第29話 領都戦
夜明け前。
領都の西側では、攻城戦の準備が進められていた。
街道から少し外れた平地。
城壁から直接見下ろされにくい位置を選び、時限性前線基地の設置を始める。
《作成中》
登録済みの資源が消費される。
木材。
石材。
鉄材。
繊維。
青白い線が地面を走り、低い柵と天幕が少しずつ形を作っていく。
表示されていた作成時間が減り、やがて最後の数字が消えた。
《時限性前線基地 青白い線が地面を走り、低い柵と天幕が少しずつ形を作っていく。
表示されていた作稼働》
《補給範囲》
《回復可能》
《兵士再配置可能》
続いて補給箱を作る。
完成した箱の中は空だった。
労働ユニットが荷車から兵士用の糧食と薬草を下ろし、補給箱へ移していく。
城壁側には、三枚の移動式防壁。
その後方には、簡易投石機と破城槌。
どちらも必要な資源を消費し、作成時間を経て完成させた。
ミオは前線基地の中で、残っている資源と現物の備蓄を確認する。
攻城設備を作ったことで、木材と鉄材は大きく減った。
石材も投石に使う分を残してある。
糧食と薬草は荷車から運び込んだ分だけだ。
使えば減る。
補充には、後方からまた運ばなければならない。
「投石に使う石は?」
クロウが尋ねた。
「門の上にいる弓兵を下がらせる分はあります」
ミオは簡易投石機を見る。
「城壁を壊すには足りません。でも、破城槌を門へ近づける間なら使えます」
「それでいい」
先行して領都西側を確認していた農民兵が戻ってきた。
クロウの前で立ち止まる。
「西の正門、閉鎖」
農民兵が報告する。
「壁上に弓兵多数。左右の見張り台にも兵士あり。門脇に小門あり」
「騎士は?」
ミオが尋ねる。
「確認できず」
城壁の向こうまでは見えていない。
門を破った後、どれだけの兵が待っているのかは分からなかった。
「門の内側にも、防衛線があると考えた方がいいと思います」
ミオが言う。
「最初の前線基地には、物資を扱う労働ユニットを残します」
クロウがこちらを見る。
「門を抜いた後は?」
「中に前線基地を置ける場所を確保できれば、二つ目を作ります」
「兵士は?」
「軽装槍兵を先頭にします。負傷した兵士は後ろへ下げて、農民兵と入れ替えます」
「それでいい」
クロウはハルバードを肩へ担いだ。
「始めるぞ」
東の空が白み始める。
領都の鐘が鳴った。
城壁の上で、兵士たちが一斉に動き始めた。
◇ ◇ ◇
簡易投石機の腕が跳ね上がった。
最初の石が門上の木製足場へ当たる。
板が砕け、弓兵たちが身を伏せた。
二発目は、右側の見張り台の近くへ落ちた。
石壁そのものは崩れない。
それでも、弓兵は同じ位置に立ち続けられない。
「移動式防壁を前へ」
ミオが指示する。
二枚の防壁が進み始めた。
その陰へ軽装槍兵が入る。
破城槌は農民兵たちが押していた。
残る一枚の移動式防壁は、前線基地の近くへ残してある。
矢が降った。
鏃が防壁へ突き刺さる。
隙間を抜けた一本が、破城槌を押す農民兵の肩へ当たった。
身体が揺れる。
だが、横木から手を離さない。
ミオはその動きを見る。
まだ破城槌を押せる。
「そのまま前進してください」
農民兵は命令どおり前へ進んだ。
城壁の上から石が落とされる。
移動式防壁の一枚へ直撃した。
板が大きく傾き、それ以上前へ動かせなくなった。
後ろにいた軽装槍兵の腕へ破片が当たり、槍を持つ動きが鈍る。
「左の軽装槍兵を下げます」
ミオが指示する。
軽装槍兵は即座に後退した。
恐怖で逃げるのではない。
命じられた経路を通り、前線基地へ戻る。
労働ユニットが補給箱から薬草を取り出した。
ミオは、負傷した軽装槍兵に薬草を使わせる。
空いた位置には、後方にいた農民兵を出した。
前線では、領都側の兵士たちも声を掛け合っていた。
負傷者を壁の陰へ運ぶ。
矢を運ぶ。
崩れた足場を避け、新しい射撃位置へ移る。
隊長の声が飛ぶ。
「槌を門へ近づけるな!」
「石を西側へ集めろ!」
「弓兵は下がりすぎるな!」
その間も、破城槌は進む。
「投石、次」
ミオが指示した。
石が飛ぶ。
門の上へ集められていた資材が崩れた。
弓兵たちが散る。
その隙に、破城槌が大門へ到達した。
「打て」
クロウの声が響く。
農民兵たちが横木を引く。
補強された丸太が前へ振れた。
大門へ激突する。
重い音が響く。
門全体が揺れた。
一度。
二度。
三度。
矢は止まらない。
破城槌を押していた農民兵の一体が倒れた。
隣の農民兵が空いた位置へ入る。
後ろにいた一体も横木へ加わった。
再び、丸太が門を打つ。
「右の弓兵が前線基地を狙っています」
ミオが言った。
見張り台の弓兵が、門前ではなく後方へ向きを変えている。
クロウが見張り台を見る。
「防壁を回せ」
「はい」
前線基地の近くへ残していた移動式防壁を動かす。
労働ユニットと負傷兵を隠す位置へ移した。
矢が板へ突き刺さる。
その間に、簡易投石機の向きも右側へ変える。
石が放たれた。
見張り台の手前へ落ちる。
弓兵たちが再び身を伏せた。
その時。
門脇の小門が開いた。
盾を構えた騎士たちが飛び出してくる。
破城槌を止めるための部隊だった。
「右から騎士です」
ミオが告げた。
クロウの声が、わずかに弾む。
「やっと出てきたな」
黒い鎧が走った。
先頭の騎士が大盾を構える。
クロウはハルバードの鉤を盾の上端へ引っかけた。
強く引く。
盾の向きが崩れた。
開いた側面へ、斧刃が振るわれる。
騎士が倒れた。
二人目が槍を突き出す。
クロウは柄で穂先を弾き上げる。
そのまま石突側を騎士の胸へ叩き込んだ。
身体が後ろへよろめく。
続いた軽装槍兵の槍が届いた。
別の騎士が横から剣を振るう。
刃が黒い肩へ当たり、火花が散った。
クロウは近い間合いのままハルバードを短く持つ。
鉤を騎士の脚へ掛けた。
引き倒す。
倒れた騎士へ興味を向けず、次へ進む。
軽装槍兵も追いついた。
領都側の騎士たちは、破城槌まで届かなかった。
クロウは門へ兜を向ける。
「続けろ」
破城槌が再び動く。
丸太が大門へ叩きつけられた。
木材が裂ける。
金具が歪む。
さらに一撃。
門の中央へ隙間が開いた。
もう一度。
大門が内側へ傾く。
やがて、大きな音とともに道が開いた。
「軽装槍兵、前へ」
ミオが兵士を動かす。
「農民兵は破城槌を離れて、左右を警戒してください」
クロウが最初に門をくぐった。
レイヴンの兵士たちが続いた。
◇ ◇ ◇
門の内側は狭かった。
左右には高い石壁。
正面には、荷車と木材を重ねた二つ目の障害物がある。
その奥から槍が突き出される。
壁上からも矢が降った。
領都側が用意していた、城門内部の防衛線だった。
「移動式防壁を中へ」
前方へ出した二枚のうち、まだ動かせる一枚を門内へ進める。
農民兵が押す。
軽装槍兵はその陰へ入った。
矢が板へ刺さる。
「正面は俺が開ける」
クロウが防壁の陰から飛び出した。
複数の槍が向けられる。
一本を鎧で受ける。
もう一本をハルバードの柄で押しのける。
そのまま斧刃を荷車の固定部分へ振り下ろした。
木材が裂ける。
縄が切れる。
荷車が傾いた。
「押せ」
農民兵が防壁ごと前へ進む。
傾いた荷車が押される。
隙間が広がった。
クロウがそこへ入り込む。
ハルバードの穂先が正面の兵士へ伸びた。
一人が倒れる。
斧刃を返す。
次の兵士が下がった。
狭い場所では、一度に前へ出られる人数が少ない。
領都側は兵数を活かせない。
「第二広場まで下がれ!」
隊長が叫んだ。
兵士たちが後退する。
負傷者を支える者。
倒れた仲間の盾を拾う者。
先に逃げる者。
動きが乱れる。
レイヴンの兵士たちは、その隙間へ進んだ。
二つ目の防衛線が崩れる。
その先に、城門内の広場が開けていた。
ミオも門を抜ける。
広さを確認する。
平らな場所。
周囲には建物。
西門との間には、兵と荷物を通せる道がある。
「ここなら設置できます」
前線基地の設置条件を確認する。
「二つ目を作ります」
クロウが操作を確定する。
登録済みの資源が消費された。
《作成中》
レイヴンの兵士たちが広場への入口を守る。
その間に、作成時間が減っていく。
領都側の兵士が建物の間から矢を放つ。
軽装槍兵と農民兵が前へ出て、広場へ近づかせない。
やがて、低い柵と天幕が組み上がった。
《時限性前線基地 稼働》
《補給範囲》
《回復可能》
《兵士再配置可能》
続いて、空の補給箱を作る。
西門の外にあった最初の前線基地から、労働ユニットが荷車で糧食と薬草を運んできた。
新しい補給箱へ移していく。
「負傷した兵士をこちらへ下げます」
ミオが指示を出す。
傷ついた軽装槍兵と農民兵が新しい前線基地へ戻る。
代わりに、西門の外で待機していた兵士が領都内へ入ってきた。
兵と物資を前へ送る場所が、城壁の内側へ移った。
◇ ◇ ◇
領都側は、大通りの手前に新しい防衛線を作っていた。
石造りの建物の間へ盾兵が並ぶ。
その後ろには槍兵。
屋根や窓には弓兵。
中央に、一人の男が立っていた。
「避難はどこまで進んだ」
男が隣の騎士へ尋ねる。
「東門から、最後の荷車が出ました」
「歩ける者も?」
「はい」
「なら、残る兵も東へ下げろ。最後の部隊が出たら門を閉じろ」
「領主様もお下がりください」
周囲の兵士が、男を領主と呼んでいる。
領主は首を横へ振った。
「ここで時間を稼ぐ」
「ですが――」
「館を守るためではない」
領主は兵士たちを見る。
「逃げた者が、東の道を進む時間が必要だ」
剣を抜いた。
「降伏する者を責めるな。逃げる者も追うな」
盾を持った兵士の一人が唇を噛む。
「領主様を残して逃げるわけには」
「命令だ」
領主は言った。
「生きて、逃げた者を守れ」
保身のために残っているのではない。
領都で暮らしていた者を逃がすため、自分が最後の防衛線へ立っている。
ミオにも、それは分かった。
カナタが信じていた領主。
街道や村の暮らしを良くしようとしていた人。
逃げる住民を守るため、自分はここに残った。
それでも。
ギルド《レイヴン》の進軍を止める敵だった。
「クロウさん」
ミオが言う。
「あの人が領主です」
「ああ」
クロウはハルバードを構え直した。
「領主か」
領主が剣と盾を構える。
「黒い鎧の者!」
クロウは歩き続ける。
「ここは人が暮らす街だ! お前たちの資源ではない!」
返事はない。
盾兵が一斉に前へ出る。
クロウのハルバードが振るわれた。
斧刃を受けた盾が大きく沈む。
後ろの兵士が支える。
横から槍が伸びた。
クロウは柄を回し、穂先を外へ払う。
ハルバードの鉤が盾の側面へ掛かった。
引く。
盾兵の列に隙間ができる。
そこへレイヴンの軽装槍兵が槍を突き入れた。
防衛線が崩れる。
領主が自ら前へ出た。
剣を振り下ろす。
クロウはハルバードの柄で受ける。
領主がすぐに盾を押し出した。
クロウは半歩だけ退き、盾を空振りさせる。
次の瞬間。
ハルバードの穂先が前へ伸びた。
領主は壊れかけた盾で軌道を逸らす。
剣を横へ振った。
黒い鎧へ刃が当たる。
金属音が響く。
クロウの動きは止まらない。
ハルバードを引き戻す。
斧刃が盾へ当たった。
木材が割れる。
領主は壊れた盾を捨てた。
両手で剣を握る。
「東へ行け!」
後ろの騎士へ叫んだ。
「ここは私が止める!」
領主が踏み込む。
剣が黒い兜へ向かう。
クロウは身体を横へずらした。
刃が通り過ぎる。
ハルバードの柄が領主の剣を押さえる。
斧刃が短く返った。
領主の身体が止まる。
そのまま、石畳へ倒れた。
光にはならない。
身体はその場へ残った。
「領主様!」
兵士たちの声が上がる。
クロウは倒れた領主を振り返らない。
残る兵士へ兜を向ける。
領主を倒した。
それだけだった。
指揮を失った防衛線が乱れる。
武器を捨てる者。
東へ走る者。
領主の近くへ残ろうとする騎士。
クロウは逃げる者を追わせなかった。
「門と倉庫を取れ」
レイヴンの兵士たちが動く。
領主の周囲へ残った騎士だけが、最後まで剣を下ろさなかった。
◇ ◇ ◇
領主館へ続く大通りに、カナタが立っていた。
書記の外套は着ていない。
軽い鎧。
左手には小さな盾。
右手には細身の剣。
その後ろには、残った騎士と兵士がいる。
数は少なかった。
多くは避難する住民を守るため、東側へ向かったのだろう。
カナタは広場の方を見る。
領主の姿を探した。
何も尋ねなかった。
戻ってこない理由を理解したようだった。
一度だけ目を閉じる。
それから、クロウへ向き直った。
「逃げなかったか」
クロウが言う。
「あなたを倒せば、まだ進軍を止められます」
カナタは剣を構えた。
「ギルドマスターを倒せば終わると思ってるのか」
「少なくとも、今のレイヴンから最大の攻撃力が失われる」
カナタの視線がミオへ向いた。
「ミオさんだけでは、あなたと同じ戦い方はできない」
ミオは否定しなかった。
兵士。
拠点。
補給。
資源。
それらを管理することはできる。
だが、前線で敵を倒す役割はクロウだった。
「分かりやすいな」
クロウの声がわずかに軽くなる。
カナタはプレイヤーだ。
どのような戦い方をするのか。
クロウにとっては、それを確かめる価値がある。
「兵士を下げろ」
レイヴンの兵士たちが、大通りの左右へ分かれる。
「カナタは俺がやる」
クロウはハルバードを構えた。
「レンたちよりは動けそうだ」
カナタの表情がわずかに強張る。
「手加減を期待するつもりはありません」
「する必要もない」
カナタが先に動いた。
ハルバードの間合いへ入る直前で、進行方向を変える。
正面ではない。
クロウの左側へ回る。
斧刃が振られた。
カナタは小さな盾を斜めに当てる。
受け止めるのではなく、刃の向きを外へ流した。
そのまま柄の内側へ入ろうとする。
細身の剣が鎧の脇へ伸びる。
クロウは半歩だけ位置を変えた。
剣が黒い鎧の横を通る。
斧刃を返せば、カナタを倒せる距離だった。
それでも、クロウは振らない。
カナタが次に何をするのかを見ている。
カナタはすぐに距離を取った。
追撃を欲張らない。
ハルバードが戻る前に、届かない位置まで下がる。
再び盾を上げる。
力も速度も、クロウには及ばない。
それでも、武器の長さと間合いを考えて動いていた。
クロウが穂先を向ける。
カナタは横へ回る。
盾で軌道をずらす。
剣を兜の隙間へ伸ばした。
クロウは頭をわずかに下げる。
刃が兜の上を通過した。
ハルバードを短く持ち替える。
斧刃を下から返す。
カナタは盾を間へ入れた。
盾の縁が割れる。
身体が横へ流される。
それでも転ばない。
片足で踏みとどまった。
クロウは追わない。
「まだあるだろ」
カナタは壊れかけた盾を捨てた。
剣を構えたまま、空いた左手を腰へ伸ばす。
短い刃を抜く。
正面の剣を見せながら、クロウの首元へ短剣を突き出した。
クロウはハルバードの柄で剣を止める。
身体をわずかに引く。
短剣の先が空を切った。
カナタは短剣を手放す。
落としたのではない。
投げた。
刃が兜へ向かう。
クロウは頭を傾けるだけで避ける。
短剣が石畳を滑った。
カナタは投擲と同時に前へ出ていた。
最後の突進。
剣を両手で握り、鎧の継ぎ目へ向ける。
クロウはその場から動かない。
盾。
間合いの内側への侵入。
隠していた短剣。
投擲に重ねた突進。
カナタが用意していた手は、全て出た。
クロウのハルバードが動く。
柄が剣を外へ流した。
カナタの身体が開く。
今度は待たない。
斧刃が短い軌道で返された。
カナタの動きが止まる。
剣が石畳へ落ちた。
「届かなかったか」
カナタが小さく言う。
「最初からな」
クロウが答えた。
カナタの輪郭が白く光り始める。
身体と装備が、細かな光の粒子へ変わっていく。
「ミオさん」
消える直前まで、カナタはミオを見ていた。
「勝った側が、正しいわけではありません」
ミオは、その意味を理解できた。
クロウが勝ち続けても。
プレイヤーが光になって消えても。
それだけで、人を人として扱わないことが正しくなるわけではない。
「正しさだけでは、何も守れません」
ミオは答えた。
正しさだけでは、納屋から出られなかった。
山賊へ差し出される自分を止められなかった。
今、領都も守り切れなかった。
「私は、自分で選びました」
内政担当になることも。
ギルド《レイヴン》に残ることも。
クロウが戦うための場所を整えることも。
カナタは、それ以上何も言わなかった。
白い粒子が大通りへ広がる。
風に流され、消えていった。
カナタも、レンとサヨと同じように何も残さなかった。
クロウは光を見送らない。
ハルバードの状態を確かめる。
その時。
先へ確認に出していた農民兵が戻ってきた。
「領主館前。武装した兵士あり」
短く報告する。
「倉庫前にも、少数」
ミオはクロウを見る。
「領主館と倉庫に、まだ兵士が残っています」
「取るぞ」
「はい」
レイヴンの兵士たちが大通りへ集まる。
戦闘開始時より数は減っていた。
傷を負った兵士もいる。
それでも、命令を受ければ動く。
負傷した兵士は前線基地へ下げる。
現物で運び込んだ薬草を使う。
後方から別の兵士を前へ送る。
隊列を整える。
領都側の兵士たちは、壊れた盾や武器を地面へ置き始めていた。
領主の身体のそばから動けない者。
東へ逃げた者を気にする者。
泣いている者。
ミオは一人ずつの表情を追わなかった。
領都は大きい。
兵士として使える者。
労働へ回す者。
厨房で働かせる者。
周辺の採取場所へ送る者。
必要になる役割は多い。
だが、それを決めるのは戦闘が終わってからでよい。
今は、残る抵抗を終わらせる。
クロウが前へ進む。
レイヴンの兵士が続く。
西の正門。
城門内の広場。
大通り。
領主館。
残る抵抗を終わらせ、領都の中心を確保するために進んでいく。
領主館の前へ残っていた兵士たちは、クロウの姿を見ると武器を置いた。
倉庫を守っていた者たちも、それに続く。
抵抗する者はいなくなった。
ミオの視界へ、短い表示が浮かぶ。
《領都》
《制圧可能》
まだ、ギルド《レイヴン》の拠点ではない。
だが、領都を守る組織的な抵抗は終わっていた。
クロウは領主館の前でハルバードを地面へ立てる。
ミオは、その隣に立った。
領都戦は、終わった。




