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継承者誓約譚  作者: 冬泉アオイ
《氷花の詩》第二章:敵は過去も今も未来も恨みました。■■を守るために。
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第三話:不穏な兆候、標的は南へ

ビィーーーーー。ビィーーーーー。ビィーーーーー。

駐車場に響いた無機質な電子音は、

政府の防衛統括局から守護官の端末へ直接送られる、最高警戒レベルの緊急報だった。

「──っ」

端末の画面を凝視した氷雨の顔から、一瞬で先ほどまでの硬さが消え、

冷徹な戦士の表情へと戻る。そのただならぬ雰囲気に、

隣でからかっていた鏡花も即座に笑顔を引っ込めた。

「氷雨、どうした?」

柊夜が水縹色の瞳を鋭くして問いかける。

「……情報だ。国都の周辺に潜伏していた灰燼の斥候どもが、

こちらの監視網を破って一斉に南下を始めた。

奴らの進路、底に傍受した暗号文から推測される次の襲撃目標は──」

氷雨は一度言葉を切り、柊夜と絢芽を真っ直ぐに見つめた。

「敷島の最南端、南国『日向』だ」

「日向……っ!?」

絢芽が小さく息を呑む。

日向といえば、一年中太陽の光が降り注ぐ常夏の大地であり、

独自の豊かな文化を持つ地域だ。

しかし同時に、先ほどの会議でも懸念されていた通り、

直近の防衛体制の再構築が最も遅れている「手薄な地域」でもあった。

「嘘、日向が狙われてるって……!?

あそこには今、防衛のための高位術師があまり配置されていないはずじゃ……っ!」

まだ近くで言い争っていた凪や日奈たちも、その言葉を聞きつけて表情を変える。

「ああ。奴らは意図的に、一番守りが脆い場所を狙ってきたんだ」

柊夜は腰の愛刀「氷河」の柄にそっと手を置いた。

その瞬間、彼の周囲の空気がピキピキと低音を立てて冷えていく。

最強と称される氷の継承者の闘志が、静かに目覚め始めていた。

「予定変更だ、絢芽、鏡花」

柊夜は隣に立つ桜色の髪の少女を見つめた。

「花の隠れ里に戻るのを後回しにして、このまま俺たちで日向へ向かう。

手薄なあの地を灰燼に蹂虙されれば、敷島の南の結界が崩壊する。

そうなれば、全国の隠れ里もただでは済まない」

「はい……っ! もちろんです、柊夜様! 私も一緒に行きます。お供させてください!」

絢芽は少しの迷いもなく、桃色の瞳に強い決意を宿して頷いた。

「よし、決まりだ。氷雨、国都の専用ヘリを手配しろ。日向へ直行する!」

「了解だ。すぐに手配する」

氷雨が素早く端末を操作し、政府の特別航路を確保し始める。

「気をつけてね、絢芽ちゃん、柊夜。……私も本当はついていきたいけれど、

自分の里の防衛を固めなきゃいけないから……」

凪が悔しそうに拳を握りしめる。

「大丈夫ですよ、凪ちゃん。私には、柊夜様がついていてくださいますから」

絢芽は凪の手を優しく握り、安心させるように微笑んだ。

「……死ぬんじゃないぞ、最強さん。お前が倒れたら、誰が俺の相手をするんだよ」

不敵に笑う迅も、その瞳の奥には確かな心配の色を浮かべていた。

「ああ、お前に背中を預けられるくらいには、強くなって帰ってくるさ」

柊夜は短く答えると、絢芽を促して手配された車へと乗り込んだ。

国都の喧騒を背に、車は特別飛行場へと急発進する。

だが、彼らはまだ知らなかった。

九条冥が日向の地に仕掛けた罠が、ただの襲撃に留まらないことを。

真の恐怖が、すぐ目の前まで迫っていることを──。



次は日向へ行って…。

ああ、後日談書きたい

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