12:00
家に帰って天ちゃんから貰った浴衣にシワがつかないように部屋の1番目に入る壁に飾っておこうと思い、簡単な模様替えをしているとまた日用品が少なくなってることに気づく。
節約してるはずなのに、ものすごいスピードで無くなる洗剤や箱ティッシュ。
俺は自分の記憶をたどりながら使った記憶を思い出そうとするが、こんなアホみたいに使った覚えはない。
けど無くなるってことは俺のせいではあるから気をつけないとなと思い、遠いドラックストアに行って帰ると大家さんがアパートの掃き掃除をしていた。
夏「こんにちは。」
「あら、こんにちは。てっきりお部屋にいるのかと思ってたわ。」
大家さんは不思議そうな顔をしてまた掃き掃除を始める。
夏「今日は暑いのであまり無理なさらず。」
「これも健康のうちよ。」
大家さんは優しく俺に微笑み、俺はお辞儀をして部屋に戻る。
大家さんは俺の真下に住んでいてたまに余り物やお孫さんが旅行に来た時にくれる手土産まで分けてくれるとても優しい人。
俺がおじいちゃんになるまでに大家さんみたいに周りに優しくなれる人になりたいなって思うほど、憧れの存在。
俺は部屋に入り、1番でエアコンがつけられるように置いておいたリモコンを取るために下駄箱の上を見る。
けれど、出かけた時に置いておいたはずのリモコンがない。
夏「…あれ?ここに置いていったはず。」
俺は何故だか分からなくて独り言を呟きながら、辺りにリモコンが落ちてないか探すが見当たらない。
仕方なく部屋に入って扇風機で我慢しようと思った時、部屋のテーブルにリモコンがあるのに気づく。
夏「あー…、ボケたかなぁ。」
俺は夏ボケになったなと思いながらエアコンをつけて古い匂いがするエアコンの風を浴びながら涼む。
ドラックストアでついでに買ったレモンサクレはドロドロに溶けてしまってジュースになってしまった。
俺は薄切りレモンだけ口に入れて、本体は冷蔵庫で冷やしてから飲むことにした。
アイスを冷やしてる間、買ってきた物を整理しながら音楽をかけていると電話の着信音が鳴った。
夏「はい。」
『あ、夏。おはよー。』
と、寝ぼけた声で俺に電話をかけてきた沙樹。
休みの日はいつも朝早くから仕事をしてるか、就職活動をしてる沙樹なのに今日は昼に起きたのか?
夏「どうしたの?」
沙樹『いや…、昨日のこと。』
昨日たまたま会ってしまったナナさんのことだろうか。
夏「うん?」
沙樹『あの時、僕をあの人から引き離してくれてありがとう。』
突然、お礼を言ってくる沙樹に俺はびっくりする。
夏「ん?どうしたの?」
沙樹『いや…、謝ってばっかでお礼言ってなかったなって思って。』
沙樹の声にあまり元気がない。
きっと、昨日のことやもっと過去のことを思い出してるんだろう。
夏「沙樹が落ち着いただけで俺は十分。腕、大丈夫そう?」
沙樹『んー…、少し腫れてるかな。』
夏「…そっか。今日は何もしない日?」
沙樹『…そのつもり。』
いつもの沙樹らしくないな。
何か動いてないと気が済まない沙樹なのに家にずっと居続けるなんて。
今日は時間があるから沙樹のために時間を使おう。
夏「俺、今日暇だからずっと電話しよっか?」
沙樹『え?週末っていつも忙しくしてなかったっけ?』
夏「この間、出勤前倒しして今日は休みにしたんだ。」
沙樹『そうだったんだ…。』
夏「…まあ、疲れてそうだからやめておこうか?」
俺が問いかけると少し沈黙が流れ、沙樹の布団の擦れる音が聞こえる。
沙樹『…僕ん家来ない?』
夏「え?いいの?」
初めて沙樹の家に行くかもしれない緊張が急に俺を襲ってくる。
沙樹『昨日のお礼でご馳走振る舞うよ。』
夏「大したことしてないよ?」
沙樹『今、すごい夏に会いたいんだ。来てくれない?』
沙樹がこんな事言うなんて珍しいな。
もしかしたらまた他に話したい事があるのかもしれないな。
夏「行く。メッセージで住所送ってくれる?」
沙樹『分かった。じゃあ一旦切るね。』
夏「はーい。」
俺は財布と携帯だけを持ってそのまま沙樹の家に向かった。
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