三色の光の矢
夕闇に包まれた試験場に、数人の男が新たに現れた。
「あ……式典室長が来たみたいですね」
本所職員が金属筒にマナバッグを押し込めながら言った。
「そう」
ソムナリアは式典室長の方を見ずにマナバッグを押し込めていた。
「私たちの上司なんです。ご挨拶なさいませんか?」
ソムナリアは金属筒の内部を確かめた。
「今は準備中だよ」
それだけ言って立ち上がった。
「これで準備は終わりね?」
「そうですね。いつ頃試験を始めるといいか聞いてきます」
本所職員の一人が上司らの集団に向かって走っていき、すぐに戻ってきた。
「準備でき次第試験にかかるようにとのことです」
ソムナリアはうなずいた。
「始めるよ」
ソムナリアは二人の本所職員を手で呼んだ。
金属筒が地面を引きずる音が立った。二人は筒を担いでソムナリアの近くに寄った。
「いい?……こっちを先にね……それで、五秒ずつ……いい?」
「はい」
二人はうなずいた。
「で、君たちどの位置に立つ?」
二人の本所職員は、少しの話し合いをしてから左右の位置についた。
ソムナリアは金属筒を手に中心に立った。左右を確認したが夜の闇の中で、本所職員がほとんど見えない。風がほんの少し吹いて、ソムナリアの頬を撫でている。
ソムナリアは大きく息を吐き出した。目を閉じてもう一度大きく息を吸って、吐き出した。そして目を開いて、金属筒を前斜め上方に向けた。
「いくよ」
ソムナリアが言った。三拍おいて、ほぼ同時に三か所の金属筒からマナの放つ光が見え、直後に光の球が打ち出された。
光の球は白色だったが、すぐに黄色い光の粒子をまとわせ始め、球全体が黄色く光った。
黄色い尾を引きながら夜空を駆け上がっていく。
ベルンハルトは、黄色い光に顔を照らされながら、その光の球を目で追った。
「……南方で見たのと同じだ」
ソムナリアも同じ光の球を見ていた。
「……南方」
そして三本の黄色い光の筋は、全く同じ形の弧を作った。
三人が次の金属筒を手に取った。
「一つ、二つ、三つ、四つ……」
三人の声がほぼ重なった。
黄色い光の球が小さく暗くなっていく。
三人の金属筒から光が出た。
白色の光の球が飛び出した。
ソムナリアが、一瞬、目を閉じた。
白色の光の球は、橙色に変わっていった。
真ん中の光が、ほんの少し遅れて飛んでいた。
三つの光の球は、前の軌跡をなぞって行った。
三人は金属筒を持ち替えた。
「一つ、二つ、三つ、四つ、五つ」
金属筒の先端が光り、白色の光の球が打ち上がった。
白色光の球は緑色の粉を撒きながら、緑色の光の球となって昇っていった。
同じ軌跡をたどって、ゆっくりと明るさを失っていった。
光が消えるとともに、星空が浮かび上がってきた。
ソムナリアの左右にいる本所職員は、離れたところにいる式典室長の方を見た。
そっと風が吹いた。
離れたところから人が駆け寄り、本所職員の一人に耳打ちをした。
「これで進めるとのことです」
本所職員が伝えた。
ソムナリアは光の球の消えて行った先を見つめていた。
「橙色でいいんだ」
ソムナリアがつぶやいた。
「汗には気を付けてね。汗が付くと黄色に寄るからね」
「わかりました」
「式典室長だっけ?言っておいて」
「……はい」
「片付けよう」
ソムナリアは中身が無くなった金属筒を拾い始めた。




