22:00
「ごめんなさいね。」
と、俺は社長にストーカーの件で呼ばれ、あのマンションに連れてこられた。
夏「…いえ。俺が気をつけていれば起こらなかった事なので。」
社長「あの子、ホス狂いでいろんなお店出禁になった子らしいの。その借金で裏のマンヘルにいたらしいんだけど、数日前から行方不明だったらしいのね。」
俺はそんなどうでもいい話を聞き流しながら早く家に帰れないか、心の中で時間を数えていると社長が厚みがある1つの封筒を俺の膝に置いた。
社長「優治、もうあの店辞めようと思ってるでしょ?」
このストーカーの件なのか、最近の俺の行動でなのか分からないが、社長は俺が辞めようと思っていた事を勘ぐっていたらしい。
夏「…ミサさんの事があってから、ちょっとこの仕事が怖いなって思ってて。」
俺は瑠愛くんの会社を知られないようにストーカーの件だけでこの話を乗り切る事にした。
社長「これはお詫びと引っ越し金。」
と言って、社長はさっきの封筒の上にまた1つ厚みのある封筒を重ねる。
社長「辞めるなら退職金。」
夏「こんなに受け取れないです。」
俺は中身を見ずに、膝の上に置かれた封筒の重さから金額の大きさに気づき断る。
社長「今日まで働いてくれてありがとう。サーファーくんのデータも消すわ。」
と言って、社長は俺の目の前で携帯とパソコン、紙の資料に書かれた愛海のデータを全て消す。
俺は今まで社長の執着しか見てこなかったから、今回も自分の手の内に収めようとしてくるのかと思って覚悟して来ていたが、逆に俺を手放そうとしてくれている。
社長「このお金で色々と足りてないものに使ってあげて。」
夏「…はい。」
俺は少しためらいがありながらも、これでこの人の店で働く事はなくなるからこのお金で学費や引っ越し資金にあてようと思い受け取った。
社長「お金で困ったら連絡ちょうだい。」
俺が受け取った封筒の上に社長は手書きの電話番号が書かれた自分の名刺を置く。
夏「…ありがとうございます。」
俺は頭を下げて最後のお礼を言う。
社長は今までに見せた事がない笑顔で俺に微笑んだが、俺はやっぱり社長が嫌いなままで家に帰った。
家に帰りながら封筒の中に変なものが隠されていないか確認しながら、金額を見ると100万円の大金が入っていて驚く。
あの社長と一緒にいたはずなのに何もしないで大金をもらえたのがとても不思議で奇妙に感じ、熱帯夜なのにも関わらず瑠愛くんの顔を見るまで寒気が止まらなかった。
けれどこれであの店にも、社長にも、もう顔を出す事がなくなったからこれで良かったんだ。
俺は少しだけストーカーに感謝をして貰ったお金を引き出しにしまった。
→ RISKY




