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竹取物語”裏”  作者: やすひこ
第2章 白兎強奪編
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23/24

王城攻略②

短めです。しばらく週2回更新が続くと思います

「……っ!?」


 影の中からぬっと現れた人影を前に、コウが瞬時に双剣を引き抜き、セリーヌが凍てつく殺気を放ちながら刃を半ばまで押し抜く。アスターは息を呑んでかぐやの背後に身を隠した。


「静かにしろ。騒ぐな」


 重々しく、聞き覚えのある声が頭上から降ってきた。

 薄暗い灯りに照らし出されたのは、無骨な甲冑を纏った眼光の鋭い男——ザッカルトだった。


「ッ……ザッカルト様!? なんであんたがこんな所に!?」


 かぐやが尻餅をついたまま目を見開くと、ザッカルトは眉一つ動かさずに手を差し伸べ、彼女を腕力任せに立たせた。


「伝令兵から潜入の決意は聞いた。使者が渡したルートは確かだが、直前に親衛隊の巡回パターンが変わった。そのまま進めば大広間の手前で蜂の巣だったぞ」


「……助かったよ。で、俺たちを直接案内に来てくれたってわけ?」


 コウが剣を納めつつ訊ねると、ザッカルトは首を振った。


「いや、私はこれより反乱勢力との合流に向かう。皇帝の目を逸らすため、城外で大火を上げる予定だ。……私がお前たちに与えられるのは、この先の『抜け道』と『警告』だけだ」


 ザッカルトは壁の飾り松明を慣れた手つきで少し捻った。カチリと音が響き、絵画の裏から大人が一人通れるほどの小さな隠し通路が現れる。


「この抜け道を使えば、大広間を完全に迂回して『希少種飼育場』の目と鼻の先まで出られる。……だが、どれだけ道を選択しようと、最終目的地そのものに待ち伏せがいる」


「待ち伏せ……? パタパタウサギの場所に誰かいるの!?」


「ああ。親衛隊屈指の危険人物——カルヤだ」


 ザッカルトの言葉に、セリーヌの表情が露骨に強張った。


「カルヤ……! あの親衛隊の問題児ですか……」


「そうだ。奴にはややこしい『月脈解放』の仕掛けも術式もない。ただひたすらに圧倒的な……『暴力』そのものだ」


 ザッカルトは真剣な眼差しでかぐやたちを見下ろした。


「常人を遥かに凌駕する筋力と怪力に加え、奴は怒れば怒るほど加速度的に破壊力が上がっていく性質を持つ。頭に血が上ると味方の制止すら聞かなくなるため、飼育場のような重要拠点に左遷同然で配置されているのだ。小細工が一切通じない、純粋な物理的破壊の塊と言っていい」


「怒るほど火力が上がる筋肉バカ……!? 一番タチが悪いやつじゃない……!」


 アスターが引きつった顔で呟き、コウは「怒らせないように戦うとか、俺たちに一番向いてないじゃん……」と苦笑いしながら首を鳴らした。


「教えられるのはここまでだ。かぐや様、ご武運を」


 ザッカルトはそれだけ告げると、一瞬にして廊下の闇へと消え去った。


 後に残された四人。目の前には、不気味に口を開ける暗い隠し通路。

 かぐやはごくりと固唾を飲み込み、手首のプロトタイプリングを強く握りしめた。


「……行くわよ。キレやすい筋肉バカだろうと何だろうと、ウサギを奪って絶対地球に帰るんだから!」


 ~~~~


 暗く狭い抜け道を、息を殺して這うようにして進む。

 埃っぽい空気と壁の冷気が肌を刺す中、アスターが抱えた機材がカチャカチャと小さな金属音を立て、そのたびに全員の心臓が跳ね上がった。


「アスター、音!」

「ご、ごめんなさい……っ! でもこれ、途中で落としたら地球へ飛ぶための座標計算が狂うのよ……!」

「わかってるから、落ち着いて進もう」


 コウが低く落ち着いた声でなだめ、セリーヌが鋭い眼差しで前方の闇を見据える。かぐやは仲間たちの背中を見つめながら、これから立ち向かう「カルヤ」という脅威に対して密かに拳を握り直した。


 やがて抜け道の突き当たりに達し、隙間から差し込む光が四人の顔を照らした。

 コウが慎重に隠し扉を押し開けると、そこは天井が異様に高く、巨大な鉄格子の檻がいくつも並ぶ『希少種飼育場』の内部だった。


 月皇国の各地から集められた見たこともない珍獣たちが息を潜める巨大な空間。

 しかし、中央にある目当ての「パタパタウサギ」が入れられた金の檻の前には——床に巨大な鉄の棍棒を突き立て、不機嫌そうに腕組みをした一人の大男が仁王立ちしていた。


 ズシ……ズシ……と、ただそこに立っているだけで床が軋むような恐ろしい重圧感。


 扉が開いた音を察知したのか、男がゆっくりとこちらへ首を向ける。その血走った眼光が四人を捉えた瞬間感じたのは、押し潰れされる感じるほどの圧倒的な「殺気」だった。

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