78、特撮映画みたーい!
「竜だ!」
ユウくんの声で私は我に返った。目の前にいたのは、赤黒い竜。なんでそんなものが……?
「お嬢様、辺境伯領で倒したアンデットにそっくりですね」
そう言われて思い出した。辺境伯領で倒したアンデットの欠片が石に入っていったんだっけ? けど、マチルダちゃん……私骨格で似てるかどうかなんて判断できないんだけど。まあ、でもマチルダちゃんが言うならきっとそうよね!
いきなり現れた竜に、シェラさんも驚いているのか目を剥いている。竜は向かってこようとするカメラを威嚇したあと、こちらへ優雅に歩いてきた。カメラは身動きが取れないのか、固まったままだ。
マチルダちゃんとユウくんは剣を構えるが、竜が攻撃する様子はない。
むしろ私の前に辿り着くと……頭を下げた。なんとなく気持ちが伝わってくる。
「撫でてってこと?」
私の言葉に擦り寄ってくる竜。なんだかとっても可愛らしいわねぇ。ラーネとワトくんもとっても可愛いけど、この子はどっちかといえば犬猫みたいな可愛さかしら?
頭を撫でると、気持ちよさそうに喉を鳴らす竜。あらまぁ、完全に猫ちゃんじゃない。
私が竜の頭を撫でる、という時間が過ぎていく。周囲が唖然と見ている中、満足したのか竜は空へと飛び上がった。そして雄叫びを上げる。それを見たカメラが動き始めた。どうやら戦いが始まる……らしい?
全員が静かに頭上を見つめる。私は念の為防御魔法をかけ直しながら、二頭の動向を眺めた。心の中には先ほどのような絶望は感じない。むしろ、勝利の二文字が頭に浮かんできた。
そんな時、ユウくんとマチルダちゃんがこちらへとやってきた。
「なあ、クリス。あの竜は味方……か?」
「味方……に見えますけれど……?」
二人は半信半疑だ。まあ、そうだよね。いきなり石から現れた竜だもんね。私はにっこりと笑う。
「味方だと思うよ。だって可愛かったじゃない?」
「いや、確かに……クリスに懐いていたが……」
「あれを『懐く』と言っていいのでしょうか……?」
ユウくんの言葉にマチルダちゃんが、不思議そうに答える。ユウくんはバツの悪い表情を浮かべながらも、肩を縮めて話し続けた。
「まあ、クリスが言うなら大丈夫だろうな」
「あら、お嬢様に絶大な信頼があるのですね」
揶揄うように話すマチルダちゃんに、呆れたような声でユウくんは話す。
「クリスは規格外だからな……竜くらい手懐けるだろ?」
「まあ、そうですわね……竜くらい……」
あら、二人の認識にある私はどんな人なのかしら?
奥ではシェラさんも二頭の戦いを見ている。戦いは壮絶だった。
翼や胴体のぶつけ合い、魔法の応戦……まるで特撮映画を見ているみたい。なんか日本でも似たようなもの、あったわよね? そして余波が飛んでくるので、何度も防御魔法を掛け直している。シェラさんなんかは何十にも防御魔法を掛けているみたいね。
しばらくして、どうやら二頭はお互いが魔法無効だと理解したのか、衝突を始めた。空中で大きな音が何回も鳴る中、竜がカメラの攻撃を掻い潜って、首元に思い切り噛みついたのだ。
カメラから苦しそうな雄叫びが上がる。
そして赤竜ちゃんはカメラを振り回し……ポイっと勢いよく投げ捨てたのだ。
「えっ!?」
シェラさんの叫び声が上がる。赤竜ちゃんはカメラをシェラさんに向けて放っていた。彼は防御魔法を何枚も重ね掛けしている。逃げる時間はないと悟ったためだろう。
カメラがシェラさんの防御魔法に当たった。一つ、二つ……どんどん割れていく防御魔法。
「くっ!」
その間にも何度も防御魔法を掛け直す。けれども、カメラのぶつかるスピードが速いためか、防御魔法を展開するよりも、割れる方が数段早いのだ。そして最後の一枚が割れた瞬間、彼は目を瞑った。




