「タミネット」の夕食
その日の夜、ソムナリアは宿舎の受付でベルンハルトと合流した。
「タミネットでいいよね?」
ベルンハルトが尋ねると、ソムナリアがうなずいた。
「うん。昔はよく行ってたんだ」
「そっか。じゃあ行こう」
ソムナリアの案内でしばらく歩くと、タミネットに着いた。
店内に入るととても明るい。香辛料の香りも感じられる。なかでもオリーブ油の香りは非常に強い。
二人は、給仕に案内されて、テーブル席に座った。
「ムラエネはあるみたいね」
ソムナリアは口元を緩めた。
「うん。ムラエネの何にする?」
ベルンハルトが尋ねた。
「ムラエネの……どれにしよう……香草蒸しがいいかな」
「じゃあ注文するね」
ベルンハルトが給仕を呼んだ。
「ムラエネの香草蒸しと卵とチーズのパテッラ焼き。それから淡色ぶどう酒を二人分」
すぐに淡色ぶどう酒を称えたカップが二つ運ばれてきた。
ベルンハルトがカップを手に取った。
「今日はお疲れさま。乾杯!」
「かんぱい……」
ソムナリアがカップを前に差し出すと、ベルンハルトがカップをかすかに当てた。
「あれ、あまり飲まない?」
ベルンハルトが尋ねた。
「ムラエネの香草蒸しが来るまで待つの」
「この店に慣れてるんだね」
ベルンハルトはカップの半分まで飲んだ。
「そういえばソムナリアはファリスまで行ったことある?」
「ないなあ。南はここまでね」
二人が話していると、給仕が現れて、ムラエネの香草蒸しと卵とチーズのパテッラ焼きが届けられた。そして、二人分のパンとオリーブ油の入った小皿が置かれた。
「たべよう」
「いただきます」
二人は思い思いにパンをちぎり、オリーブ油に浸し、それを口に運び、料理を味わった。
「あのね、ソムナリア?」
「なに?」
ソムナリアはパンを手に持ったままベルンハルトを見た。
「ネバーベントに墓地があるでしょ?」
ソムナリアはあからさまに視線を右下に向けた。そして手に持っていたパンを口に押し込んだ。
「……いや、いいや」
ベルンハルトは顔を下に向けた。ソムナリアは表情を変えずにパンを咀嚼した。
ソムナリアがパンを食べ終えてムラエネの香草蒸しを口に運んだところで、ベルンハルトが口を開いた。
「あのさ?」
「なに?」
「……ムラエネと淡色ぶどう酒は合うの?」
「ん?もちろん。赤色ぶどう酒よりも合うよ」
しばらくすると皿もカップも空になった。
タミネットを出て宿舎に戻る道すがら、ベルンハルトが尋ねた。
「ねえ?」
「なに?」
「……明日は、朝の鐘と同時に出る予定だけど、いい?」
「いいよ」
次の日。二人が乗った馬車は朝の鐘が鳴ると同時に出発し、夜半には魔術教室に到着した。




