12:00
1本映画を見終えたところで休憩を入れると、瑠愛くんは乾燥機にかけていた一くんの服を畳み、その上に顔を置いてうつ伏せのまま動かなくなる。
夏「…瑠愛くん寝た?」
俺は瑠愛くんに頼まれたポップコーンを作りながら聞くと、瑠愛くんは無言のまま俺に手を振る。
多分一くんの匂いを存分に嗅ごうとしてるんだなと思い、ポップコーンが出来上がるまで放っておくことにした。
少ししてポコポコの出来立てポップコーンを瑠愛くんのいるソファー近くのテーブルに置くと、匂いにつられて瑠愛くんが一くんの服から顔を出す。
夏「いっぱい吸えた?」
瑠愛「…ちょっと匂い薄くなってたぁ。」
と、少し残念そうに言った。
すると次は自分着ていたシャツを顔に被せて匂いを吸い始める。
夏「…瑠愛くんのシャツに匂いついてるの?」
瑠愛「朝、ぎゅーしてたから匂い残ってる。」
瑠愛くんの綺麗に割れた腹筋が深呼吸をするたびに動き、俺はその格好がなんだか面白くて静かに腹を抱えて笑う。
瑠愛「…いっくんにフラれちゃった。」
と、自分の服についた匂いを嗅ぎながら小さい声で呟いた瑠愛くん。
俺はその言葉で一気に笑いのツボから醒める。
夏「…告白したの?」
瑠愛「ううん。いつも通り好きって言っただけ。」
夏「なんでフラれたって思ったの?」
瑠愛「いっくんっていつも俺が好きって言うと、ちゃんと好きって返してくれるんだ。俺はそういういっくん好きになったの。」
夏「そうなんだ。いい人だね。」
瑠愛「うん。今日の朝も好きっていっぱい言ったら…、好きになってくれてありがとうだって。
…やっぱり、恋愛対象にはなれないっぽい。」
瑠愛くんの声が小さくなり、少し震え声で悲しく言葉を放った。
一くんが瑠愛くんに言ったその言葉は、昨日の夜に教えてくれた『好意を持たれてるんだから有難いと思え。』と言う言葉を優しい言葉にしただけで中身はもしかしたら恋愛も友情もないものなのかもしれない。
そう思うと、その言葉を言われてしまった瑠愛くんに俺は何も言葉をかけられない。
[ピンポーン…]
俺が瑠愛くんにどんな言葉をかけようか悩んでいるとインターフォンが鳴り、瑠愛くんが一くんの服を持って来客が映る画面を見て、1つ目のドアを開けるボタンを押す。
瑠愛「いっくん、服取りに来た。」
瑠愛くんは少しボサボサになってしまった髪の毛を直しに洗面台に急いで向かう。
フラれてもやっぱり好きだから良い格好で会いたいよね。
俺も瑠愛くんの髪のセットを手伝っていると、部屋の前のインターフォンが鳴り2人で出る。
一「さっきぶり。服取りに来た。」
瑠愛「はい。これ。ちゃんと乾いてるよー。」
瑠愛くんは紙袋に服を入れて一くんに渡す。
一「ありがとう。…優治は今日ずっと一緒にいるのか?」
一くんは俺がまだいる事に驚いてる様子。
そういえば部屋を借りてるとこ言ってなかったな。
夏「今ちょっとだけ、部屋借りてるんだ。」
一「そうだったんだ。」
一くんは納得した顔で頷く。
瑠愛「また3人で遊ぼうね。すっごい楽しかったぁ♡」
一「そうだね。来週はずっと東京にいないから再来週以降だったらいつでも呼んで。」
瑠愛「うん!分かった!」
そう言うと、瑠愛くんは一くんに抱きついて今日1番に甘える。
瑠愛「またね。」
一「うん。またね。」
俺は瑠愛くんと一緒に一くんに手を振り、玄関の扉を閉める。
瑠愛「…好きぃ。」
2人だけになった玄関で瑠愛くんはそう呟いて俺に抱きつく。
夏「いっくん、いい人だね。」
瑠愛「うん。好き。」
俺は好きが溢れる瑠愛くんを抱きしめ返し、いっくんの代わりになる。
それで瑠愛くんの気持ちが少しでも落ち着くなら、俺はいつでも誰かの代わりになる。
2人で抱きつきながらリビングに戻り、次はハッピーエンドで話題な恋愛映画を見て幸せ泣きをすると瑠愛くんはリモコンで映画を探す。
俺は瑠愛くんの目から少し溢れた涙をハンカチで拭き、一緒に映画を見始めた。
→ フラれてみたんだよ




