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光っている

馬車の荷台が揺れても気付かずに、ソムナリアはじっとマナ感知器を見つめていた。


やがて顔を上げ、ベルンハルトに向かって言う。


「これ、追手がいるかも……」


「本当?」


ベルンハルトは座ったまま、静かに問い返した。


「分からない……。でも、最悪だと魔術士が攻めてくるかも」


「最悪じゃないときは?」


「それは……」


ソムナリアはバックパックから小さな袋を取り出した。


「マナ感知器の誤動作では、これを真っ先に疑うの」


袋の口を一度開き、手早く縛り直す。


「これで光が消えたら、私の勘が鈍ってたってことよね」


マナ感知器を覗き込む。


「……消えないね」


ソムナリアの眉間に、しわが寄った。


ベルンハルトは表情を変えず、御者に声をかけた。


「なあ、ここまでで怪しいヤツを見たか?」


「いえ。ネアルコからネアルティコまででは確認できていません」


御者は前方を見たまま答える。


「魔術教室の前では?」


「そちらでも、怪しそうな人は見えていませんでした」


「だよな。ありがとう」


ベルンハルトはソムナリアの方を向いた。


「追手はいないのかな、と思うよ」


「でも……これだけはっきり光ってるのは、かなり危ないの」


眉間のしわは消えない。


しばらく間をおいて、ベルンハルトはうなずいた。


「分かったよ」


御者に向き直る。


「追手がいるかもしれない前提で行こう」


御者もうなずいた。


「はい。平地に降りて追手を確認しましょう。そこまで急ぎます」


「どう?」


ベルンハルトが振り返る。


「うん……まあ、それぐらいしかできないよね……」


ソムナリアの眉間のしわは、少し和らいだだけだった。


馬車は少し速度を上げた。途端に上下の揺れが激しくなる。


「これぐらいで大丈夫ですか?」


御者が尋ねる。ベルンハルトはソムナリアの様子を見てから答えた。


「後ろは大丈夫だ」


速度を保ったまま、馬車は進む。ソムナリアもベルンハルトも、ロープにつかまり前方を見ていた。


やがて林道を降り切り、馬車は平野に出る。さらに少し走り、野原の真ん中で停まった。


ベルンハルトと御者は地に降り、周囲を何度も見回す。


「見えるか?」


「見えませんね」


ベルンハルトはうなずき、荷台に座るソムナリアに近づいた。


「追手は見えないよ」


「うん。ありがとう。でも……」


ソムナリアはマナ感知器の光を見つめたまま言う。


「でも光ってるんだよね。いる可能性は、まだあるのよね」


ベルンハルトは、光に照らされたソムナリアの顔を見た。


「そのマナ感知器が壊れてるとかはないの?」


ソムナリアは、ぎこちなくうなずく。


「壊れてたら、光らないんだ」


「へえ、そんなものなんだ」


「そのはずなのよね。だんだん分かんなくなってきそう」


ベルンハルトは荷台に登り、御者に呼びかけた。


「じゃあ、出発しよう」


「はい」


御者は馬車に乗り、馬を歩かせ出した。


馬車は街道を進む。ベルンハルトは荷台に座ったまま、周囲への警戒を怠らなかった。その合間に、ソムナリアの様子をちらり、ちらりと確かめる。


「ソムナリア、どう? 体調は大丈夫?」


ソムナリアはマナ感知器の光を眺めている。


「私の体調はいいけど、マナ感知器がおかしいのが直らないの」


「マナ感知器のこと、何か分かった?」


ソムナリアは首を横に振った。


「分からないの」


「そうなんだ。まあ警戒はできてるから、追手が来てもなんとかなるからね」


ソムナリアは黙ってうなずいた。


ときどき商人の荷馬車とすれ違いながら、宿場町に近づいていく。茜色の光に照らされた城壁が、遠くに見えてきた。

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