首都の午後
ソムナリアとベルンハルトは串焼き肉の屋台に立った。
肉そのものが焼ける匂いとともに、脂の焼けた匂いと煙が辺りに漂っている。
「ああ、これは勝てない」
ソムナリアが声を漏らした。
「脂の匂いには勝てない?」
ベルンハルトが声をかける。
「もうだめ……」
ソムナリアはうめくような声で応えた。
「じゃあこれにする?」
「うん。ベルンハルトは?」
「同じところにする」
ソムナリアは串焼きを二本注文した。
焼きたての串を手にソムナリアとベルンハルトは建物の壁際に立った。
ベルンハルトは肉に急いでかぶりついた。
「これ、うまいね」
ソムナリアは串の肉を一度じっと見た。つやが見える。一口分を口に入れて噛む。脂がじわりと口の中に出てくるのを感じた。
「うん。おいしいね」
ソムナリアは、ゆっくり噛んで一口分を食べきってから、口を開いた。
「生肉を見たら分かるよ」
ソムナリアは視線を店舗に向けた。ベルンハルトも見た。焼かれる前の鶏肉が置かれていた。
「お皿に染み出た水分があんまり赤くないでしょ?血抜きがしっかりされてるの」
「なるほど。確かに」
ベルンハルトが言う。
ソムナリアがベルンハルトに顔を向けた。
「ところで、これさ、香辛料がかかってたら、この串焼き何本分だろうね?」
ソムナリアの問いかけに、ベルンハルトが食べるのを休止した。
「ちょっと待って。今は頭を使いたくない」
ベルンハルトに言われて、ソムナリアは大きくゆっくりうなずいた。
「そうね。今は串焼きの味を楽しむのに集中しないとね」
ベルンハルトは軽くうなずいた。ソムナリアは鶏肉を食べ始めた。一口でまた止まった。
「どうしたの?」
ベルンハルトに尋ねられても、ソムナリアは手も口も止めている。しばらくして口を開いた。
「たぶん串一本ちょっとぐらいだと思う」
「あ、そうなんだね」
ベルンハルトが呟いた。ソムナリアが鶏肉を食べ始めた。
二人が食べ終わった後、ソムナリアがベルンハルトに尋ねた。
「さっきの紙屋に行きたいんだけど、いいかな?」
「いいよ」
ベルンハルトの返事と同時にソムナリアが歩き出した。
「でもなんでさっき買わなかったの?」
ベルンハルトの質問に、ソムナリアは表情を変えずに答える。
「紙を持って食事したら汚れるから」
「なるほどね。そりゃそうだ」
ベルンハルトが大きめの声で言った。
* * *
ソムナリアは紙屋の前に再び立った。ソムナリアは店主は注文を待っている。
「これ、いくら?」
店主は小声で答えた。
「1枚4インだよ」
ソムナリアはベルンハルトを見た。
「羊皮紙より安いでしょ?」
ベルンハルトは、指折り計算してからソムナリアの方を見た。
「そうだね。羊皮紙はこれの五割増しぐらいだね」
「さすが仕入に慣れてるね」
ソムナリアがベルンハルトに言った。そのままソムナリアが店主に向いて尋ねた。
「一枚だけ売ってくれませんか?」
「ふつうは百枚からだよ」
ソムナリアは店主を見つめる。
「知り合いに見せたいんです。こっちの方が安くて使いやすいよって」
店主は長めに息を吐いた。
「そういうことなら売るよ」
「ありがとうございます」
ソムナリアは銀貨を渡して、大判の紙を受け取った。
ソムナリアは紙を折ろうとした。しかし一度手を止めて、少し考えた。
カサカサカサ……
丸めた紙を手に持って店を離れた。




