第四話:国都襲撃
「共鳴奇術」の理をその身に刻み、雪松氷柱に真の力を認めさせた冷泉柊夜と花菱絢芽。
二人は未だに互いの手をぎゅっと繋いだまま、
全ての謎が眠っていた『氷の隠れ里』を後にした。
──だが、強固な隠れ里の結界を跨ぎ、再び北海洲の白銀の荒野へと足を踏み出した、
まさにその瞬間だった。
ビィーーーッ! ビィーーーッ! ビィーーーッ!
ビィーーーッ! ビィーーーッ! ビィーーーッ!
静寂な雪原に、不気味なほどの音量で、二人の携帯電話の着信音が同時に鳴り響いた。
「……?」
柊夜と絢芽は顔を見合わせ、繋いでいた手を離してそれぞれの端末を素早く取り出す。
液晶画面に表示された発信者の名を見た瞬間、二人の表情が同時に強張った。
宗星と日奈からだった。
「宗星か。……俺だ、今しがた里を出た──」
『おい、柊夜!! 聞こえるかッ、柊夜!!』
端末の向こうから聞こえてきたのは、
普段の冷静沈着な彼からは想像もつかないような、
怒号と激しい爆発音、そして刃がぶつかり合う凄惨な金属音だった。
「宗星? どうした、その音は」
『国都だ……ッ! 灰燼の奴ら、防衛線を完全にすり抜けて、
森に直接現れやがった……!!』
「な──」
同じ頃、絢芽の端末からも、日奈の悲痛な叫びが漏れ聞こえていた。
『絢芽ちゃん!? 大丈夫!? 国都が、国都が火の海なの!
大地さんの救護室にも敵の手が迫ってて──きゃあぁぁあッ!!』
「日奈!? 日奈、しっかりして!!」
絢芽が悲鳴のような声をあげる。背後に控えていた氷雨と鏡花も、
ただ事ではない気配を察して一歩前に進み出た。
柊夜は端末を耳に強く押し当て、地を這うような声で状況を問い詰める。
「状況を言え、宗星。九条冥はそこにいるのか」
『分からん、前線は新兵装を持った別働隊の物量でメチャクチャだ!
──いいか、よく聞け! 現在、療養中の磐木大地、
そして北海洲にいるお前たち四人──柊夜、絢芽、氷雨、鏡花を除いた、
継承者・守護官の全員が、今、迎撃中だ!』
背後で激しい炎の爆発音が響き、宗星の通信が酷いノイズで歪む。
『ぐっ……クソがッ! 敵の数が多すぎる……!
おい柊夜、お前らが戻るまで国都が持つか分からない!
──だが、絶対に死守してやる、早く来い!!!』
ツーーー、ツーーー……。
そこで通信は無残にも途切れた。
「宗星! 宗星……ッ!」
柊夜が呼びかけるが、もう応答はない。
「柊夜様……日奈ちゃんの方も、繋がらなくなっちゃいました……。
みんな、みんな国都で戦ってます……!」
絢芽の手が、恐怖と焦燥で小さく震える。
大地の命を狙い、さらに敷島の心臓部である国都を壊滅させようとする九条冥の、
これが真の総攻撃。
「氷雨、鏡花」 柊夜が振り返る。
「直ちに最寄りの駅へ走る。
ここから国都行きの特急列車を貸し切りにしろ、全速力で引き返すぞ」
「御意。限界以上の速度を出させましょう」
「大地様たちのところへは、絶対に指一本触れさせません……!」
氷雨と鏡花が即座に頷き、雪原を蹴って走り出す。
「絢芽、行くぞ」
「はい……ッ!」
新しき力『共鳴奇術』を手に入れた二人は、
大切な仲間たちが血を流して戦う戦場──崩壊寸前の国都へと向かうため、
白銀の雪山を全速力で駆け下りるのだった。
てえてえ、からの襲撃ね
もっといちゃつかせてもよかったか




