試練②
ショートした回路から煙が上がる第一の試練を抜け、三人は階段を登って二階へと到達した。
そこは一階の賑やかなトラップ群とは一転し、静まり返った広大な部屋だった。壁一面にはギッシリと巨大な歯車が組み込まれており、中央には重厚な鉄の扉と、その横に青く光る複雑な盤面(操作パネル)がぽつんと置かれている。
『……ハ、ハハハ! 第一の試練を突破するとはな! だが喜ぶのはまだ早いぜ侵入者ども!』
スピーカーから再びノイズ混じりの「ヒャッハー声」が響き渡る。一瞬素の声漏れてたでしょ、と心の中で突っ込むかぐやを余所に、アナウンスは続く。
『第二の試練は脳みそを使ってもらう! 私の作った“月脈論理パズル(ロジックロック)”だ! 脳まで筋肉の脳筋どもには突破できまい! 制限時間内に解けなければ、部屋全体に超強力睡眠ガスを充満させて全員まとめて捕獲してやるぜぇ! ぎゃははは!!』
「謎解き……!? ちょっと、私そういう難しいの苦手なんだけど!」
かぐやが頭を抱えると、セリーヌがすっと操作パネルに歩み寄り、表示された文章と数式のような月脈記号をじっと見つめた。
「『歯車を回転させて、月脈器を起動させろ。さもなくば其方等は永遠にこのままだ』と書いてありますね。えーと月脈を流すスタート地点がここにあって、どこかにある正しいゴールに接続すると扉が開く、という感じでしょうか」
「うーん。ゴール候補は三つある感じか。今のところどれが正しいかわかんないな」
コウはパネルを見ながら首をかしげていたが、「もうやる気なーい」とでも言わんばかりの表情で立っていた。
「ね、ねえセリーヌ。なんとかコウにやる気を出させられない?ほら、セリーヌが可愛くお願いすればコウちょろいからいけるんじゃない?」
かぐやがコウに聞かれないようにこっそりと提案する。それを聞いたセリーヌは顔を真っ赤に染めて「い、いやですよ!なんてこと言うんですかかぐや様!」と答える。
「そこを何とか……お願い!」
「……一回だけ、デート行ってあげます」
「よし!コウー!これ解けたらセリーヌがデートしてくれるって!」
「マジ!さっさと解くよ!早く手掛かりを探そう!」
.........意外とセリーヌもまんざらでもないのかもしれないわね。これからもこの二人は観察が必要ね!
「よし!じゃあこの部屋の探索から始めましょう!」
三人であたりを探し始めて数分がたった。がらくたが大量に放置されている子の部屋の中では、「先輩これ、何かに使える?」というコウの前のめりな提案をセリーヌが「違いそうですね」といなすやり取りが何度も行われていた。
「んんっ?なんか紙がある~。セリーヌこれ何かわかるかしら?」
「紙が出てきたのは初めてですね。ちょっと読んでみます」
セリーヌに紙を手渡し目を通している間、コウが話しかけてくる。
「.........姫様、デートって何したらいいと思う?」
「気が早いわねあんた、冷静になりなさい!?デートできるのは早くても地球に行ってから、遅かったら私が皇帝になった後の話よ?」
「そうはいっても先輩とデートだよ?楽しみすぎる……」
「はいはい、セリーヌ。だいたい読めた?」
「はい。これはこの塔全体の地図みたいです。回路の全体図も載っています」
「よし、じゃああとは歯車を回してつなげるだけだね。えーと、ここをこっちに回して、姫様、あそこの歯車四分の三回転させて。それで…」
コウがテキパキと二人に指示を出していく。かぐやは「いいとこ見せたいんだねぇ。うんうん」と微笑ましく思い、ついにやけてしまった。そうこう皆で作業してしばらくすると、扉があいた。
「よし!じゃあ先に進みましょう!そろそろ最上階かしら」
「そうですね。先ほどの地図によると次の階は大広間があってその奥に小さな部屋があるようです」
「そういえばこの階を突破した時には、アスターには何にも言われなかったね。もうあきらめたのか、次の階によっぽど自信があるのか。ともかく警戒はしておいたほうがいいね」
「そうね!それじゃあ先に進みましょう!」
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やばいやばいやばいやばい。この天才、アスター様のタワーがこんなにすぐ攻略されるなんて。さっきの地図だって、わたしもどこにいったのかわからなかったやつなのに!なんであんな侵入者どもの都合がいい時に出てくるのよ…!
.........ふんっ。でもいくらあいつらでも次の階にいる私の最高傑作には勝てるはずないもの!あいつらの絶望した表情が楽しみね!
『ぎゃはははは!かかってきなよ侵入者たち!天才の力、見せてやんよ!」




