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魔法少女おばあちゃん 〜78歳のおばあちゃん、16歳の侯爵令嬢に転生?!〜  作者: 柚木(ゆき)ゆきこ@書籍発売中
第五章 魔境の森

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79、むーり無理。アタシには無理よ

 ——ズドォォォォォォォン!!


 辺り一帯に爆音が響き渡る。投げられたカメラは目を回しているのか、そのまま動かない。そしてその下敷きになったと思われたシェラさんは、もちろん無事だ。


「た、助かった……?」


 目を丸くして不思議そうに自分の両手を見ている。そして周囲に張られている防御魔法に気づいたらしく、それを静かに観察した。


「これは……」


 シェラさんは穴が開きそうなほど、こちらを見てくる。私は目を瞬かせたあと、首を左に傾げると……シェラさんは、大きなため息をついたあと、地面に寝っ転がった。

 ユウくんや私がギョッとしていると、彼は大声で喚き始めたのだ。


「あーあ、やってらんない! 敵に助けられて、私の面目丸潰れじゃなーい」


 そう言うと、シェラさんは上半身を起こしてから、私を細目で見た。


「あの防御魔法、クリスでしょう? ……助かったわ。ありがとう」

「……バレちゃいました?」


 そう舌を出して言うと、シェラさんは呆れたような表情を浮かべている。


「あんな強固な防御魔法、魔力量が減った私にはむーり無理。あー、ここまで格の違いを見せつけられたら、完敗よ、完敗」


 そう告げてから、再度地面に仰向けになるシェラさん。彼は空に向けて、続きを叫ぶ。


「そもそもあんだけ魔力を使ってるのに、どんだけ魔力があるのよ! これじゃあ賢者の称号を巡って戦いを挑んだ私が、阿呆じゃない!」

「……クリスだもんな……」


 ユウくんはこちらを複雑な顔で見てくる。ちょっと待って、ユウくん。何、その表情……? マチルダちゃんも、ユウくんのため息混じりの言葉に、力強く頷いている。


「仕方ありません、お嬢様ですから」

「それで納得するアンタたちもアンタたちねぇ……まあ、わかる気がするわ」


 何か通じ合っている三人。なんで私一人だけが、わかってないのー?! みんなずるくなーい?

 

 ……なんて思いながら、少し不貞腐れていた私。

 すると、目の端でカメラがのそのそと動き出した。私は詠唱を唱えようとしたけれど、よく見るとどうやら様子がおかしい。うん、まるで先ほどのシェラさんみたい。

 カメラは赤竜ちゃんの前にゆっくり歩いていくと、地面に寝そべった。まるでもう戦う意志はないと言っているようだ。

 赤竜ちゃんはカメラの頭を尻尾で撫でる。


「あー、あれは降伏のポーズね」


 シェラさんが教えてくれる。どうやらカメラも落ち着いたらしい。


「カイメラも強かったですが、赤竜は更に強かったですねぇ」

「属性は火か……やっぱり辺境伯のアンデットドラゴンの影響か?」


 ユウくんたちが色々と話し合っているが、二人の会話は私の右耳から左耳に抜けていく。何故なら、赤竜ちゃんがこちらへ歩いてきたからだ。赤竜ちゃんは私の目の前に来ると、地面に寝そべった。

 私たちが口をあんぐりと開けていると、赤竜ちゃんはチラチラとこちらを見てくる。


「もしかしてまた撫でてほしいの?」


 そう訊ねると、赤竜ちゃんは嬉しそうに「グルゥ」と喉を鳴らしてから、目を閉じる。


「あらあら、甘えん坊さんね?」

「……甘えん坊?」


 誰かの声が聞こえたような気がしたが、気のせいだろう。私は赤竜ちゃんの前に立ち、何度も頭を撫でた。とっても頑張ってくれたものね。たくさん撫でていると、赤竜ちゃんの身体は少し冷たいことに気づいた。ひんやりして気持ちいい。

 私は赤竜ちゃんに触れながら、ボソッと呟いた。


「大きいままの赤竜ちゃんも可愛いけど、小さい方が抱っこできそうねぇ……」


 その言葉を聞いた赤竜ちゃんは、私の方へと顔を向ける。そして何かを考え込んだと思いきや、大きな雄叫びを上げた。すると……赤竜ちゃんの周りに煙が現れる。煙は赤竜ちゃんを隠すのと同時に音を立てた。

 

 ——ポンッ!!

 

 私たちは音に驚きながらも、静かに煙が消えていくのを眺める。シェラさんも上半身を起こして、こちらを見ていたくらい。しばらくして煙が消えていくと、あれだけ大きかった赤竜ちゃんがいない。


「赤竜ちゃん?!」


 私がそう声を上げた瞬間……目の前には可愛らしい……ラーネの胴体くらいの大きさの、デフォルメされた赤竜ちゃんが、嬉しそうに両手をバンザイしている。


「あら、可愛いわねぇ! 変身できるのね!」

「ガウッ♪」


 楽しそうに鳴き声を上げる赤竜ちゃん。私はニコニコと赤竜ちゃんを見ていたけれど……そういえば赤竜ちゃんは石から生まれたのよね? どうやってあんなに大きな身体になったのかしら? 不思議ねぇ。


「まあ、いっか!」


 私は、赤竜ちゃんを高い高いして遊んでいた。


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