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継承者誓約譚  作者: 冬泉アオイ
《氷花の詩》第三章:戦いの火蓋は切られ、前哨戦が始まった。
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第三話:決着

未知の新兵装『反・術式兵装』に対応すべく、

その能力を一人で引き受ける氷の柊夜と、周囲の残党を掃討する女子組。

二手に分かれる形で、常盤原の決戦が始まった。

「氷雨、鏡花! 周囲の雑兵を女子組に近づけるな! 完全に分断しろ!」

「御意!」 「了解いたしました!」

主人の鋭い檄を背に受け、二人の守護官が同時に風を切る。

襲い来る灰燼の増援へと容赦なく斬り込み、戦場を綺麗にコントロールしていく。

「さて……」

柊夜は水縹色の瞳を極限まで細め、

未知の兵装──赤黒い不気味な光を刃に揺らめかせる大剣──を構える男と、

一対一で対峙した。

「氷の継承者、冷泉柊夜。その首、冥様への手土産にさせてもらおうか!」

男が獰猛に笑い、地を蹴った。

大柄な体躯からは想像もつかない恐るべき速度で肉薄する。

魔術を、奇術を、あらゆる幻力を遮断するその最凶の刃が、

柊夜の首筋を狙って容赦なく振り下ろされた。

ガキィィィィンッ──!!!

凄まじい火花が夜闇を赤く照らす。 だが、男の表情が驚愕に歪んだ。

柊夜は自らの愛刀「氷河」の一撃で、

その一撃をミリ単位の狂いもなく、完璧に受け止めていた。

「幻力を遮断する刃、か。確かに面白い玩具だな」

刀をぶつけ合わせ、凄まじい火花と金属音を散らせながら、

柊夜は不敵に、そしてどこまでも冷たく微笑む。

「だがな……術が使えないなら、剣技で叩き伏せるだけだ。俺を舐めるなよ」

「なっ──!?」

男が目を見開いた瞬間、柊夜の腕から放たれた圧倒的な剣圧と腕力が、

大剣の重さを強引に押し返し、男の体勢を完全に崩した。

術式に頼らずとも、冷泉柊夜という男の純粋な武の領域は、

すでに常人のそれを遥かに凌駕しているのだ。

一方その頃、絢芽、日奈、凪の三人は、まるで何度も戦場を共にしてきたかのような、

息の合った完璧な連携で残る賊を圧倒していた。

「凪ちゃん、左! 日奈ちゃんはそのまま真っ直ぐ突撃して!」

後方から戦況を見届け、絢芽が二人に的確な指示を出す。

「おっけー! 蜂の巣にしちゃえ!」

凪の「風刃」から放たれた無数の風の弾丸が、

逃げ惑う敵の足を確実に止め、そこへ日奈の白い光槍が鋭く閃く。

「はぁぁぁッ!!」

眩い光の刺突が空間を切り裂き、敵の陣形を木っ端微塵に崩壊させた。

「絢芽ちゃん、今です!」 「おっけー! 『咲き誇れ、我が絆』──」

絢芽が手にした扇「桜蘭」を鮮やかに翻し、美しい声を響かせる。

「『紫雲の花は咲き、散る。』──魔法『紫の篝火花』!」

彼女の扇から放たれたのは、今回は敵の遮断武器に触れることのない、

広範囲を制圧する無数の紫の鋼鉄の花弁。

それが残党の頭上から嵐のように降り注ぎ、

一網打尽にして戦闘不能へと追い込んでいく。

「ふぅ……なんとかなった、かな?」

絢芽が小さく息を整えながら、パチンと扇を閉じて柊夜の方を振り返る。

そこには、すでに静かに剣を収め、

地面に大の字で倒れて白目を剥いている新兵装の男を冷淡に見下ろす、

柊夜の姿があった。

「……相変わらず、容赦ないですね、柊夜様」

「生け捕りだ。こいつの武器の構造と、

その腐った頭の中から、情報を残さず吐き出させる」

柊夜はそう冷徹に告げたが、絢芽たちの元へと歩み寄ると、

その鋭かった水縹色の視線は少しだけ柔らかくなった。

常盤原の戦闘が、完全に終結した直後。

張り詰めていた緊張の糸がぷつりと切れたのか、

広範囲の神器を使用した反動で、日奈の身体がふっと前方に傾いた。

その華奢な体躯には、やはり神器の負荷は軽視できない。

「日奈──!」

凪が手を伸ばそうとした、その時。

地面に彼女の身体が触れるよりも遥かに速く、

まばゆい金色の閃光と共に駆け込んできた人影が、

日奈の身体を優しく、しかし確実にすくい上げていた。

「──ッ」



光の守護官、「朝比奈駆」。 彼は一寸の迷いもなく、

日奈の身体を完璧なタイミングでお姫様抱っこで受け止めると、

その逞しい腕にぎゅっと力を込めて彼女を抱きすくめた。

「お見事でした、日奈。……私の到着が遅れ、無茶をさせてしまい、申し訳ありません」

日奈は驚くこともなく、当然のように駆の広い胸に身体を預けたまま、

愛おしそうにふんわりと微笑んだ。

「いいえ。ありがとう、駆。あなたが必ず私の後ろにいてくれると、

信じていましたから」

「当然です。あなたのそのお身体は、俺が命に代えても守り抜きますよ」

至近距離で見つめ合い、息をするように自然に百点満点のイチャつきを見せる光の主従。

そのすぐ横で、一部始終を特等席で見せつけられた凪が、

顔を耳まで真っ赤にして自分の頭を抱え、絶叫した。

「ヒッ……!! ちょっと何よ、あの光主従!? ナチュラルに目がガチじゃないのよ!!

ここにも別のベクトルでタチの悪い誑しがいたわ!! ──疾風、何とか言ってよ!!」

すると、風の守護官である苦労人・疾風が、やれやれと肩をすくめて愛刀を引いた。

「……諦めろ、凪。あの二人の世界には、最初から誰も入れん。

それよりお前は、使った分の弾薬の回収だ。ほら、動け」

「っ、ちょ、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!?」

不満げに声をあげる凪の声が、静まり返った荒野に響く。

常盤原での襲撃戦は、こうしてひとまずの幕を閉じた。

しかし、本当の戦いはまだ始まったばかり。

常盤原の夜風は、どこまでも冷たく、

そして次の嵐を予感させるように激しく吹き荒れていた。



いっぱい出てきて困惑していたら設定資料を見るのをお勧めします

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