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竹取物語”裏”  作者: やすひこ
第2章 白兎強奪編
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試練①

豚汁の里芋っておいしいですよね。あとはこんにゃくも

「ねえねえ、二人はアスターって人どんな人だと思う?」


「そうですね。経歴から考えて、自分の芯が通ったまっすぐな人だと感じましたね」


「でも研究者ってちょっと変わった感じの人多いからな~」


「うんうん。いいねいいね。ぜひ仲間にしたくなったわ!さっさと捕まえに行きましょう!」


「姫様?人のこと無鹿なんかと思ってる?」


「いいじゃないですか、コウ。ほらかわいいですよ?」


「……セリーヌ先輩、その甘やかしが姫様のおてんばを加速させてるんだって」


 コウが頭を抱えている間にも、かぐやは「ほら早くー!」と二人を引っ張り、帝都の東の端へと急ぐ。


 辿り着いたのは、街の廃墟区画にぽつんと聳え立つ、古びた巨大な時計塔。

 かつては時を告げていたであろうその場所は、今や無数の歯車や謎のパイプ、スパークする電流のコードが外壁にまで絡みつき、怪しげな城塞のようになっていた。


「ここがアスターの家……? なんだかお化け屋敷みたいね」


「気をつけてください、かぐや様。あちこちから嫌な予感が——」


 セリーヌが注意を促したその瞬間、時計塔の頂上にある巨大なスピーカーから、ジジジ……と酷いノイズと共に爆音が響き渡った。


『ハァーーーッハハハハハ! 歓迎するぜ愚かな侵入者どもぉぉッ!!』


「な、なに!? だれ!?」


『ここは我が聖域! 天才機械技師アスター様の絶対不可侵領域だぁぁ! 帝国の犬か裏街のチンピラか知らんが、私の愛おしい実験体(ターゲット)になってもらうぜヒャッハー!!』


 スピーカー越しに聞こえる声は、まるで悪の魔王か世紀末のヒャッハー系悪党。

 直後、ガシャンッ!と時計塔の重い鉄扉が自動で開き、内部へと誘うような薄暗い階段が現れた。


「……ねえコウ。さっきお婆ちゃん『変わり者』って言ってたけど、これただのヤバい奴じゃない?」


「うーん、思った以上にネジが飛んでるな……」


 引き気味のかぐやとコウを余所に、セリーヌはすっと剣の柄に手をかけた。


「行きますよ、二人とも。どうやら、すんなり通してくれる気はないようです」


 一歩踏み入れると、背後の鉄扉がバタン!と激しい音を立ててロックされた。

 それと同時に、壁のあちこちから機械の駆動音が響き始める。


『さあ始まります! アスター様謹製・地獄のからくりトラップタワー! 第一の試練、無事に突破できるかなァ!? ぎゃはははは!!』


 スピーカーからの高笑いと同時に、足元の石畳がカチリと沈み込んだ。


「あ、やば——」


 コウが叫ぶのとほぼ同時。天井から無数の小型機械兵器(ドローン)が群れをなして落下してきた!

 それだけではない。壁のあらゆる隙間から、月脈の光を帯びた怪しい粘着ネットと、麻痺効果のある針が雨あられと射出される。


「ひやあぁぁぁ!? 何これ、罠のバーゲンセールじゃないのよー!」


「かぐや様、私の後ろへ!」


 セリーヌが一歩前に踏み出し、瞬く間に剣を閃かせる。キンキンッと甲高い音を立てて、飛来する麻痺針を完璧に弾き返していく。


「おっと、ネットは勘弁!」


 コウは軽やかな身軽さで宙を舞い、迫りくる粘着ネットをすれすれでかわしながら双剣でドローンをすれ違いざまに両断した。


 だが、ドローンの数は減るどころか、壁の奥から次々と追加で押し寄せてくる。さらに足元の床が回転し始め、三人の体勢を崩そうとしてきた。


「くっ、キリがないわね!……そうだ、セリーヌが言ってたわ。『集中を高めて体に流れる力を意識する』……!」


 かぐやはぎゅっと目を閉じ、この二週間で必死に特訓した成果を思い出そうとする。

(出でよ、私の内に眠る月の力……! 今回は転ばない、絶対転ばないんだからー!)


「……ぬぬぬぬっ!!……はあああっ!!」


 かぐやが目を見開き、勢いよく手のひらを前に突き出した瞬間——

 ほんの少しだけ解放された月脈の波動が、奇跡的に足元の回転床の制御ギアへと一直線に激突した!


 バチバチバチッ!


「えっ!?」


 過剰なエネルギーを流し込まれた制御ギアが小さな爆発を起こし、トラップ全体の連動回路が「ボシュン……」と煙を上げて停止。壁からの針も、ドローンの追加配備もピタリと止まってしまった。


「……あれ? 私、何かすごいことしちゃった?」


「姫様……あそこに月脈叩き込んで回路ショートさせたのか? 単純作業の自爆誘導かよ、相変わらず無茶苦茶だな……!」


「素晴らしいです、かぐや様! 見事な応用力でした!」


「まあたまたまなんだけどね!でももっと褒めていいわよ!」


 かぐやがドヤ顔で胸を張る中、スピーカーの奥から『……え? あ、あれ? 回路3が過負荷で落ちた……? な、なんで……?』と、一気に焦りを含んだ生の素の声が一瞬漏れ聞こえたのだった。

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