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継承者誓約譚  作者: 冬泉アオイ
《氷花の詩》第四章:敷島の戦い『間奏』
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第三話:滅びの夜に

「無駄な足掻きを。ここで果てよ、敷島の礎ども」

九条冥の冷酷な宣戦布告とともに、

数百の『反・術式兵装』が一斉に地と月の一行へと襲いかかった。

先ほどまでの有利が嘘のように、戦況は一瞬で絶望へと塗り替えられる。

「くっ、幻術が……っ! 数が多すぎて、展開が追いつかない……!」

千夜が必死に天弓を引き絞り、朔夜が鎖鎌を狂ったように振り回して敵を退けるが、

新兵装の暴力的な数の前には、

いかなる幻術も、いかなる連携も文字通り『力押し』で破られていく。

「がはっ……!?」

「厳!!」

前線で盾を構えていた厳の「万徹」が、数十人もの遮断持ちによる同時攻撃を受け、

ついにその防御を破られて後方へと吹き飛ばされた。血を吐いて倒れる守護官。

「これ以上は、全滅する……っ!」

朔夜もまた、千夜を庇って無数の刃を浴び、その場に膝を突く。

残されたのは、限界を迎えた最年少の千夜と、傷だらけの大地だけだった。

「あははは! 終わりだ、月の小娘!!」

遮断武器を掲げた三人の男が、無防備な千夜の頭上から刃を振り下ろす。

死の予感に、千夜は思わず目を瞑った──。

ドゴォォォォンッ!!!!!

「……だから、言っただろう」

凄まじい衝撃波とともに、千夜の前に立ち塞がったのは、

その背中に何十本もの刃を突き立てられた大地の姿だった。

彼は愛する大剣「千崩」を強引に振り抜き、

千夜を襲おうとした敵を一撃で消し飛ばしていた。

「だ、大地、さん……? なんで、どうして私なんかを……っ! 背中、血が……っ!」

「最年長が、年下を守るのは……当たり前、だろう……?」

大地はゴホリと大量の血を吐きながらも、決してその巨体を崩さない。

彼の強靭な精神力だけが、その肉体を動かしていた。

「千夜ちゃん……厳と朔夜を、頼む。

──零!! 繋がっているんだろう!? 今すぐ門を開け!!」

大地の魂の絶叫に応えるように、彼の足元の影がグニャリと広がり、

国都へと繋がる『黒い扉』が出現した。

「さあ、行け……! 早く行くんだ、千夜!!」

「嫌っ! 嫌よ大地さん! 一緒に帰るのよ!!」

涙を流して叫ぶ千夜。だが、大地はその大きな手で千夜の身体を優しく、

しかし抗えない力で突き飛ばし、厳と朔夜の元へと押し込んだ。

「厳、朔夜……千夜ちゃんを、頼んだぞ。……冷泉、あとは任せた……」

「大地様ぁぁぁーーーっ!!!」

千夜の悲痛な叫び声が響く中、大地は最後に残った全ての幻力を振り絞り、

大剣「千崩」を地面へと突き立てた。

──『我が命を礎に、不落の城壁をここに築かん』──!!!

彼の命そのものを代償にした絶対の防御術式。

筑前の地が爆発するようにせり上がり、

九条冥たちの追撃を完全に遮断する『絶壁』を作り出す。

その壁の向こう側へと、千夜たち三人の身体が零の影の門へと吸い込まれていくのを、

大地は薄れゆく意識の中で見届けた。

「……よかった。みんな、無事、だな……」

バキリ、と愛刀「千崩」が砕け散る。

それと同時に、磐木大地という偉大な地の一族の最期の光が、

筑前の冷たい夜風の中に、静かに、しかし誇り高く消えていくのだった。



病みかけた…

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