第五話:敷島・国都
ガタガタと激しく車体を揺らし、限界速度を超えて敷島の鉄路を爆走する特急列車。
一般客を全て降ろした車両の中で、
柊夜たち氷と花の一行は、緊迫した空気の中で情報共有を始めていた。
車内中央のテーブルに広げられたのは、国都・秋津洲の立体魔術地図。
赤く点滅する無数の光点が、灰燼の別働隊の侵入経路と、
防衛に奔走する仲間たちの現在地を示している。
「──宗星からの情報、および国都の通信魔術の残響から割り出した戦況だ」
柊夜は水縹色の瞳で地図を睨みつけ、冷徹に指先で拠点を指し示した。
「現在、俺らと負傷療養中の大地を除いた、
合計15人の継承者と守護官が各地で交戦中だ。配置を頭に叩き込め」
柊夜の声が、列車の走行音を切り裂いて響く。
「まず、緋村宗星と不知火焔の炎主従は、
総本殿へ続く『誓いの森』の入り口付近で敵の正面大部隊を食い止めている。
雷堂迅、風見凪の二人は、国都上空での空中戦だ。
飛行型の反・術式兵装を遊撃している。
金剛厳、鳴神刹那、望月朔夜の三人は、
国都中心部での一般市民の避難誘導および市街地防衛」
「主従がバラバラに分断されて、混成で防衛線を張っている状態ですね……」
絢芽が「桜蘭」を胸元で握りしめながら、刻一刻と変化する地図を見つめる。
「ああ、それだけ敵の奇襲が組織的で、余裕がないということだ。
──続けて、誓いの森の四方防衛線だ。
千夜と日奈は『誓いの森・北部』の防衛。
皓、幽玄、零、刻成の4人は『誓いの森・南部』の防衛。
駆と疾風は『西部』の防衛。……防衛陣形はこんな感じだ」
トントン、と柊夜は地図の中心──敷島の心臓部である総本殿を指で叩いた。
「棟梁の九条冥は、恐らくこの防衛線の隙を突き、
森の総本殿付近に直接現れると予想される。
狙いは大地の首、あるいは敷島の結界基盤そのものだ。
──列車が国都へ滑り込み次第、俺たちは即座に展開する」
柊夜は顔を上げ、同行する守護官の二人へ、寸分の迷いもない鋭い視線を向けた。
「俺と絢芽は、最短距離で九条を叩くため中央部へ突貫する。
氷雨は、精神時空の術式直後で消耗している皓たちがいる南部の防衛に参戦しろ。
鏡花は、駆たちのいる西部へ行け。
あそこは守護官二人だけで戦力が薄い」
「了解しました。南部の影と時の一派、まとめて護り抜いてみせましょう」
「了解しました! 守り抜きますよ。」
氷雨と鏡花が、それぞれの愛刀「吹雪」と「春嵐」の柄に手をかけ、
不敵に、しかし固い決意を込めて頷く。
柊夜は最後に、隣に立つ少女──先ほど詠唱を重ね合い、
最強の共鳴奇術を完成させた花菱絢芽を見た。
「絢芽。九条が来たら、俺が引き付ける。
お前は後方から揺さぶれ。
──奴を消耗させ、隙ができたら共鳴奇術で葬ってやる。」
絢芽は一瞬だけ驚いたように目を丸くしたが、
すぐにその唇に、不敵で、かつてないほど信頼に満ち溢れた美しい笑みを浮かべた。
「──了解です、柊夜様! 私たちの全力、あの狂人に叩き込んでやりましょう!」
キィィィィィン……!
国都へと近づくにつれ、車窓の向こうの夜空が、
赤黒い炎と激しい雷光で明滅し始める。
大切な仲間たちが命を懸けて戦う、地獄の戦場がすぐそこに迫っていた。
新しき力を手にした二人の継承者と、それを支える二人の守護官を乗せた列車は、
轟音を上げて国都の駅へと滑り込んでいく──。
襲撃編開始!
今日中に新しい設定資料出すかも…




