いざ、月へと!
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「待ってたよ姫様~」
気配もなく背後に立っていた男の声に、かぐやは小さく飛び上がった。
しかしかぐやはすぐに体勢を立て直し、男のほうを向いて大きく振りかぶった。
「ふん!」
そういうと同時に、スパーン!と小気味よく音がした。
「いったあああ!姫様なんでぶつんだよ!?」
男は涙目で頬をさすりながら叫んだ。
「そんなの今までのあなたにムカついていたからに決まってるでしょ!
まあこれで少し溜飲が下がったわ。許してあげる。」
「ふつう謝るのは姫様なんだけど…」
「ふん!ところであなた、名前はなんていうの?」
「あれ、名乗ってなかったっけ?僕の名前はコウだよ〜。」
「ふーん、コウね。これからはそう呼ぶわ。」
コウは少し照れ臭そうにしながらそれを誤魔化すようにこう言った。
「よ、よし!じゃあ月へと行こっか!」
「ところでずっと疑問だったんだけど、月にはどうやって行くつもりなの?」
「まあまあ、こっちついて来て。あれだよー」
コウが指さすほうを見ると、小さなウサギが2匹、楽しそうに跳びまわっていた。
「か、かわいい~~!!!ねぇ、これってぎゅーってしてもいいの!?」
「ちょっ、姫様落ち着いて。」
「もう我慢できないわ!」
そういってかぐやは2匹のウサギを抱きしめに飛びついた。
「もふもふ~~!ってぶべっ!」
その時、なんと2匹のウサギは急速に人の倍くらいの大きさになって、かぐやを弾いていた。
「あちゃ~姫様やっちゃったね、ぷぷぷ~」
「コウ、もう一発殴るわよ。それで、これは何よ!なんでこんなに大きくなってんの!?」
「実はこのウサギ、月にしかいない固有種で、パタパタウサギって名前なんだよね~。結構な人見知りで知らない人に襲われそうになると大きくなることがあるんよ。…ぷぷっ」
かぐやがスッとこぶしを握る。
「何でもないです、ごめんなさい。」
「それで、これに乗っていくのね?」
「うん、背に乗って優しく首を撫でてあげてね。そしたら一度ジャンプして、大きな耳でパタパタ飛んで行くから。」
(もふもふ、きもちい~!これは癖になるわね…何とかしてペットにできないかしら。)
そんなことを考えながらウサギに乗る。
「よしじゃあ姫様、3、2、1、......で撫でてくださいね。」
「もう撫でちゃったわよバカ~~~!!きゃあ~~!!」
「はははは、くっぷぷぷ。やっぱり姫様はいじり甲斐があるね~。よし僕もいこっと。」
(わあ、だんだん地球が遠ざかっていくわ。私たちの家がもうあんなに小さく…。そういえばすごい速度で上昇してるのに全然苦しくないわね。)
ふとそう思い横を見るとコウがウインクしていた。
(あ、これたぶんコウが何かしてくれたんだ。じいちゃんが言ってたことは本当だったんだなぁ。...顔は腹立つけどね。)
「姫様~近づいてきたよ~!」
「そんなことよりコウ!これ着地できるの!?」
「何言ってんですか姫様。ここからはウサギに乗ったままの自由落下ですよ!」
(コウ~!先に言ってよ!いつかこの恨みは十倍にして返すわ…)
かぐやは勝手にそう誓い、そして月へと到着した。
「姫様~だいじょぶですかぁ生きてます?」
ぐったりとした様子でかぐやは言う。
「はあ、はあ、あんたのせいで、ひどい目に遭ったわ。普通耳でパタパタするんじゃないの!?」
「そうするとどんどん上行っちゃうからねー。まあまあこの景色を見てくださいよ。そしたら怒りなんてなくなりますから。」
あたりを見回すとそこには大きな城が見えた。その周りには、にぎわっている商店街もある。地球には売ってないような不思議なものがたくさん売っているようだ。
「コウ!私早くあそこに行きたいわ!」
「ここが我々の目的地、帝都ルナリアでーす。急いでも入国検査があるからね」
「じゃあ早くそれをしに行きましょう!」
姫様に腕をひかれ検査の列に並ぶ。
「あれはなにかしら!」
しかし、かぐやはそう言って列を抜け出しそうになる。
「ちょっ、姫様動かないで!後で好きなだけ見てもいいから!」
コウは心の中で陛下に会う前にこのおてんばを抑えさせなければいけないことに気づき、小さくため息をついたのであった。
(…ほんとに大丈夫かなこれ、はあ~)




