第2話 公安警部補・後藤が舎人公園朝日の広場で、拉致された件について
「係長、柳田修一と福の神(福田福)たち、丘の上に集まってます。」
「里の男女、若者たちが集まってますね。花火とか持ってますよ。」
「単に、花火で遊ぶつもりですかね?」
公安警部補・後藤と部下二人は、柳田一族の様子が見やすい、舎人公園朝日の広場の北側のジグザグ歩道が見える場所にいた。修一たちが『北壁の修行』と噂されている場所であるが、彼らは流石にそれは知らない。
「あ、すずめ幼稚園のバスに乗ってた女子高生って、あの娘じゃないですか?」
「確かに、可愛いな。もうひとりも可愛いぞ!……高山、あれは姉妹か?」
「全員、アイドル級だな。」
やたらと普通のオヤジや若者のようにあゆみ達を褒めていた。
丘の上にいるアイドル級の女の子達は、すずめ幼稚園の通園バスでやって来た、異世コン『戦場のファミプ』の女子高生バイト姉妹のあゆみとカエデ。そして、女子社員たちだった。
「柳田一族の頭領、柳田も居て、丘の上は、現場検証みたいな動作ですね。」
「北側の歩道を見ながら、なんか話してるな。」
「ビデオ、回してるな!」
「距離が遠いから、音は無理です。」
「後で、騒ぎが起きたら、近づいてみる。その時に、音も拾えるだろ!」
「ドローン、持って来るんだったかな。」
「飛行音でバレるでしょ。」
「あいつらだからな。」
「SDカード、確認したな。」
「はい、0フォーマットした新しいの4枚。それぞれに入れました。」
「じゃ、バレないように、撮っておけ!」
「親たちも来てないか?」
「はい。なんだか、途中から柳田にくってかかってる感じですね。」
「仲間割れか?」
「南へ回るぞ。」
「こっちはいいんですか?」
「大勢で襲撃するなら、なだらかな方からだろ!」
「「了解!」」
ちょうど南側へ3人が到着した時、後藤たちの前を、あゆみたち従兄妹組4人が駆け抜けていった。夕飯を食べていたキャンプ広場で、それに気づいたりおんは、どこに敵対者がいるかを咄嗟にオーラ色判定で把握した。
後藤たちは、りおんのターゲットに認定された。
異世界コンビニ『戦場のファミリーストップ』の経営者で、大魔法使い(初心者)の浅田りおんが、後藤たちを見ていた。
「あ、高校生ぐらいの男女2人ずつ、4人が丘をまっすぐ駆け降りて来ます。」
「わぁ〜なんだ!あの速さは!ウサインボルトを超えてないか!」
「オリンピックレコード確実ですね。」
「坂で整地してなく、芝生とアスファルト、コケると大事故ですよ!」
「木々の間も、問題なく走り去って行きました。」
「ランナーたちも気付いて、なんか叫んでますよ。」
「『俺もオリンピック出るぞぉ〜』って、あそこから急にダッシュしますね。」
「なんだろう、全員スタートラインが一緒だな。」
「あっちに向かう人も、ダッシュしますね。」
「みんな同じところからダッシュですね。」
最後、3人は呆れ返るほどの語彙力のなさで、同じことを言い合っていた。驚きすぎたんだろう。
オリンピックレコード並みの4人組に驚いたランナーたちが、ある線を越えると急にダッシュ。まるで、魔法にかかったように……。彼らではなく、自分がオリンピックレコードで走れたと思ったのだろう。
「今の、撮ったよな。」
「後で確認だな。」
「今、見たいです!」
「仕事中だ、あっちが終わってからだな。」
「お前ら、ボイスレコーダーも、録音してるよな。」
「はい、係長と僕の胸ポケットに入れてますよね。」
「後でこれも確認な。」
「カメラ回しながら走ってたランナーいなかったな。」
「いたら、協力頼めましたね。」
「まあ、これだけで十分だろ!」
「オリンピックに出てくれるといいですね。」
「高山、オリンピック出る前に、襲われたら、かわいそうだろ」
*****
……『あゆみ達のこと、心配してくれてるよ。いい奴らだな。』
肉体強化魔法、知らずに使ったんだろけど、春樹、康太とカエデ、あゆみはあとで説教だな。
……『普通の高校生のスピードじゃなかったな!』
1週間の魔法修行でここまでなるって、僕も含めて、おかしいよな!
*****
「あの4人は、初顔だな。高校生ぐらいか?」
「男の子も、可愛いのとガッシリしたのでしたね。」
「その趣味ないよな?」
「ないです。……多分。」
「高山、罪だけは犯すな!」
「さ、仕事仕事!」
「上に上がると、バレますね。」
「上がらなくても、撮影できるぞ」
「あっ、鉄棒2〜3本ずつ?……スタンガン持ってる奴も居ますね。」
ちょうど、東側の遊具のあたりから、徒党を組んだ軍団が現れた。
「係長、暴徒が15〜6人はいますよ。応援呼んだ方が良くないですか?」
「あぁ、もう少し見てよう。どうせ、修一と福の神がいれば、こいつらまとめて面倒見てくれるよ。終わってからでも十分だろ。」
「そうですね。二人を任意で聴取するぐらいはできますから、一石二鳥ですね。」
「頭領の柳田もいるから、そっちも任意が可能かな?」
「一石3鳥ですか?……儲けもんですね。」
彼らの認識だと、修一たちは、化け物のようだ。それにしても3人目の新人、しゃべらないな!
「多分、大丈夫だよな。」
「ことりと琴子もいましたからね。」
「琴子が怖いよな。」
「結構ボコボコにする勢いで、男の子追っかけて、素早くて強そうだったよな。」
「いつも、福か修一が捕まえて、宥めてたよな。」
「襲撃犯、死ななきゃ、大丈夫だろ!」
「あの人数での襲撃ですからね。正当防衛は確実です。」
「だよな。大丈夫だよな?」
*****
……『公安が、こんな判断でいいのか?……仕事しろよ』
二重意識の片割れ、『俺くん』の気持ち、わかるよ。……うん。
……『レポーターで聞いてやってるんだから、もっとしっかりしろ』
『僕』もそう思う。
*****
すでにこの時、りおんは、あさが開発した『レポーター魔法』の応用で、彼らの会話を聞いていた。監視対象なのである。ちなみに『レポーター魔法』は、結界で収音した音を遠隔地のシャボン玉結界に飛ばすか、念話で聞きとる魔法である。ブラ森田や街ブラ番組で大きなマイクがついた竿のイメージで命名。もちろん目に見えない。
「カメラ回してるか?」
「はい。カバンの穴から、レンズ覗いてますよね。」
「大丈夫だ。」
「あいつら、なかなか慎重ですね。」
「なんか、草加が修一にくってかかってますね。」
「文句言いたいんだろうが、……あいつバカだろ!」
「バカですね。……あいつの声だけは、しっかり録れますからね。」
「修一、俺の琴子を奪るな!殺してやるぅ!」
*****
……『しっかり、修一に向かって、言葉に出して言ってる馬鹿。』
ここ、戦国時代?……武将は馬鹿じゃないけどね(笑)。
*****
「調書、書きやすいです。」
「殺人未遂、確定ですね。」
「傷害未遂じゃないな。」
「係長、丘の上、なんか光りました!」
「光ったな!花火か?」
「火花だけでしたね!……音は?」
「しただろ?」
「したよね。」
「音しました?」
しばらく、丘の上を3人で目を凝らして眺めていた。
「何だ!……体が動かない!」
「いきなり、景色が変わりました。ここ森?、林の中ですか?」
「助けてくれぇ〜。……お母ちゃ〜ん。」
突然、声をかけられた。
『えぇ〜と、いま暴漢たちに襲われたんですけど、あなたたち、関係者の方ですか?』
「誰だ!俺たちをどうした。何をした。」
いま、後藤たちは何者かに拘束され、突然語り掛けられた。体が動かない。
公園の通路部にいた彼らは、一瞬で景色が変わり、森の中にいた。
男の声はするが姿は見えなかった。
襲撃見学と決め込んでいた、一瞬前と違って、全身の血が下半身に落ちたようだった。
『聞いてるのは、僕なんですけど……。地域の人を若者に襲わせましたよね。』
「なにを言ってる、上の出来事は知らん!警察に電話するぞ!」
『どうぞ、警官来る頃には退散しますから。』
後藤の手だけ拘束が緩んだ。さっとスマホを出して、留守番の水沼に電話した。
「もしもし、ヤンキーの乱闘事件だ!犯人の一人に拉致されてる!すぐ来てくれ!」
『係長、拉致ってどういうことですか?』
「わからん。体が動かないんだ!」
警察官になって初めての恐怖。死を感じた後藤は、それだけ言うと、スマホを切った。
『110じゃないんですね。直通電話をご存知なんですね。』
「上で何をした」
『だ〜か〜ら、質問は僕です。……襲わせたの、あなたたちですよね。』
「知らん!ヤンキーが鉄パイプで騒いでただけだろ!」
『あ、秘密の暴露……調べる方は得意でも、調べられる方は苦手ですね。』
「何を言ってるんだ、俺は知らん!」
確かに、調べられた経験はなかった。
『あの丘の上の事件の詳細、どうして知ってるんですか?』
「丘の上で、殴り合った音がしてただろ!」
『してました?』
『りおん、暇……じゃないな。……手伝おうか?』
『あ、名前は……言っても記憶消えるから、大丈夫か(笑)……社長は暇なの?』
『こいつら、おもろ無いから、暇だった。』
『ですよねぇ〜』
気が抜けるような会話でもう一人、仲間か?……後藤が知ってる名前だった。が、怖いから知らないふりをした。……こいつは例の観察対象の地主か……。とすると社長は、ファミプの社長。
『ボイスレコーダーとか、ドローン撮影とか、大丈夫か?』
『途中参加者のアルノと僕はずっと隠密魔法と遮音魔法発動中だよ!話しは念話でしてるしね。』
「魔法って、どういうことだ!」
『突然3人とも動けないって、普通じゃないですよね。』
「金縛りとかか!」
『ドローンは、いないみたいだね。準備間に合わなかった?』
「ヤンキーの乱闘ぐらいのことで使うか!」
『ヤンキーの乱闘が起きると、決まってたんですか?』
「舎人公園周辺で、ヤンキーの乱闘があるかもって、情報を拾ったんだ!」
『社長、下にいて、上の音聞こえた?』
『上の音は、バチって、虫取り網で蝿叩いたときみたいな音が1度しただけだよ。……そうだよねぇ〜』
「あぁ、まだ始まらんのかって、イライラしてたら、お前らに拉致された!」
「拉致現行犯だ、逮捕するぞ」
高山が頑張った。もう一人はまだ震えてる。
『無理だと思います。証拠がないです。』
「実際、俺たちを縛ってるだろ。」
『縛ってないですよ。あとで確認してみてくださいね。』
「縛られてないのに、動けないなんてことがあるか!」
後藤は手首の感触を確認した。動かないが、縛られてる感じはない。そんな暇もなかった。逆に恐怖に震えが来そうだったが、じっと耐えた。
*****
……『おい、確認だが、実際の会話より、ずいぶん俺たちの会話が抜けてる気がするぞ。省いたか?』
公安さん達の記憶力の違いじゃ無い?……ははは。必要ない会話は減らして、テンポアップ。
*****
りおんとの会話は減らしていますが、スピンオフも後藤たち警察側の心情、会話を加えたので、その分テンポを良くしました。
本編はもう少し詳しく、詳細な会話が展開されてます。そちらも楽しんでいただければ、嬉しいです。
本編ではこのお話は第147話から始まりますが、一つ前の第146話から読んでいただいた方が、緊迫する状況を味わえます。なので、下記リンクに飛んでくださいね。
◆本編で事件の展開を楽しみたい方は、こちらへ。
https://ncode.syosetu.com/n0517mh/146/
“異世界コンビニ『戦場のファミリーストップ』開店です。”(本編)
第7章・第135話から『舎人公園攻防〜サスペンス編』連載中!
◆公安警部補・後藤たちの今後の活躍が気になる方は、
『第3話 怖い思いをさせて、いろいろ聞いたので、少し情報提供です。』(仮)
後藤達に恐怖を与えたりおん、申し訳ないで、少し手柄につながる情報提供。これからもよろしくお願いしますね。のご挨拶。
ブックマークと通知設定ぜひぜひ。次話は現在執筆中!近日公開!
現状全7話を予定!
後藤は事件のたびに登場します。スピンオフも続くかも!
面白かったら★★★★★くださ〜い。
感想もお待ちしてま〜す。




