表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
13/36

酒場で聞いた話

ベルンハルトはまっすぐ酒場に向かった。ソムナリアも付いて歩いた。


酒場には、仕事着のままで来た者や、無頼漢など様々な種類の人が集まり、日が暮れる前にしては客が多い。


「……遅かったか」


ベルンハルトが肩をすくめて小さく笑った。


「別にいいんじゃない?」


ソムナリアは構わず中に入った。ベルンハルトが続く。


中に入ると、熱心に話を聞く者もいるが、多くはビールを飲んで顔を赤くしている。ときどき黙って席を立つ者が現れるが、空いた席には外から入った者が座っている。


「どこにいるんだ…?」


ベルンハルトは周りを見回した。特に大きい声の出元の方を中心に見ているが、聴衆に視線が阻まれてよく見えていない。


ソムナリアは、周囲の声に耳をそばだて、周囲の顔を見ていた。


「誰でもなれるんだってよ」


「才能は本当は要らないものらしいな」


口々に言っている。


奥の方から声が聞こえる。


「そこのご老人、こちらに来なさい」


ソムナリアは声のする方に向かおうとするが聴衆に阻まれている。


「ごめんなさい!」


ソムナリアが大きめの声を出して隙間に入り込んだ。


奥には老人が立って指を前に差し出している。その後ろに人の影が見える。人影が手で何かを放ったように見えた。瞬間おいて、指から炎がほとばしるように見えた。


老人は驚いている。周りからも感嘆の声が上がっている。ここまで見て、ソムナリアは後ろに戻った。


ソムナリアはベルンハルトの脇腹を肘でつついた。気づいて、ベルンハルトはソムナリアの方に顔を向ける。


ベルンハルトはうなずいた。


ソムナリアは聴衆から離れた場所の椅子に座った。この近くでも話し声が聞こえる。


「それでも時間とカネがかかるらしいな」


「じゃあ俺たちは無理だな」


ため息も聞こえる。


「魔術士に簡単になれるなら苦労しねえよな」


ソムナリアが「魔術士」と言った者に視線を向けたが、すぐに戻した。その言った者は酒場を出て行った。


「そもそも無許可で魔術を教えるんだったら、魔術規則違反とか言ったっけか、それはどうでもいいが、とにかくお仕置きを受けるらしいぞ」


ソムナリアが周囲に目を向けた。彼女の周囲には無表情で席を立つ者が多くいた。


奥の方ではまだ声がする。ベルンハルトとソムナリアが目を合わせた。そして二人ほぼ同時にうなずいた。


ベルンハルトが奥の方を指さした。ソムナリアは反対に店の外の方向に指をさした。ベルンハルトがうなずいて、二人は店を出た。


酒場を出た途端にベルンハルトが尋ねた。


「あの呪術師の印象を聞かせて」


ソムナリアはうなずいた。


「あそこまであからさまに野良魔術教室をしますって言うのは。かなり珍しいのよね」


ソムナリアの口元がわずかに上がっている。


「ある意味新鮮だったよ。あきれたけど」


「そうなんだ」


ベルンハルトが相づちを打った。


「それと、あいつ、実力はどう思う?」


ソムナリアは前を向いたまま口を開いた。


「あの人は、技術的には民間魔術士の資格は取れると思う。でもそれ以上じゃない。つまり魔術学校入学レベル」


「ずいぶんと辛辣だね」


ベルンハルトが言う。


「見たままを言っただけよ」


ソムナリアがベルンハルトに少し視線を向けて、また前を向いた。


「さっき老人が炎を出してたのは何だったの?」


ソムナリアは表情も顔の向きも変えない。


「後ろから呪術師がマナを漂わせて、自分でウェラを出しただけ。老人は何もしてない」


「なるほど……」


ここでベルンハルトは立ち止った。ソムナリアも立ち止る。


「捕縛はできる?」


ソムナリアは再び歩き出した。


「私は魔術では負けないよ。殴り合いだとベルンハルトが勝つでしょ?」


「うん」


「あとこの街の中でシンパシーを感じる人がいたらややこしくなるけど、いないからね。三人いたら十分じゃないかな」


二人は広場についた。ヨーゼフが待っていた。


「帰ろう。そして次のことを考えよう」


ソムナリアが振り返ってベルンハルトに言った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ