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第11話 反抗リスク

翌朝、ミオは倉庫の入口に立っていた。


今のミオに任されているのは、搬入された物資の分類と、置き場所を住民へ伝えることだけだった。


誰をユニット化するか。


作ったユニットをどこへ配置するか。


そうした判断は、まだクロウが行っている。


クロウは倉庫の入口へ農民兵を一体残し、西側の柵を確認しに行った。


呼べば来られる距離にいる。


それでも、目の前にクロウがいない状態で住民へ指示を出すのは初めてだった。


一人の男が、運んできた袋を薬草の棚へ置こうとした。


その瞬間、ミオの視界に小さな警告表示が浮かんだ。


《分類不一致》


袋に入っているのは、川で採れた魚と木の実だ。


薬草ではない。


「それは糧食です」


ミオが声をかけると、男の手が止まった。


「入口の右側へ置いてください」


男は答えなかった。


袋を抱えたまま、ミオを睨んでいる。


倉庫の入口には、クロウが残した農民兵が立っていた。


男は農民兵へ目を向けた。


小さく舌打ちしてから、袋を運び直す。


男が袋を正しい棚へ置くと、警告表示が消えた。


代わりに、拠点情報がわずかに変化する。


《糧食 増加》


「次は、その木箱です」


ミオは入口に積まれた荷物を指した。


木箱には、古い工具や壊れた金具が入っている。


「鉄材の棚へお願いします」


別の男が木箱を持ち上げた。


重いのか、男は顔をしかめながら倉庫の奥へ運んでいく。


ミオは管理画面に表示される分類を読み、置き場所を伝えた。


それだけなら、自分にもできた。


指示を無視する者はいる。


聞こえないふりをする者もいる。


だが、入口に農民兵が立っていれば、最後には従った。


ミオは倉庫の奥を見渡した。


木材。


石材。


鉄材。


糧食。


薬草。


繊維。


以前は、枝や石、袋や古布が雑然と積まれているようにしか見えなかった。


今は、何に使える物なのかが先に分かる。


分類ごとの量は、まだ多くない。


それでも、採取ユニットが戻るたびに少しずつ増えていた。


「そこは違います」


古布の束を持った女が足を止めた。


「それは繊維です」


女はミオを見た。


「布くらい分かっている」


「その棚は薬草です」


「少しくらい同じ場所に置いても困らないでしょう」


「管理画面に正しく反映されません」


「画面?」


女の口元が歪んだ。


「また、あの男の言う妙なものか」


ミオは答えなかった。


クロウの言葉を説明しても、受け入れられるとは思えない。


「繊維の棚へ置いてください」


女は古布を抱えたまま動かなかった。


倉庫の入口に立つ農民兵が、一歩前へ出た。


女は顔を強張らせる。


「分かったわよ」


女は吐き捨てるように言い、古布の束を置き直した。


《分類不一致》


警告表示が消えた。


その代わり、視界の端に淡い赤色の文字が浮かぶ。


《反抗リスク 上昇》


ミオは瞬きをした。


表示は消えない。


倉庫の入口近くに集まっている住民たちの上へ、赤い文字が重なっている。


男が二人。


先ほどの女が一人。


三人を囲むように、淡い赤色の枠が浮かんでいた。


山賊に重なっていた敵性表示ほど濃くはない。


「反抗リスク……」


ミオは小さく読み上げた。


三人のうち、一人の男が聞きつける。


「何を見ている」


ミオは答えず、西側の柵へ目を向けた。


クロウは労働ユニットを連れ、補強された場所を確認している。


呼べば来てくれる。


けれど、今はまだ何も起きていない。


三人が不満そうにしているだけだ。


それだけでクロウを呼べば、何をされるか分からない。


「次の荷物をお願いします」


ミオは作業を続けることにした。


男の一人が木箱へ手を伸ばす。


だが、男は木箱を持ち上げようとしなかった。


「よそ者の命令で、どうして俺たちが働かないといけない」


低い声だった。


倉庫にいた者たちの手が止まる。


「クロウさんから、分類を見るように言われています」


「聞いているのは、そんなことじゃない」


男がミオへ近づいた。


農民兵が動く。


槍を持ったまま、男とミオの間へ入ろうとした。


「そこで待っていてください」


ミオは農民兵を止めた。


自分で対応できると思ったわけではない。


ただ、まだ何もしていない相手へ槍を向ければ、余計に反発される気がした。


農民兵はその場で止まった。


男はそれを見て、薄く笑う。


「兵士に命令するようになったか」


「荷物を正しい場所に置いてほしいだけです」


「この村の物だ」


もう一人の男も近づいてきた。


「俺たちが集め、俺たちが使っていた物だ。どうして、よそから来た女に置き場所まで決められる」


「今は拠点の物です」


口にした瞬間、三人の表情が変わった。


それは、クロウが何度も使っていた言葉だ。


村の物ではない。


個人の物でもない。


拠点の資源。


ミオは表示を見て、それを管理しようとしている。


「拠点だと?」


男の声が大きくなる。


「勝手に村を奪っただけだろう!」


「今は、エルク拠点です」


「だから何だ!」


男が木箱を蹴った。


中に入っていた金属片が床へ散らばる。


甲高い音が倉庫の中へ響いた。


《分類不一致》


《搬入停止》


複数の表示が同時に浮かんだ。


ミオは床へ落ちた鉄材を見る。


「拾ってください」


「嫌だと言ったら?」


「作業が止まります」


「止めているんだ」


男はミオを睨みつけた。


「俺たちは、あの黒い男のために働くつもりはない」


「働かなければ、食料も建物も増えません」


「それがどうした」


「食事は毎日受け取っていますよね」


男の表情が固まった。


ミオは続けた。


「水も飲めます。宿舎には寝床があります。以前より安全になっています」


「黙れ」


「ここにいる人には、食事も水も寝床も与えられています」


「黙れ!」


男が怒鳴った。


ミオの肩が震える。


以前なら、その声だけで謝っていた。


倉庫から追い出され、納屋へ戻っていた。


けれど、今はミオが分類を任されている。


置き場所も、在庫も、ミオの方が見えている。


「間違ったことは言っていません」


ミオは男を見返した。


三人を囲む表示が濃くなる。


《反抗リスク 高》


見たことのない強さで点滅していた。


「間違っていない?」


男が一歩近づいた。


「お前が来てから、全部おかしくなった」


「私が来たからではありません」


「お前のせいだ!」


女が声を上げる。


「黒い男は、お前を連れて村へ入った!」


「私を山賊へ引き渡したのは、あなたたちです」


ミオの声は、自分でも驚くほどはっきりしていた。


「それでよかったんだ!」


男の言葉が、倉庫の中へ響いた。


ミオの呼吸が止まる。


「お前がそのまま連れていかれていれば、それで終わっていた!」


「山賊は、村を見逃すとは言っていませんでした」


「それでも、今よりはましだった!」


もう一人の男も続ける。


「あの黒い男が来なければ、お前は山賊に連れていかれていた! そうすれば、村は奪われなかった!」


視界が狭くなる。


聞いたことのある言葉だった。


村の者ではない。


いなくなっても問題ない。


ミオを山賊へ引き渡した朝から、何も変わっていない。


食事を受け取り。


安全な宿舎で眠り。


補強された柵に守られながら。


それでも、この人たちは、ミオがそのまま山賊に連れていかれればよかったと言う。


「もう一度、同じことをするんですか」


ミオが尋ねた。


「何?」


「あの時と同じように、また私を山賊へ引き渡すんですか」


誰もすぐには答えなかった。


だが、否定もしない。


先頭の男が、ミオの肩へ手を伸ばす。


「お前がいなくなれば――」


農民兵が動いた。


男の腕をつかもうとする。


その直前、女が古布の束を農民兵の顔へ投げつけた。


視界を遮られ、農民兵の動きが一瞬止まる。


もう一人の男が、近くにあった木の棒を振り下ろした。


木の棒が兜へ当たり、鈍い音が響く。


農民兵の身体が傾いた。


「走れ!」


誰かが叫ぶ。


先頭の男がミオの外套をつかんだ。


強く引かれ、ミオの身体が前へ傾く。


「離してください!」


ミオが振りほどこうとした瞬間、もう一人の男が腹へ拳を打ち込んだ。


外套の下で、淡い光が走る。


衝撃が身体へ届く前に、硬い膜のようなものが受け止めた。


痛みはなかった。


男は驚いたように、自分の拳を見る。


「何だ、この服は」


女が腰から短い刃物を取り出した。


倉庫で袋を切るための小刀だ。


女は小刀の切っ先を、ミオの胸元へ突き出した。


避けられない。


ミオは目を閉じた。


金属が何かへ弾かれる音がした。


だが、身体には何も届かない。


ミオが目を開ける。


外套の表面を淡い光が覆い、小刀の先端を止めていた。


布には破れも傷もない。


クロウが渡した装備。


多少の攻撃なら防ぐ。


そう言っていた。


本当に、ミオを守った。


男がもう一度、外套を引こうとする。


その手が途中で止まった。


顔にかかった古布を払い落とした農民兵が、男の腕を後ろへ捻り上げている。


木箱を蹴った音と怒鳴り声は、倉庫の外まで届いていた。


広場を巡回していた農民兵が、入口へ駆け込んでくる。


兵舎の近くにいた軽装槍兵も、その後へ続いた。


もう一人の男が木の棒を振り上げる。


駆け込んだ農民兵が槍の柄で手元を押さえ、木の棒を落とさせた。


女は逃げようとしたが、入口を軽装槍兵に塞がれる。


長槍の穂先が下がった。


女は足を止めた。


数秒もかからなかった。


三人は床へ膝をつかされ、兵士たちに腕を押さえられていた。


自由に動ける者は一人もいない。


ミオは木箱へ手をついた。


呼吸がうまく整わない。


けれど、腹にも胸元にも痛みはなかった。


血も出ていない。


外套も破れていない。


「ミオ」


倉庫の外から、クロウの声が聞こえた。


黒い鎧が入口へ現れる。


クロウはハルバードを持ったまま、中へ入ってきた。


拘束された三人ではなく、最初にミオを見る。


「怪我は?」


「分かりません。殴られて、小刀も……」


「当たった場所は?」


ミオは腹部と、小刀が触れた胸元を示した。


クロウは外套の表面へ手を触れ、装備状態を確認する。


続けて、ミオの身体に異常表示が出ていないか確かめた。


「装備損傷なし。身体にも異常表示はない」


ミオは息を吐いた。


黒い兜が近くにある。


ハルバードの斧刃も見える。


以前なら、それだけで身体が強張った。


今は違った。


クロウがその刃をミオへ向けることはない。


クロウは最初から、村人とミオを別に扱っている。


考えるより先に、身体が理解していた。


クロウの近くへ行けば大丈夫だと思った。


怖いのは黒い鎧ではない。


床に押さえられている三人だった。


「管理画面に表示は出てたか?」


クロウが尋ねた。


「反抗リスクと出ていました」


「段階は?」


「最初は上昇でした。途中から、高になって……」


「高になった時点で兵を動かしていい」


クロウの声は、ミオを責めるものではなかった。


「まだ何もされていなかったので」


「攻撃されてからでは遅い」


クロウは拘束された三人へ兜を向けた。


「警告だけで終わることもある。だが、高まで上がったら兵を動かせ」


三人のうち、先頭の男が顔を上げた。


「俺たちを解放しろ!」


クロウは反応しない。


「この女が村を奪わせたんだ!」


「こいつさえいなければ、俺たちは――」


軽装槍兵が男の肩を押さえた。


床へ戻されても、男はミオを睨み続ける。


その目には後悔がなかった。


小刀を向けた女も同じだった。


失敗したことを恐れているだけで、ミオを傷つけようとしたことを悪いとは思っていない。


「三人とも、反抗状態だな」


クロウが言った。


ミオの視界にも赤い表示が浮かんでいる。


《反抗リスク 高》


兵士に押さえられている今も、表示は消えていなかった。


クロウは倉庫の外へ兜を向けた。


騒ぎを聞きつけた住民たちが、入口から離れた場所に集まっている。


「反抗リスクをなくすなら、残っている住民も全員ユニット化するか?」


ミオはクロウを見た。


「全員を、ですか」


「ああ」


クロウは当然のように答えた。


「今なら資源も増えてる。必要になってから役割を変えるコストも払える」


黒い兜が、門と兵舎へ向く。


「配分を間違えて兵が足りなくなっても、最悪、拠点防衛は俺一人で足りる」


全員をユニット化する。


そうすれば、反抗する者はいなくなる。


ミオへ怒鳴る者も、ミオがそのまま山賊に連れていかれればよかったと言う者もいなくなる。


誰が次に襲ってくるのか、警戒する必要もなくなる。


倉庫の外にいる住民たちも、クロウの言葉を聞いていた。


怯えた顔で、ミオと黒い鎧を見ている。


あの中には、ミオが山賊へ引き渡されるのを黙って見ていた者もいる。


助けを求めても、目を逸らした者もいる。


それでも、今ここでミオを襲ったのは三人だけだった。


何もしていない者まで、自分の判断で同じ姿へ変える。


そこまでは、まだ選べなかった。


「……全員は、まだできません」


ミオは答えた。


クロウは理由を尋ねなかった。


「そうか。なら、この三人だけだ」


クロウは拘束されている三人へ兜を向けた。


「処理するか、労働ユニットにする。ミオが決めろ」


三人の顔が変わった。


先ほどまで怒鳴っていた男が、初めて怯えを見せる。


「待て」


クロウは答えなかった。


男はミオを見る。


「殺させる気か」


ミオは何も言えなかった。


「俺たちは、村を取り戻そうとしただけだ」


「私を刺そうとしました」


「脅しただけだ!」


「小刀を向けました」


「本気じゃなかった!」


女も声を上げる。


「あなたが偉そうに命令するから!」


「だから、私を傷つけてもいいと思ったんですか」


「お前がここに来なければ――」


また同じ言葉だった。


自分がこの村へ来なければ。


自分がそのまま山賊に連れていかれていれば。


自分がいなくなれば。


この人たちは、何度でもそう言う。


解放すれば、また襲ってくるかもしれない。


今度は装備で守られていない場所を狙うかもしれない。


クロウがいない時を選ぶかもしれない。


ユニット化されていなければ、自分で考え、自分で決める。


そして、ミオを傷つけることも選べる。


「殺す必要はありません」


ミオは言った。


三人の顔に、わずかな安堵が浮かぶ。


だが、ミオは続けた。


「でも、このままにはできません」


男の表情が止まった。


「何を……」


「この三人は、労働ユニットにします」


口にした瞬間、胸が強く鳴った。


自分が何を選んだのかは分かっている。


この三人は、もう家族へ返事をしなくなる。


恐怖も、怒りも、迷いも失う。


命じられた仕事だけを続ける。


「やめろ!」


男が暴れた。


兵士に押さえられ、立ち上がることはできない。


「殺さないと言っただろ!」


「殺しません」


ミオは男を見た。


「でも、また私を傷つけようとします」


「しない!」


「私がそのまま山賊に連れていかれればよかったと言いました」


「それは――」


「今も、私がいなければと言いました」


男は答えられなかった。


ミオはクロウへ向き直る。


「お願いします」


「ミオがやれ」


思っていなかった言葉に、ミオは目を見開いた。


「私が、ですか」


「ああ。ミオにも、この拠点の基本操作権限はある」


クロウが三人へ手を向ける。


「対象は俺が指定する。役割を選んで確定しろ」


三人の足元へ淡い枠が浮かんだ。


同時に、ミオの視界へ新しい表示が現れる。


《ユニット化対象 三人》


《役割 労働ユニット》


その下に、これまで見るだけだった選択肢が浮かんでいた。


《確定》


ミオは右手を上げた。


指先が震えている。


三人の声が重なった。


「待ってくれ!」


「何でもする!」


「もう逆らわない!」


先ほどまで、ミオがいなくなればいいと言っていた声だった。


小刀を向けた女も泣いている。


それでも、解放すればまた襲われるかもしれない。


今度は装備で守られていない場所を狙うかもしれない。


クロウがいない時を選ぶかもしれない。


ミオは《確定》へ指を近づけた。


「労働ユニットで、確定します」


指先が表示へ触れる。


白い光が三人を包んだ。


叫び声が消える。


服の上へ作業用の上着が重なり、腰に工具袋が現れた。


男たちの手には、それぞれ木槌と鋸が現れる。


女の手には、釘や金具を入れた箱が現れた。


光が収まると、三体は静かに膝をついていた。


ミオは震える手を下ろした。


クロウが三体へ命じる。


「立て」


三体が同時に立ち上がった。


先ほどまでの怒りはない。


ミオを睨む個体もいなかった。


「床の鉄材を回収。分類して棚へ入れろ」


三体の労働ユニットが動き出す。


一体が倒れた木箱を起こした。


一体が金属片を拾い集める。


残る一体は壊れた部分を確認し、工具を取り出した。


三体はミオのすぐそばを通っても、視線を向けない。


小刀を向けていた一体も、床へ落ちた刃物を拾った。


武器としてではない。


鉄材へ分類する物として扱っていた。


《反抗リスク 高》


赤い表示が薄くなる。


やがて完全に消えた。


代わりに、青白い文字が浮かぶ。


《労働ユニット 三体》


倉庫の中が静かになった。


木箱を直す音。


金属片を拾う音。


棚へ荷物を戻す音だけが続く。


「もう、襲ってこないんですか」


ミオが小さく尋ねた。


「労働ユニットは命令に逆らわない」


クロウは当然のように答えた。


「反抗リスクも出ない」


ミオは三体を見た。


確かに、表示は消えている。


怒鳴らない。


恨むような目も向けない。


今の三体が、先ほどより安全なことだけは分かった。


その事実に安心した自分を、否定できなかった。


「ミオ」


クロウが呼ぶ。


「はい」


「これからは、反抗リスクが出たら、ミオの判断で兵を動かしていい」


「私の判断で?」


「ああ。攻撃されるまで待つ必要はない」


以前なら、兵士を動かすことにためらった。


誰かを脅して従わせているように感じたからだ。


だが、何も起きていないと思って待った結果、襲われた。


布装備がなければ、小刀は身体へ届いていたかもしれない。


「分かりました」


ミオは答えた。


「次は、上昇の時点で兵を近くへ動かします」


クロウは一度頷いた。


「その方がいい」


クロウはそれ以上何も言わず、倉庫の状態確認へ戻った。


ミオは自分の外套へ触れる。


拳も、小刀も、この布を通らなかった。


ミオが視線を上げる。


クロウの背中がある。


ハルバードも見える。


その刃が自分へ向く光景は、もう想像できなかった。


代わりに、ミオは倉庫の外にいる住民たちを見る。


まだユニット化されていない住民たち。


その中に、また自分を襲う者がいるかもしれない。


ミオの視界に、薄い表示が浮かぶ。


《未ユニット化住民》


以前は、人をそのような表示で見ることが怖かった。


今は、別の意味で目を離せなかった。


ユニット化されていないからこそ、何をするか分からない。


ミオは倉庫の入口に立つ農民兵へ言った。


「中へ来てください」


農民兵はすぐに移動し、ミオの隣で足を止めた。


槍を持った農民兵がそばにいると、呼吸が少し楽になった。


三体の労働ユニットは黙って作業を続けている。


赤い警告は、もうどこにも出ていなかった。

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