「なのでさっさと私を解放してください」


(あちゃ~、さすがに無礼すぎる!)


 コウは思わず頭を抱える。


「ふっ。ハハハハハ。己の運命に抗い、余に逆らうというのか。しかしこの国では私がルールだ。王にならぬというなら死刑は免れんぞ」


 皇帝の笑い声が広間に響いた瞬間、空気の重さが倍増し、床がうなりを上げた。

「なっ!陛下、さすがにそれは重すぎます」


「コウ、お前には発言を許可していないぞ。黙れ」


「…はっ」


「うーん困ったな。あ、じゃなくて困りました」


(困るな~じゃねえよ!姫様状況わかってんのか!?)


「陛下、少しよろしいでしょうか」


 そう王に尋ねたのは、やせていて眼光の鋭い男だった。


「何だ?ザッカルト」


「恐らく姫様はまだ状況を呑み込めていないのでしょう。しばらく牢屋にでも入れておけばおとなしくなるかと」


 ザッカルトがそう言うと、かぐやが小声で話しかけてくる。


「ねえ、あの細っこい人は誰?」


「お前もう黙っててくれ!......はあ~、あの人は宰相様だよ。分かったら向こう向け」


 コウはそう小声で返す。幸い二人にこの会話は聞かれていなかったようで、


「ふむ。それもそうだな。ではかぐやよ、そなたに三日猶予を与えよう。

 牢で現実を噛み締めるがよい。三日後も同じことを言うのなら、今度こそ死刑である。お前ら、『白濁ノ塔』へと連れていけ!」


「ふん!見てなさい!度肝を抜いてやるから!」


 そうかぐやは大見得を切って、牢へと連れていかれた。


(まあそうなるよね~どうしよっかな)


 コウはそっとため息をついた


 ~~~~


「クックック。あの姫様は本当に面白いな。あの大見得の通りにこの月を荒らすことを願っているぞ…」


 ザッカルトは自室で地球を見ながら笑みを浮かべていた――。


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