風の向き
次の日の朝。
ソムナリアはベッドの周囲に設置した対人防御魔術装置の中にいる。
ソムナリアはベッドに座った。
「おはよう」
隣で身支度をするベルンハルトの背中に声をかけた。
「ああ、おはよう」
ベルンハルトが顔だけを向けた。
「寝れた?……あんまり寝られなかった?」
「はは…分かる?」
ソムナリアの質問にベルンハルトは答えなかった。
「身支度する?」
ベルンハルトが尋ねた。ソムナリアはうなずいた。
「うん」
ベルンハルトは外に出た。
--余りいい顔じゃないんだろうな。
ドアが閉まると同時に毛布から出て服を着た。
準備ができたら、部屋のドアを開けた。すぐ外でベルンハルトがぼんやりと立っていた。
「終わった」
「分かった」
ベルンハルトが部屋に戻った。
「朝食は手持ちの食料だよ」
ベルンハルトが言った。
「知ってる。調査対象に借りは作らない、だよね」
ソムナリアが答えた。
「とはいえ……パン、硬いよね」
ソムナリアがパンを手に持ったままでいる。その傍らでベルンハルトが水袋を取り出した。
「デュンビアは持ってきたよ」
「助かる!」
ソムナリアが笑顔で声を上げた。
ベルンハルトが薄いビールを椀に注いだ。二人は、硬いパンをデュンビアに浸して、チーズと共に口に押し込んだ。
「柔らかくはなるけど……それでも、あんまり味気しないよね……」
ソムナリアが呟いた。
「仕方ないよ」
ベルンハルトが言った。ソムナリアは軽くうなずいた。
「保存食だもんね。デュンビアがあるだけましだよね」
朝食を済ませたら、村長の住む母屋に向かった。
母屋では村長が待っていた。柔らかい表情で二人を迎えた。
「充分お休みになれましたか?」
「ありがとうございました。休めました」
ベルンハルトが答えた。村長は満足げにうなずいた。
「今日の天気はどうなるでしょうな?」
「今のところは晴れていますね。それにこの辺は、今の時期にあまり降らないですよね?」
ベルンハルトが言った。
「へえ、よくご存知で……」
村長が言った。
「本当、よく知ってたね……」
「ソムナリアまでそんなこと言うの?……街道はずっと往復してるからね、天気のことはよく知っておかないとね」
「では行きましょう」
村長が立ち上がった。
「特にここは東の風が強く吹きだしたら……あ、待って……」
ベルンハルトが村長を追いかけた。
「ついて来てください」
村長が言った。
「ドラゴンの谷ですか?」
ベルンハルトが尋ねた。村長の動きが少しの間止まった。直後のほんの一瞬、表情が変わった。ベルンハルトは目を逸らした。村長の顔はすぐに戻った。
ソムナリアはベルンハルトの脇腹を軽くつついた。
ベルンハルトはソムナリアの顔を見た。ソムナリアはベルンハルトに向いて首を横に振った。
村長は家の戸を開けた。
「村の何人かに会っていただこうと思いましてね」
村長は家の外に出た。
ソムナリアとベルンハルトは何も言わずについていった。




