王との謁見
今日の夜は牛丼の予定です
「流石に大きいわね」
城の目の前に立ち、かぐやはつぶやく。
頭上に聳え立つ白銀の城壁は、見上げる首が痛くなるほどの圧迫感を放っていた。門を固める近衛兵たちが槍を構えてズラリと並んでいるが、かぐやは恐怖を感じるどころか「へえ、月のお城って無駄に豪華なのね」と物珍しそうに眺めている。
「姫様、ここからは品行方正で清楚なお嬢様に見えるように演技してね」
コウが立ち止まり、念を押すように静かに言う。
「何よ、まるでいつもの私が変みたいに言って」
「いや、そう言ってる。僕も気を引き締めないといけないし」
そう言うコウの瞳は真剣だった。
「はあ~わかったわよ。あんたがそんなこと言うからなんかちょっと調子狂うじゃない」
「よし、じゃあとりあえず今から王に謁見するわけだけど、相手は一国の王だからね?くれぐれも失礼なこと言わないでね。本当に首が飛ぶから」
「大丈夫よ!猫かぶって乗り切ってやるわ!」
自信満々に胸を張ってみせるかぐやだったが、猫をかぶる気など端からないのは目に見えている。
コウはハァと大げさにため息をつくと、呆れたように目を細めた。
「それ、月では『ウサギを被る』っていうんだよ~」
「あんた早速気が緩んでるじゃない!」
「アハハ。まあ緊張しないところは姫様のいいところだね」
「なによ!ほめてないじゃない!」
「はいはい、いくよ~」
コウの心配をよそに、かぐやは「さっさと終わらせて美味しいものでも食べに行きましょう」と言いたげな足取りで、堂々と城の門をくぐっていった。
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廊下をしばらく歩いていると謁見の間に続く大きな扉があった。
扉の前でコウは立ち止まり、コンコン、と小さく二度ノックした。
「月翼騎士、コウです。かぐや姫様をお連れしました」
「入室を許可する」
扉が開いた瞬間、かぐやの肌を刺したのは冷気ではなく、肌が痺れるような強烈な圧迫感だった。
「余は第11代皇帝オルグである。コウよ、よくかぐやを連れ帰って来てくれた」
「は、ありがたいお言葉」
「そちらがかぐやだな。そなたは余の娘。それはつまり次期皇帝を意味する。
明日から皇帝について学び、1年後に即位させる。これは命令だ」
(...頼む姫様!丁寧に話してくれよ~!)
「申し訳ありません。わたしにはそのような資格がないと考えます。ですので辞退させていただきたくここに参りました」
(よし、うまく演技できてるな。よかったよかった。)
そうコウが安堵した次の瞬間。
「なのでさっさと私を解放してください」
(あちゃ~、さすがに無礼すぎる!)
コウは思わず頭を抱える。
「ふっ。ハハハハハ。己の運命に抗い、余に逆らうというのか。しかしこの国では私がルールだ。王にならぬというなら死刑は免れんぞ」
皇帝の笑い声が広間に響いた瞬間、空気の重さが倍増し、床がうなりを上げた。
「なっ!陛下、さすがにそれは重すぎます」
「コウ、お前には発言を許可していないぞ。黙れ」
「…はっ」
「うーん困ったな。あ、じゃなくて困りました」
(困るな~じゃねえよ!姫様状況わかってんのか!?)
「陛下、少しよろしいでしょうか」
そう王に尋ねたのは、やせていて眼光の鋭い男だった。
「何だ?ザッカルト」
「恐らく姫様はまだ状況を呑み込めていないのでしょう。しばらく牢屋にでも入れておけばおとなしくなるかと」
ザッカルトがそう言うと、かぐやが小声で話しかけてくる。
「ねえ、あの細っこい人は誰?」
「お前もう黙っててくれ!......はあ~、あの人は宰相様だよ。分かったら向こう向け」
コウはそう小声で返す。幸い二人にこの会話は聞かれていなかったようで、
「ふむ。それもそうだな。ではかぐやよ、そなたに三日猶予を与えよう。
牢で現実を噛み締めるがよい。三日後も同じことを言うのなら、今度こそ死刑である。お前ら、『白濁ノ塔』へと連れていけ!」
「ふん!見てなさい!度肝を抜いてやるから!」
そうかぐやは大見得を切って、牢へと連れていかれた。
(まあそうなるよね~どうしよっかな)
コウはそっとため息をついた
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「クックック。あの姫様は本当に面白いな。あの大見得の通りにこの月を荒らすことを願っているぞ…」
ザッカルトは自室で地球を見ながら笑みを浮かべていた――。




