寝ずの作戦会議
コイントスで「寝ずの番」の前半がゲオルク、後半がソムナリアに決まった。ベルンハルトは起き続けることになっていた。
夜更けになって、ソムナリアはドアのノックで目を覚ました。
――ガチャ。
ソムナリアは起き上がった。窓の外には満月が見える。部屋いっぱいに暗く青い光が満ちていた。ベッドから降りて、ドアに急いで寄って、開けた。
ドアの外には、ゲオルクが立っていた。寝ていないのが堪えたような顔を見せていた。
「お疲れ様。あとは任せてね」
「ソムナリアさん、よろしくお願いします」
ゲオルクは自分の部屋に重い足取りで向かった。
ゲオルクが自室のドアを閉めると同時に、ソムナリアも自室のドアを閉めた。
隣のベルンハルトの部屋の前に立った。
コンコンコン。
「ソムナリアです」
ソムナリアが言う。
「どうぞ」
中から声が聞こえた。
ガチャ。
ソムナリアがドアを開けた。
中にはベルンハルトが剣を手に立っていた。殺気がほとばしる。今にも剣を抜いて斬ろうかという風に見えた。
ソムナリアはベルンハルトを一瞥すると、部屋に入ってドアを閉めた。
「ベルンハルト、相変わらずすごいね。入るのを躊躇いそうだったよ」
ソムナリアが言う。
「警戒しないといけないからね」
ベルンハルトは剣を納めた。彼からは殺気は既になくなっていた。
ソムナリアはベッドに腰掛けた。ベルンハルトは床に座る。
「あいつら、どうするつもりなんだろう?」
ベルンハルトが言った。
「正直なところ、ここでは襲ってこないと思う」
ソムナリアが答えた。ベルンハルトは頷いた。
「俺もそう思う。でも万が一があるから、ああやってドアが開くたびに神経を使わないといけないんだよね」
「うん、ご苦労様なことになってるよね」
ソムナリアは笑みを見せながらベルンハルトに顔を向けた。
「それはいいんだけど……いつまでするんだろうなとは思う」
ソムナリアはここでベルンハルトの顔を覗き込んだ。
「いつまでだと思う?」
ベルンハルトは天井に視線を変えてながら考えた。
「あいつらは、俺たちを事故死させたいんだよね、たぶん?」
「ベルンハルトさんも考えにキレが出てきたね?」
ベルンハルトは「いや」と言った。
「俺たちを倒したいなら、既に襲ってきてる。それぐらいは分かるから」
「私、ベルンハルトを馬鹿にしたいつもりじゃないからね?」
「分かってるよ……」
ベルンハルトは視線を落とした。
「どこで私たちに襲いかかるか?これがまだ分からないのよね……」
ソムナリアが言った。
「でも決めてるのは確かだよね?」
ベルンハルトが答えた。
「あれだけこっちの馬車の速度制御をしてるものね」
ソムナリアは頷いた。
「ねえソムナリア……予測できる?」
「考えてはいるけど……」
ソムナリアは伸びをした。
「何かこう……ここ!って決められないのよね……」
「そうか……」
ベルンハルトは腕を組んで視線を上げた。
しばらくの間、二人の間に静寂が落ちていた。
「あ、そうだ!」
静寂を破ったのは、ソムナリアだった。
「どうした?何か思いついたか?」
「ていうか、ベルンハルトが決めて」
「なんでだよ……」
ベルンハルトは期待をくじかれて少し拍子抜けの表情を見せた。
「だって、むしろあなたの方がこの街道を知ってる。首都から南方軍までは、私よりずっと行き来してるよね?」
「まあそうだな……」
「嫌なところ、ある?」
ソムナリアがベルンハルトを見つめながら尋ねた。
「いやなところ?」
ベルンハルトが尋ねた。
「そう。これまでの経験で、何かないかなって。ここで盗賊に出られると嫌だなとかさ。ない?」
「ああ。そういうことなら……」
「何かある?」
「でも街道図を見ないと詳細は分からないよ。ちょっと待ってね」
ベルンハルトは、バックパックから擦り切れた羊皮紙を取り出した。そこには南方街道の地図が描かれていた。
「使い込んでるね……」
ソムナリアは感心したような声を出した。
「そりゃあ、この街道を行き来してるからね」
ベルンハルトが得意げに言った。




