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ひと夏の恋  作者: 環流 虹向
8/1
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22:00

どうしても…、どうしても足りない。


俺がもしもの時と考えて積み立てていた貯金と、昨日社長に貰った金を合わせてもあと80万足りない。


沙樹も貯金をしていたけれど、今日検査報告をされた沙樹のお母さんに新しく転移が見つかってしまったらしくそれで消えてしまうと言う。


沙樹の貯金はお母さんの今後の治療費に当ててもらうとして、あと80万どうやって3日の朝までに稼ぐか考える。


一瞬、瑠愛くんに借りようかとも思ったけれどお金で今の仲が壊れるのは嫌でこの相談は出来ないし、今はサリさんと祝賀会の旅行に行ってるから邪魔をしたくない。


俺は自分の財力の無さに悔やみ、頭を抱える。


あの後、俺は沙樹にナナさんとあったことをちゃんと教えてもらった。


忘年会の日、襲われた時の知らない合間に自分の全裸を取られてしまい、それをダシにしてナナさんが買春を始めたこと。


消すと言って沙樹を正常な判断が出来ないほど酔い狂わせて、また写真を撮ることを繰り返した。


それが沙樹の心体を追い詰めた最大の原因。


バイトを変えた後は学業と仕事で何度も言い逃れして、ナナさんからの連絡が途絶えたらしいけれど、あの時ばったり会ってしまってから度々連絡が来るようになってしまったらしい。


俺はナナさんが持っている沙樹の写真のデータを消し、物として残っている物を渡して貰うのと、今後一切沙樹に近づかないことにしてもらうために、瑠愛くんの家にあるPCを借りて合意書作っていく。


沙樹は自分でなんとかすると言っていたが、どう考えたって1人で集めるのは無理な金額だ。


しかも、俺がナナさんを怒らせたせいでこういう話になってしまったんだ。

俺自身で起こしてしまったことは俺が終わらせないといけない。


俺はPCとにらめっこしながらなにか解決策がないか考えるが、消費者金融くらいしか思いつかない。

けど、それが俺の母親と祖父を苦しめた一因であるから絶対に借りたくない。


…もっと、俺が稼いで貯金していればこんなに悩むことはなかったのに、あのアパートに住み続けていればもう少し少ない金額で悩むことになったのに、全部俺が半端な行動ばかりしてしまってるせいで上手くいかない。


俺は10万ずつでまとめてある金を数え間違えてないか、増えないか、淡い期待を持ちながら何度か数え直すが全く増えない。


ため息をつきながら社長に貰ったお金も数えようとすると、お札ではない紙が1つ落ちる。


…手書きの番号が書かれた名刺だ。


俺は昨日の夜、社長が言っていたことを思い出したが昨日のようにただ手渡されるだけじゃ済まないというのが嫌でも分かる。


俺はその名刺を握り潰し、目を瞑る。


沙樹は入学した時からよく1人でいた俺に声をかけてくれた。

俺はみんなみたいにすぐに心を開ける人間ではないから、始めは二言くらいしか会話が出来なかった。


仕事もそうだ。


1番最初のフリーのお客さんにクレームを貰ってしまってしまったほど、俺は元々口下手だった。


けど、1番最初に俺を指名してくれたマサキさんのおかげで今はあの店でNO.1になれた。


ちょうどその頃、席替えがあって沙樹と仲良くなって愛海や永海、悠とも仲良くなれた。


沙樹が俺なんかと仲良くしてくれたから今の生活がとても楽しく過ごせているんだ。


俺にたくさんの幸せな時間をくれた沙樹が悩んでるなら俺は動かないといけない。


俺は深呼吸をして、携帯を取り出し手元にあるメモの番号に電話をかけた。





→ 1-800-273-8255


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