12:00
瑠愛くんと電話後はなんだか気分が晴れ、しっかり寝れて疲れが取れた。
俺は飲み残した渋い紅茶を飲み干して本屋に向かう。
沙樹たちとは19時に待ち合わせしているからのんびりと本を選ぶことが出来るな。
そう思いながら俺はこんなにのびのびしてる休日が嬉しくて空を見上げると、今にも雨が降り出しそうな雲が空一面を占領していることに気づく。
だからいつもより涼しかったのか。
俺は頭の記憶にある祭りの持ち物リストに折りたたみ傘を追加する。
そして、30分近く歩かないといけないドラックストアを超えて本屋に着くと、その辺一帯でも祭りをしているのが電信柱を渡って提灯などがライトアップされ、お囃子が流れている。
本当にどこでも祭りをやってるなと思いながら本屋や近場の服屋を見て過ごしていると、広場の真ん中に笹のツリーが出来ていることに気づき近寄って見てみる。
そのツリーに付いている飾りは近場のブースで借りられるチェキで撮られた家族や友達、カップルの写真。
そしてその写真には七夕のようにお願いごとが書かれてあり、その色合いがカラフルでクリスマスツリーのようにきらびやかに見える。
そういえば高校生初めてのクリスマスに莉李と初めてキスをした。
ヤドリギの下ではなく、クロスがかかったリビングテーブルの下でだったけれど。
あの日は莉李に朝からご馳走を作るから手伝ってと家に呼ばれて、親もお兄さんもいない家ではりきった莉李1人で料理をしていた。
「家族はどこに行ったの?」
と、聞くと莉李はとぼけた顔をしながら答えを出さなかった。
きっと莉李がわざと家族を家から追い出して、俺との時間を作ろうとしたんだろう。
今の俺にはそう理解出来るけど、当時はそんな脳はなかった。
あの時はまだ付き合おうという話はしていなくて、友達という関係で行ったクリスマスパーティーの手伝いだったからそんな莉李が不思議でしょうがなかった。
そんな何も知らない俺は初めてクリスマスパーティーの料理を教えてもらって驚いた。
いつもは鶏肉のステーキだったから1羽丸ごとなんて見たことなかったし、骨がついているものを食べることを初めて知って衝撃的だった。
その様子に莉李は笑顔で、
「私も初めてだよ。」
と、俺のために嘘をついた。
しばらく後に見せてもらったアルバムには毎年1羽丸ごとのチキンが写ってたから、莉李なりに優しい嘘をついてくれたんだろう。
そういう莉李はいつも俺が1人にならないようにたくさんの嘘をついてくれた。
多分、今でも気づけていないものもあるんだろう。
けれどその嘘が俺をいつも安心させてくれてたくさんの初めてを一緒に経験できたと思えた。
あの時クロスが引かれたリビングテーブルの下に入ったのも、ラジオで流れたドッキリ話を俺が不思議そうに聞いてたから帰ってきた家族にやろうという話で入った。
でも1時間待っても家族は来なくて、その間大切な莉李の顔と体が俺の腕の中にあってすごくドキドキした。
あのドキドキが“好き”というのなら、みんな心臓麻痺で死んでしまうと思う。
「すごいドキドキする。」
と、俺が言ったものだから莉李は止め方を教えてあげると言って俺と唇を合わせてくれた。
莉李の唇はすごく柔らかくて溶けそうなもので触れている間、何も考えられなくなる。
けれど、ドキドキはずっと残ったままでこの時莉李が初めて嘘をついたんだなと思った。
でも、その嘘のおかげでドキドキする時は莉李とキス出来るのが嬉しかった。
唇を離したあとの莉李はいつも見せない恥ずかしそうな顔をして目を潤ませ俺に微笑んでくれる。
その顔がたくさん見たくてたくさんキスをした。
けれど、1番最後のキスは涙が溢れずっと悲しそうな顔をしていていつもの顔を見せてくれなかった。
別れ際だったからかもしれない。
けど、その1度だけ見せた泣き顔が1番記憶に残ったまま莉李はいなくなってしまった。
悲しませたまま、離れ離れになってしまった莉李は今何を見て笑顔でいるのだろうか。
もしかしてまだなにかに悲しんで泣いているのだろうか。
俺はあの時から涙を拭けるよういつでもハンカチは持ち歩くようにしたのに、使いたいと思う莉李は俺の前には現れてくれない。
1度だけでいいからどこかで出会わせてほしいとくすみ空に願いながら俺は家に帰り、祭りに行く準備をした。
→ 白い恋人達




