表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
2/36

運ぶだけの仕事

簡素な馬車が軽やかに街中に入ってきた。そのまま街路を進んでいく。魔術教室の前で馬車は止まり、そこからベルンハルトが降り立った。


「こら!待ちなさい!」


ソムナリアの声が外まで聞こえてくる。教室の中では、魔術で火を出す児童がいれば、泣いている児童もいる。ソムナリアは別の児童を追いかけていた。


「へえ……大変そうだ……」


ベルンハルトは微笑みながら、教室の様子を眺めていた。


子どもを捕まえてひとしきりお説教を終えたソムナリアが、ようやくベルンハルトに気づいた。


「あら、早かったね」


近づいてきたソムナリアに、ベルンハルトは軽く会釈する。


「確かにそうだね。少し待つよ」


「ごめんなさいね。もうすぐ終わるから」


ソムナリアはそう言って教室へ戻った。


ベルンハルトは馬車に戻り、荷台に横になった。しばらくして、街の中心部から鐘の音が響く。鐘を合図に、ベルンハルトは起き上がった。


魔術教室から児童たちが思い思いの方向へ帰っていく。入れ替わるようにして、ベルンハルトは教室に入った。


「ごめんね、待たせたね」


「そんなことないよ。俺が早く着きすぎただけだよ」


ソムナリアは床に落ちていた袋を拾いながら言った。


「で、その手紙ってどんなものなの?」


ベルンハルトはバックパックから革製の筒を取り出し、その中から巻物を引き出した。


「これがその手紙だ」


「ふうん……高貴な女性からの恋文……かな」


ベルンハルトが目を向ける。


「分かるのか?」


「だって、ローズウォーターの匂いがするもの」


「へえ……俺、知らなかった」


「それとね、封蝋してあるでしょ?」


「あるね」


「ここにローズウォーターを仕込んでおくと、封蝋を取ったときに匂いがするんだって」


「ふうん……」


ベルンハルトは巻物を筒に戻した。


そこへ中年の女性が入ってきた。


「あ、ベルンハルト君……だっけ?」


「ローザさん、こんにちは。そうです。ベルンハルトです」


ベルンハルトはバックパックから、手紙と入れ替えに書類を取り出した。


「こちらの命令書にサインをお願いします」


「あ、確かに私が職場長になるわね。ちょっと待っててね」


ローザは羽ペンを取り、命令書に署名した。


「これはソムナリアに渡せばいいのね?」


「そうです」


ローザが立ち上がる。


「じゃあ、ソムナリア、ちょっと来て」


「はい」


ソムナリアがローザの前に立つ。


「はい、命令書。ベルンハルト君に同行すること」


ソムナリアは命令書を受け取った。


「いっといで」


「いってきます」


ソムナリアは命令書を懐に納め、床に置いていたバックパックを担いだ。ベルンハルトが教室のドアを開く。


「あ、ありがとう」


ソムナリアが外に出る。振り返ると同時に、ベルンハルトがドアを閉めた。


ベルンハルトは馬車へ向かい、荷台に乗った。ソムナリアも馬車に近づく。


「ソムナリア、そのバックパックを渡して」


言われるままにバックパックを渡すと、ベルンハルトはそれを荷台に置いた。


「ここまで上がれる? 手を貸そうか?」


ソムナリアは首を横に振る。


「ここにステップがあるから、上がれるよ」


「あ、そうか。それなら大丈夫だね」


ベルンハルトは愛想笑いを浮かべた。


ソムナリアは独りで荷台に乗った。ベルンハルトは進行方向に向かって左側の奥に座っている。ソムナリアは右奥に腰を下ろした。


ソムナリアが座ると同時に、ベルンハルトが御者に向かって言った。


「いいぞ、出せ」


御者はうなずき、手綱を操る。馬車はゆっくりと進み始めた。


ほどなくして門をくぐり、街を出る。太陽に向かって馬車は進む。


「あ、そうそう」


ソムナリアはバックパックの中に手を入れた。


「魔術士同行だから、こういうのもいるかなと思って」


片手に収まるほどの、薄い円筒形の物体を取り出す。


「これはマナ感知器といって……」


マナ感知器の上面が、ぼんやりと光っている。


「……え?」


ソムナリアの口が止まった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ