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継承者誓約譚  作者: 冬泉アオイ
《氷花の詩》第六章:誓いの森防衛戦
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第六話:共闘と援軍

──柊夜たちが北部で特殊重機を打ち破る、少し前のこと。

誓いの森・南部防衛線は、重苦しい血の匂いに包まれていた。

「ハァ、ハァ……っ、くそ……! 連続で『瞬転』を使いすぎた、か……っ!」

時の守護官・時東刻成が、愛刀「瞬転」を地面に突き立て、激しく息を切らせていた。

そのすぐ後ろでは、時の継承者・久遠皓が、

杖「遡航」にすがりつくようにして膝をついている。顔色は紙のように白い。

皓は、柊夜と絢芽に過去の記憶を見させるべく

多大な幻力を消費したばかりだった。

幻力の残量は底を突き、立っていることすら奇跡に近い状態だ。

「刻成、無理をするな……! 君の身体の時間が、負荷で焼き切れてしまう……っ!」

「何を、おっしゃいますか皓様……!

あなたを、ここで死なせるわけにはいかない……っ!」

そんな満身創痍の時の主従の前に、立ちはだかるようにして影が二つ、滑り込んだ。

「これ以上、あの一派に指一本触れさせるな。──『黒縛』」

影の守護官・烏山幽玄が、その細い指先を躍らせる。

空間に張り巡らされた無数の鋼糸が、闇に紛れて灰燼の突撃兵たちの四肢を絡めとり、

その動きを強引に停止させた。

「幽玄、ナイス……! ──『影縫』っ!!」

影の継承者・影山零が、影を敵の背後へ移動させ、

小刀「影縫」を地面に突き刺す。

糸で拘束された敵兵たちの影が地面に縫い付けられ、完全に身動きを奪われた。

特殊な「時」と「影」の連携。

本来なら、これだけで一軍を沈められる凶悪な防衛陣形だ。

しかし、今回の敵はあまりにも数が多すぎた。

「チッ、また湧いてきやがった……!」

幽玄が呪詛を吐く。

影から拘束をすり抜けるようにして現れたのは、

反・術式障壁を纏った灰燼の暗殺部隊だ。

彼らの放つ赤黒い波動が、幽玄の糸を、零の影の術式を、

次々と相殺して消し去っていく。

「はははははははは! 術式を維持するだけで精一杯のようだな、敷島のネズミども!」

障壁で影の束縛を強引に破った灰燼の兵たちが、一斉に武器を掲げて跳躍した。

狙いは、完全に無防備となった時の主従──皓と刻成の首だ。

「しまっ──!」

零が叫び、幽玄が糸を引き絞ろうとするが、敵の速度が上回る。

届かない。

絶体絶命の刃が、皓の眼前まで迫った──その、瞬間だった。

──「遅いな」──

上空から、空間そのものを凍りつかせるような、凍徹な声が響き渡った。

ドォォォォォォォォンッ!!

凄まじい地響きと共に、

迫っていた灰燼の暗殺兵たちが悲鳴を上げて四方八方へと吹き飛んでいく。

砂埃と、キラキラと輝く細かな氷晶の向こうから、

一本の刀を腰に差した男が静かに歩み出てきた。

そのスーツの裾を冷気で凍らせ、鋭い眼光を放つ男。

氷の守護官──神楽坂氷雨である。

「ひ、氷雨……さん……!?」

零が目を見開く。

「柊夜様の指示だ。南部の時と影、まとめて護りに来たぞ。」

氷雨は愛刀「吹雪」を静かに構え直すと、目の前にひしめく数十人の灰燼の軍勢を、

まるでゴミでも見るかのような冷たい瞳で見下ろした。

「影の一族。お前たちは、後ろの時の二人を護ることに全力を注げ」

「……え?」

「ここは──俺ひとりで、すべてやる」

そう言い放つや否や、氷雨の身体から、

周囲の空気が一瞬で凍結して結晶化するほどの、圧倒的な大質量の幻力が膨れ上がった。

「な、なんだあの幻力量は……!? 守護官のレベルじゃないぞ!」

動揺する灰燼の兵たちが、

慌てて『反・術式兵装』の障壁を幾重にも重ねて氷雨へと向ける。

術式を消し去る赤黒い光が、氷雨を包み込もうとした。

しかし、氷雨は不敵に、獰猛に唇を釣り上げただけだった。

「消せるものなら、消してみろ。──『氷葬・延金』」

氷雨が「吹雪」を一閃した瞬間、術式を消すはずの反・術式障壁ごと、

凍らせ、両断した。

「ば、バカな……! 障壁が、寒さで凍って、砕け──」

言葉すら最後まで紡がせなかった。

バリィィィン!! と小気味いい音が響き、凍りついた敵の武器や兵装が、

内側から粉々に砕け散っていく。

わずか一振り。

たった一閃で、南部防衛線を埋め尽くしていた灰燼の兵の半数が、

完全に戦闘不能となって地面に転がった。

「すっげぇ……相変わらず、無茶苦茶な強さだな、この人……」

幽玄がつぶやく。その横で零は

「これなら、確かに僕たちは防御に専念できますね」と、驚嘆の息を漏らす。

氷雨は刀を鋭く振い、残った敵を睨みつけた。

「さあ、お前たちの棟梁は中央に現れたようだ。──残りは一瞬で片付けるぞ」

最強の前衛アタッカー・氷雨の合流により、絶体絶命だった南部防衛線は、

一転して灰燼の処刑場へと変貌を遂げるのだった。



氷雨は結構強いです。

剣術だけなら鏡花と互角なんだが、術式行使の場合だと氷雨に軍配が上がります。

そして皓、なんで生きてるのかわからないレベルで限界です。

そして刻成の瞬転、瞬間移動ができます。

幻力消費はえぐいけど。

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